2
「ウメノよ、水浴びをせぬか?」
「できるんですか!?」
「うむ、着いてくるがよい」
ずっとお風呂に入りたかった。この世界に来てから魔法で出した水で布を濡らして体を拭うことしかできていなかった。この際お風呂だなんて贅沢は言わない。体を洗いたい。
ヴァルクネアさんに着いていくと川が流れていた。しかしそこには湯気が。温泉だ。ヴァルクネアさんは温泉に入っていった。
そっと指先で温泉に触れてみる。よかった、人間も入れる温度だ。少しぬるめだろうか。
「ヴァルクネアさん、着替えを取ってきます!」
「ああ、ここらは私の縄張りゆえ危険はなかろう。行ってこい」
とはいえここは迷宮。なにが起こるか分からないのでできるだけヴァルクネアさんから離れたくはない。そんなわけで早足でねぐらに戻って着替えを取ってきた。
ヴァルクネアさんはオスだけどドラゴンだし気にしなくていいかと結論づけて衣服を脱いでいく。
「人の子のメスはそのような体をしているのか」
まじまじとヴァルクネアさんが私を見つめる。
「見ないでくださいよ。ヴァルクネアさんオスでしょう。人間のメスは基本的にオスには体を見せないんですから」
「すまぬ」
ヴァルクネアさんは後ろを向いてくれたので心置きなく温泉に入る。やっぱりちょっとぬるめだけど気持ちいい。立ってないといけないくらい深いけどそこは気にしないことにしよう。
「ヴァルクネアさん、気持ちいいですね」
「そうだろう。この迷宮を気に入った理由の一つなのだ」
聞けば番と一緒にこうして湯に浸かるのがヴァルクネアさんの夢だそうだ。
「番さん、見つかるといいですね」
「この三百年探してきたが見つからぬのだ。きっとどこにもおらぬのだよ」
「でも、異世界人の私と出会う確率よりは番さんが見つかる確率の方が高そうですけど」
「そう言われればそうだな。だがよいのだ。私にはウメノ、おぬしがいればよい」
なんと答えればいいのか分からなかった。だからその一言をなんとか捻り出した。
「嬉しいです」
ヴァルクネアさんは大きな頭を私の頭に擦り寄せてそれからまた後ろを向いた。
「ウメノ、私はそろそろ上がる。おぬしはどうする?」
「じゃあ私も上がります」
ヴァルクネアさんは自然乾燥らしいが私はヴァルクネアさんにもらった綿の布を持ってきていた。それで体を拭いて持ってきた着替えを着る。ふむ、適当に取ってきたがこのドレス可愛いな。エンパイアラインの白のドレスだ。……本当は番さんのものなんだよなあ。なのにヴァルクネアさんは私が着ることをよしとしてくれている。優しいドラゴンだと思う。いつか恩返しができたらいいな。




