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ヴァルクネアさんは優しい。財宝だってたくさん持っている。それから強い。条件はいい。それに私もヴァルクネアさんのことが好きなんだとは思う。思うけどこれが恋かは分からない。というか私は恋が分からない。二十七年生きてきて人を好きになったことがないのだ。だから私はヴァルクネアさんに応えられない。
「ヴァルクネアさん、私は恋が分かりません。あなたのことは好きです。でもあなたと子作りしたいのかは分からないんです。そういう好きが分からないんです」
ヴァルクネアさんは私を抱きしめた。
「嫌ではないか?」
「嫌じゃないです」
「獣のメスは好きでもないオスに触れられるのは嫌がる。人の子も同じではないのか?」
「そうですね。知らない人にこういうことをされるのは嫌です」
確かに男の人に触れられるのは想像しただけで不快だ。ヴァルクネアさんは別だけど。
「ならば、私と番ってもよいと思うのだが」
どこか拗ねたように言うものだからおかしくなって思わず笑みを溢した。
「番いましょうか、ヴァルクネアさん」
ぎゅうと強く抱きしめられても不快さなんてものはなかった。その背中に腕を回してこちらからも抱きしめた。額に触れた唇の柔らかさに小さな喜びを感じて、ああ、私はヴァルクネアさんのことがちゃんと好きだったのだと嬉しくなった。
「愛しているよ、ウメノ」
「嬉しいです、ヴァルクネアさん」
私も愛しています、とは返せなかった。この感情がそこまで強く確かなものと確信できなかったからだ。この感情は柔らかくて暖かいものであることだけは確かだけれど。
「ヴァルクネアさん、もっと触れてください」
キスの雨が顔中に降り注ぐ。心の底からじんわりと溢れ出す幸福感。ぎゅっとその体に縋りついた。
「番うのを少しだけ待ってもらえませんか。私が自信を持ってあなたを好きだと言えるようになるまで」
「ああ、待とう」
ヴァルクネアさんは優しく微笑んでくれた。




