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マヨイから離れてしまったことも、だけど。どんどん状況が、悪くなってる。
「うっそだろ。あれまで来ちゃったら逃げるしかないぞ」
「……うん、逃げよう。ミツバ」
「殿だな? よし、任せろ!」
ぼくの方へと体を向けたヤマトが、ぼくの両脇に腕を差し込んだ。
「マヒル、僕の背中に腕を回して。魔法で固定するけど、絶対に離しちゃ駄目だよ!」
地面から足が離れる。ゆっくりと距離を詰めていたはずの花芽が、タタリの手でバラバラになっていくのが見えた。
「あんなん、見なくていいよ」
でもそれは、ヤマトの後ろに来たミツバが隠した。
「行くよ!」
ぎゅっと目を閉じる。
空気を切り裂くように、前へ前へと進んでいくヤマトに負けた風が、ものすごい強さでぼくの背中にぶつかる。
でも、彼の魔法が守ってくれてるから。
痛みは、あんまりない。
耳に届く音が、とても大きいだけだった。
……ぼくは、マヨイじゃなかった。ほんの少しだけ思い出せた記憶が、彼じゃないことを教えてくれた。
ぼくは、来世のマヨイじゃない。
彼の本当の弟でもない。
なのにどうして、マヨイに似てるんだろ。
『私たちの知り合いにヒカって子がいるんだけど。そいつ、人間の体を乗っ取っちゃったんだ』
ミツバが言ってたことを思い出す。
過去から、未来に行くこと。誰かの体をもらってしまうこと。それらには代償が必要で、それが記憶だったら……。
マヨイを、騙してたことになる。
彼に嫌われることを考えたら、涙が出てきた。
「ごめんね、怖いよね。すぐにお兄さんを見つけてあげるから、もうちょっとだけ頑張って」
風の隙間から聞こえるその声が、優しくて。心にできた傷に、染みた。
「このまま探すのか?」
「そうした方がいいかなって。予想より、異界が広すぎる。花芽も、無限にいるわけじゃないから。あれが来る前に見つけたい」
ヤマトにぶら下がった状態で、どこかに消えてしまったマヨイを探した。腕がしびれて、飛んでの移動ができなくなってからも。タタリと花芽を警戒しながら、ヤマトたちと一緒に彼を探した。
でも、見つけることができたのは、息絶えた街の人たちだった。
「……なぁ、ヤマト。姫巫女のタタリ歌って、近くにいる人間を、異界に取り込むんだよな?」
「そうだよ。花芽と森人も、呪う対象になってたけど」
「歌ったやつは、どうなるんだ?」
「どうって。歌った人も、異界に入るんじゃないの?」
ミツバの疑問にそう答えて、なにかを考え始めたヤマトの顔が、どんどん硬くなっていく。空気も、重たい感じになった。
「……ねぇ、ミツバ。なんでそう思ったの?」
「いや、だってさ。おかしくないか? こんなに探し回ってるのに、あいつの弟子が出てこないんだぞ? あのマーリア村の、精霊師なのに」
「……もしかして、人質?」
「かもしれないって話だ。まだ、確定したわけじゃない。……でも、ヒカだったら。できるだろ?」
話をしてた二人が、ぼくを見る。花芽も、タタリもいないのに。また、状況が悪くなったみたいだ。




