第16話 剣術レベル
礼二が乗馬訓練に四苦八苦していた一方、恵美は馬に苦労をしてない。大きな馬を目の前にして怖がる風も見せず、ゆっくりと近づき小さな手を伸ばす。すると馬は首を垂らして、顔を恵美に寄せて来る。
「ふふ、くすぐったい」恵美は馬の湿った鼻に頬を舐められても嫌がりもしない。
そればかりか馬の鞍に手を伸ばそうとするが、流石に一人で、馬に乗ることは出来ない。
大人に手伝ってもらい鞍に跨ると、馬はゆっくりと歩き出す。
これを恵美は喜々と嬉しがり、そのまま、馬の歩みに任せ場内を一周しだしていく。その姿は胸を張り少し得意そうでもあった。
「恵美、怖くないのか?」少しあきれ顔に尋ねる。
「うん、平気。お馬さんが乗せてくれるから大丈夫」すべてを馬に任せて、全然怖がりもしない。
「もう恵美はお馬さんの気持ちが分かるの」そう言って、小さな胸を逸らす。
娘にこう言われてしまっては、筋肉痛を言い訳に乗馬訓練をさぼるわけにもいかなくなった。
(馬に乗って砦に行けるようにならないと親として示しが付かないぞ)頑張って馬に慣れるしかなかった。
乗馬に比べて、剣術の訓練は楽と言える。とにかく近衛隊の兵士達と手合わせするのが楽しい。“好きこそものの上手なれ”と言われるが、好きだから、単調な剣の素振りも楽しいし、基礎訓練にも手を抜かない。
「えい!」「やぁ!」気合とともに剣を打ちあう。そんなことを毎日何十回繰り返しただろう。
ある日、脳内に『剣術レベルが1になりました。剣さばきが少しスムーズになります。なお次のレベル2になるには経験値を100にします。』いつもの機械的に抑揚の少ない声だった。
(剣術レベル1?なんだ、それ!)また何かスキルを得たと感じる。
その後、ダンケルと手合わせして、スキルの特徴を試してみる。
ダンケルが剣を振りかぶって来た。動体視力が優れている礼二にとって、剣の動きはスローで見える。だが、今は剣がどうのように動くのか先に分かった。
身体を大きく避けなくても、軽く数センチで躱せるのだ。
何度か、ダンケルの剣をかわすと、動きを止めた。一旦、剣を降ろして不思議そうに言う。
「レイン殿、私の剣を見切っているように見えるが?」
「ええ、なんとなく、ダンケルの剣の軌道が分かりました。確かではないのですが」
「それなら、達人級の動きですよ。さあ、もう一度立ち会って確認しましょう」
その後、剣を合わせて、剣の軌道が事前に見える。剣先がどこまで届くか、どこで切り替えしてくるかまで、あらかじめ読めた。
「凄い。レイン殿は名人クラスの腕前になりますよ」
褒められて悪い気はしないものだ。礼二はますます剣術の稽古に励むのだった。




