第12話 草原の魔物狩り
翌日から魔物狩りが始まる。
草原でゴブリン狩りを中心に行うことになった。
「エミリ嬢は私たちで守りますから、レイン殿は魔物狩りに徹してください」
礼二は恵美を同行させている。これまでの経験からゴブリンだけなら恵美を守りながらでも対処できると思っているが、やはりダンケルに守ってもらえるのは有難かった。
礼二は積極的に草原を探索する。
まず角ウサギを見つける。さして脅威を与えないが、作物を荒らすので、即、殺処分の対象だった。角ウサギの攻撃力は低く、片付けるのは難しくないが、とにかく奴らは足が速く、すばしこい。穴に潜り込まれるとまず対処できない。
外にいるウサギを見つけたら、穴に飛び込まれない前に倒せるかが肝心だった。
礼二は遠くからウサギが3匹巣穴から出ているのを見つけ、気づかれないように近寄るが、もう少しという所で気付かれた。
「くそ!」脱兎のごとく?(いや、礼二はウサギではない)飛び出し、剣を振るった。
だが、3匹のうち2匹に穴に潜られ取り逃がしてしまう。
「うーん、何か魔物に気付かれない技がひつようだな」反省の言葉を漏らす。
その後、20分も経たないうちにゴブリンが草原に潜んでいるのを見つける。
「ひとつ、二つ、・・ゴブリンが14匹いる。」ダンケルたちに告げる。
「そんなにいるのか?」彼らも数匹は見つけられたようだが、全てではなかった。
「俺が飛び出すから、後ろで見守っていてくれ」そう言って、前にでた。
ゴブリンは本当にどこにでも湧き出る。
強くはないが、隙を伺い、弱い所を見つけては攻める。ずる賢く、連携の取れたチームプレイを仕掛けて来る。
「大丈夫なのか?」デオゴーンが心配げにダンケルを見やる。礼二の腕前を見たくて、案内役を買って出たデオゴーンだった。彼も4,5匹のゴブリンなら何とでもできるが、でも14匹は多すぎる。
「まず大丈夫だと思うが、様子を見よう」そう言った、ダンケルも礼二の腕を信じているが、14匹と言う数にちょっと不安を感じる。
ゴブリンは高い草藪に身を隠すようにして忍び寄って来る。普通の人間なら、草陰に隠れるゴブリンに気付かれないものだ。だが、視覚感覚に優れた礼二にとりゴブリンの動きはお見通しだった。
棍棒を持ったものが9匹、それに石を括り付けて斧にしたものが3匹、粗末な弓をもったものが2匹いた。やつらは武器を持ったことで自信を持ったのか、一人で飛び出してくる礼二を取り囲むようにしてきた。
「奴ら、少しずつにじり寄って、俺を取り囲む考えか。ゴブリンにしては知恵が回るな」
ただ礼二にとり、ゴブリンの動きは緩慢に見える。武器を持ち上げる動作そのものが、極めてゆっくりだった。まるで首や心臓、眼底を礼二にさらけ出すようなものだった。
そうなれば、礼二の細剣の餌食でしかない。ゴブリンは急所を隠す暇さえ与えられず、叫び声すらなく、次々と倒されていく。
1分も経たずに、礼二の周りにはゴブリンたちがぴくりともせず、横たわっていた。
「こ、これは、凄い」静かになったので礼二に近寄って来たデオゴーンが思わず言葉を漏らす。
「これほどの腕前だったとは、思いもしませんでした。」
礼二はにっこりとほほ笑み返す。
「穴を掘ってゴブリンを片付けましょう。」ダンケルが少し呆れ顔で提案する。
ゴブリンは倒しても使える部位がないので、放置するのが普通だが、これだけ多いと他の魔物を呼び寄せることになる。それを防ぐためにも穴を掘って、ゴブリンの死体を埋める必要もあった。
穴掘り作業を見守っていると「パパ!どこか痛くしてない?」恵美が抱き着くように近寄る。
「ううーん。大丈夫だよ」
「本当に?」そう言う恵美には、ゴブリンの死体など目に入らないようだった。幼い女児のように血に染まった悲惨な光景に怯える様子などどこにもない。
こちらに転生して、恵美は精神的にも成長し強くなっていた。
ウサギの数え方は一羽、二羽とするのが普通ですが、角ウサギが魔物という設定なので一匹、二匹と数えました。




