22
王都に来て一ヶ月が経った。頼んでいた服を取りに行ってシールドの街へ帰る道すがら私たちは迷宮に向かった。生活費を稼ぐためだ。魔物の素材は種類にもよるが高く売れるらしい。
私たちがやってきたのは火竜の迷宮と呼ばれる迷宮だった。サクサクと上層の魔物を倒して下層へと向かうヴァルクネアさん。私はひたすら魔物をアイテムボックスに入れる係だ。
「ウメノ、ここから先は火竜の縄張りだ。私がよいと言うまでここで待っていておくれ」
「はい、ヴァルクネアさん」
私の返事を聞いたヴァルクネアさんは先へと進んでいく。その姿が見えなくなって少し不安になった。
しばらくするとヴァルクネアさんは燃え盛る炎のような朱色の髪をした綺麗な女の人を連れて戻ってきた。彼女の服装はどこかの女王様みたいなドレスだった。派手な雰囲気の彼女によく似合っている。
「ウメノ、こやつがこの迷宮の主だ」
「ルルリア・カイル・ガーネット・ファイアよ。よろしくね、かわい子ちゃん。ウメノって言うの? 小さくて可愛いわ」
「ウメノ・キサラギです。よろしくお願いします」
「それにしてもヴァルクネアが番を見つけるとはねえ。私もうかうかしてらんないわ! ねえ、二人はどうやって出会ったの?」
「それが、気がついたら迷宮の最深部にいまして」
「あら、トラップを踏んじゃったのね」
事実とは異なるが否定も肯定もしなかった。
「それからはヴァルクネアさんの縄張りで一緒に暮らしてたんです」
「そうなの、そんなラッキーがあるなんて。私もあやかりたいわ」
心底羨ましそうにルルリアさんは言った。
「それで二人は今どこに住んでるの? ウメノちゃんは人間よね? 迷宮じゃ不便でしょ?」
「シールドの街です。いいところですよ、長閑で」
「シールドの街ね、覚えておくわ。私も番を見つけたらそこに住もうかしら」
「友として忠告しておくが番が人間だった場合無理矢理攫ってはならぬぞ」
「ダメなの? ウメノちゃん」
「絶対ダメです!」
「そうなの、面倒な世の中になったのね」
「え? 逆に聞きますけど昔はそれでよかったんですか?」
「特に問題はなかったわ」
「貴様の常識は百年以上前の常識だ」
「決めた! 私もあなたたちと一緒に迷宮を出る! そして番を探すわ!」
「財宝はどうするのだ」
「惜しいけど置いていくしかないわね」
「あの、よかったら預かっておきましょうか? 私、アイテムボックスのスキルを持っているのでお気に入りだけでも」
「いいの? ウメノちゃん、ありがとう!」
キラキラした目でそう言うとルルリアさんは私の手を取って迷宮の奥へと歩き出した。反対の手はなぜかヴァルクネアさんに繋がれた。
宝石にドレス、美しい絹布、男物の服。一番多いのは男物の服だった。番への貢ぎ物だもんね。そうなるよね。
「宝石だけ預かってくれる? 服は今の流行もあるだろうし」
「はい、分かりました。よかったら布も預かりましょうか? 外では女が男の服を縫うのはよくあることなので」
「私の縫った服を番が着るの? なにそれ、すごくいいわ。じゃあ布もお願いしていい?」
「もちろんです」
アイテムボックスには番号がふられている。七百番以降をルルリアさんからの預かり物にしよう。そう決めて私はアイテムボックスに入れていった。




