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「実家に帰らないといけないんだ」
ヴァルクネアさんが深刻そうな顔をしているから何事かと思えばそんなことだった。
「そうなんですか?」
「ああ、本当は二十五年に一度は帰って来いと言われていたんだ。ここ百年帰っていなかったんだが、番も見つかったことだし一度顔を出しておこうかと思ってな」
「それは私も一緒に行った方がいいんですか?」
「いや、来なくていい。五日間休まずに飛ばねばならない。人間には無理だ。待っていてくれるか?」
「もちろんです」
そう返事をするとヴァルクネアさんは竜の姿になって飛んでいった。
ヴァルクネアさんが出かけていって二週間が経った。一人だと料理が手抜きになるのは仕方がないだろう。夜にスープをたくさん作って次の昼までそれをパンと一緒に食べる。たまに肉を焼く。タンパク質も必要だから。なにを出しても美味しいと嬉しそうに食べてくれるヴァルクネアさんはいない。……一人だとやっぱり味気ないな。
ヴァルクネアさん、いつ帰ってくるのかな。帰ってきたらヴァルクネアさんの好きなものを作ってあげたいな。ホホロ茸のスープは時期が過ぎたから作れないし、なにがいいだろう。ああ、鶏肉のピカタなんかいいかもしれない。
などと考えていたら家の周りが騒がしくなった。全裸のヴァルクネアさんが家に飛び込んでくる。私への挨拶もなく服を着て何着か服を持って外に飛び出して行く。家の扉が開いて白い髪の大きな男性と黒髪のヴァルクネアさんそっくりな女性が入ってきた。二人ともヴァルクネアさんの服をきているらしく、男性の方はパツパツで女性の方はダボダボだった。
「きゃー! この子が番なの?! 小さくて可愛い!」
黒髪の女性が叫んで私に抱きつく。
「母さん、離れておくれ。父さんも見てないで止めてくれないか」
べりっと女性を引き剥がして私を抱きしめるヴァルクネアさん。
「こちらは母のガイア。あちらが父のラパスだ」
なるほど、ヴァルクネアさんはお母さん似なのね。
「ウメノ・キサラギです」
「あら、ヴァルクネア、まだ番ってないの? 人間はあっという間に死んでしまうから早く番わないとダメよ」
「すみません、私の覚悟が決まらなくて待ってもらってるんです」
「そうなの、それなら仕方がないわね。人の理から外れるんだもの。覚悟がいるわよね」
いや待って、人の理から外れるってなに? そう思ってヴァルクネアさんを見上げても目が合わない。
「約束通りウメノを見せたのだ。帰ってくれないか」
「そうね、若い二人の巣に長々とお邪魔するのも悪いし帰りましょうか、ラパス」
ラパスさんはゆっくり頷いた。
「ああ、そうしてくれ。蜻蛉帰りさせてしまって申し訳ないとは思うがここは私とウメノの巣だ。身内といえど他の竜や人間をここにいれたくはない」
「分かる分かる。じゃあね、ヴァルクネアにウメノさん。ウメノさん、ヴァルクネアをお願いね」
返事をする間もなく二人は出ていった。家の裏手で服を脱ぎ竜の姿に戻ったらしくヴァルクネアさんは二人分の着替えを持って帰ってきた。
心なしかいつもキラキラしてるヴァルクネアさんが草臥れて見える。
「お風呂入ってきてください。夕飯作っておくんで」
「ああ、そうさせてもらおう」
ヴァルクネアのフルネームはヴァルクネア・ミア・ラパス・ガイア・ホワイトです。意味合いとしては白竜のラパスとガイアの子、ミアの弟のヴァルクネアという感じです。




