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父娘で冒険しよう  作者: 諏訪丸


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第11話 レンドン砦

翌日、廃屋ばかりが点在する集落などを通り、砦にようやく到着する。

「いやあ、勇者殿にお出で頂いて光栄です」砦の隊長は手を差し出す。

噂に聞く礼二の訪問とあって砦は歓迎ムード。更に長く砦を守って来たことに対し、国王からの慰労の酒なども持ち込まれており、砦は祭りのように沸き立つ。

「こんなことがあるなら、勇者様には何度も来てもらいたいものだな」赤くなった顔で大柄の兵士が盃を片手に上げる。

「そして、見ろよ。あんな可愛い嬢ちゃんまで来てくれたんだ」指さした先には恵美の笑顔がある。


恵美は王宮で表面的には優しくしてくれるが、陰であまりよく言われてないことに気付いていた。礼二と同様、非常に耳が良く陰口が聞こえた。「黒髪に黒い瞳なんて魔物じゃない」「なんか笑い方が薄気味悪いわ」女官たちのちょっとした軽口でも子供の胸を痛めた。

砦は違う。

「エミリちゃん。可愛いね。抱っこしてあげる」

「よせよせ。お前のような武骨の野郎じゃ、嬢ちゃんが壊れる。おじさんの膝が良いよ」

恵美を取り合っているのだ。裏のない砦の兵士の、漫才のような掛け合い。楽しくてしょうがなかった。


その少し前、礼二は隊長室にいた。

「昔はこの北方にも砦があったのですが、魔物に侵食され放棄されています。今はここが対魔物の最前線基地です。砦の周囲にもいくつかの村が点在し、畑でこの辺りは埋め尽くされていたと聞いています。残念ながら今は、魔物の南下を防ぐだけに手一杯で、原野を開拓する余力はありません。」砦の守備隊長デオゴーンが説明する。40手前の壮年盛り。魔物との最前線を任されているだけに、引き締まった顔には責任感が見える。

「レイン殿に魔物と戦って貰えれば、砦の隊員にも余裕ができます。恥ずかしい話ですが、砦は人員不足で、防御するだけで森や原野に打って出ることが出来ない有様です」素直に実情を話す。

「私は魔物と戦った経験があまりありません。ここで戦って魔物の実力を知れればと思っています」礼二も気負わずに言う。

「レイン殿がこの砦で過ごされるのは2週間ほどを予定している。砦の要員が不足しているのはこちらも承知だ。我々はレイン殿の護衛と観察を兼ねている。砦からはここの案内をする者を出してもらいたい」

「それは、大丈夫ですが、ただ、一緒に来られた人たちは4名です。それだけの数で魔物討伐は難しいでしょう。」

「いや、森に入らず、周辺の草原だけで魔物を退治するつもりだ。森に入らなければゴブリン程度しか現れないだろう。なら、さほど危険はないのではないか。」

「それはそうです。分かりました。明日は私が案内します」デオゴーンは簡潔に言った。


その話が終わった後、酒席が始まったのだが、ダンケルが持ってきた酒はさして多くなかった。

「ああ、もう酒は終わったか」

「でも、今夜はぐっすり眠れる。明日から頑張れる」

「そうよ。見張りも抜かるな。陛下の配慮に報いろ!」

国王の慰労の酒はすぐに尽きる。国王も甘くはない。娯楽も憂さ晴らしもない砦暮らし。兵士のやる気を引き出すのが狙いなのだ。

夕暮れ前、砦の酒宴は終わった。


アルコールが少し入った体を冷ますため、礼二は砦の高台に登る。

周りは遠くまで草原。そこにどんな魔物が潜んでいるのか、眼を凝らしてもとらえきれなかった。


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