第14話 オオカミの連係プレイ
「何時の間に、こんな大きな群れが集まっていたんだ」
礼二は草原の様子が、おかしいと気づき、魔物の気配を探り慎重に草原を歩いていたはずだった。
それでもこれだけの群れが狼は忍び寄っていた。
何らかの特技を持っているに違いなかった。
「厄介だな」気を引き締める。
狼の体高は人の胸ほどもあり、頭から尾までなら3mを超す。スピード、跳躍力は他の獣をはるかに凌駕し、鋭く大きい牙を持っている。草原の覇者と言ってよいだろう。
ゴブリン、角ウサギなどがすっかり姿を消しているのも分かる。
「こいつらに少しでも、牙や爪をひっかけられたら、かすり傷では済まない。怪我では済まない、命まで失う。」
何より怖いのが、連係プレイだ。前の奴に気を取られると、背後の奴が飛びかかって来るのだ。両側にいる奴にも注意をしなければならない。
左右前後、どこからでも鋭い牙と爪が襲って来る。
円陣を組み、防御に徹して、10分。恵美は勿論誰も傷一つ負ってない。
だが、こちらの戦える者は6人。魔狼は20匹以上。絶対的に戦力が劣っている。
防御していれば今すぐ破られることはない。しかしそれではこちらは全く休めないのに、狼共はローテーションしながら休憩を取れる。
周りを囲み、うるさく吠える声にも苛立ち、焦りを覚える。
「こいつらは精神的にも追い詰める術を知っている」
こっちは水を飲むことさえ出来ない、時間が経てば次第に疲れ、抵抗する力もなくなる。じり貧になるのは間違いなかった。
「ダンケルまずいぞ。このままではじり貧だ。逃げ出す手段はないのか?」背中越しに打ち合わせをする。
「狼共は、ボス狼の命令で動いています。ボスを倒せば狼は去るかもしれません。」
見ると、少し離れた場所で、一回り大きな狼が悠然とこちらを睨んでいる。
一言も発しないが、あれがボス狼に違いないだろう。
「私があのボスを倒す。ここを守ってくれるか?」
「分かった。ここは任してください」ダンケルも他に方法がないと考えた。
「では、1,2,3で飛び出すぞ」
1,2,3。礼二は飛びした。
ボスとの距離は10m。そこを1秒もなく達する。
これに、人間達を囲んでいた狼共も虚を突かれる。完全に守ることを忘れていた。
「グガォ?」ボスも油断をしていた。本能で体を翻したが、礼二の剣まで躱せなかった。
首から胴体に深い切り傷が走る。
「キャイーン」巨体が力なく倒れた。
その直後、礼二の背後から1匹の狼が襲い掛かって来る。
そいつを振りほどき、剣を一閃する。
「キャン」と鳴き声を上げ、そいつも地に落ちた。
「こいつらまだやるのか」礼二は周囲を睨みまわす。
ボスと側近が倒れ、狼たちの唸り声は急にやんだ。
そして、1匹、2匹とその場から去って行った。
「勝った!」肩に痛みはあったが、喜びが大きかった。
「パパ」すぐに恵美が心配顔でやって来る。
「大丈夫?」「大丈夫だ」「背中を見せて」
恵美は礼二の怪我を見逃しはしない。転生して妙に大人びている。
怪我を見せると、「痛いの、飛んで行け―」と言った。
それだけで礼所の怪我は見る間に治っていく。
(恵美の能力は凄いな)改めて思う。
そして、子供のような呪文の仕草のおかげかダンケルたちは恵美の能力に注目をしないでくれた。




