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「ウメノよ、おぬしはなぜか異様に美味そうでならん。ちょいとばかし齧ってみてよいか?」
いやあああ! 太らせて食べるパターン? ヘンゼルとグレーテルなの? 私はグレーテルになりたい! そうパニックになる脳内でなんとか理屈を捏ねて口を開いた。
「まあ、ヴァルクネアさん。食べちゃいたいくらい可愛いってことですか? 食べずに愛でてください」
ちょっと無理矢理か? と自分でも思ったがどうにか乗り切るより他ない。
「ふむ、そういうことか。食べちゃいたいくらい可愛い」
よし、なんとなく納得してるっぽい! いける!
「そうです、だってヴァルクネアさんは人間を食べないんでしょう?」
「ああ、食べない」
「だから愛でてくださいね。ヴァルクネアさんに齧られたら死んじゃいますから」
「そうしよう。して、愛でるとは具体的にどうするのだ?」
「ヴァルクネアさんの思うままにどうぞ」
そう言うとヴァルクネアさんは少し悩んだようだった。
「ううむ、では、これをやろう」
差し出されたのはエメラルドの豪奢なネックレスだ。
「ありがとうございます。着けてみますね」
どうですかと感想を求めた。
「うむ、よいな。本来ならばこれは番に渡すものだったのだが」
「そういえば、ここにあるものって番さんへの貢ぎ物なんですよね。私がもらっちゃっていいんですか?」
「よいのだ。番のことはもう諦めた」
「ヴァルクネアさん、ドラゴンの寿命ってどのくらいなんですか?」
「私は竜だ。ドラゴンではない。我らは千年は軽く生きるぞ」
「すみません、竜ですね。あと七百年以上あるじゃないですか。きっと出会えますよ」
「ウメノ、私は今おぬしがいればそれでよいと思っている。だから番を探しには行かぬ」
「でも、いつまでもこのままってわけにはいかないでしょう? 番さんの方からヴァルクネアさんのところに来るかもしれませんし。そうしたら私はお邪魔虫です」
「私が嫌いか」
「好きですよ、ヴァルクネアさんのこと。だけど人間が迷宮で暮らすのはちょっと無理があると思うんです」
「それもそうか。だがおぬしのレベルでは上層には上がれぬだろう」
そう言うとヴァルクネアさんは大きな頭を私のお腹に擦り付けた。それはまるで親が我が子を心配するようでなんだか胸が苦しくなった。
「ヴァルクネアさん、私のこと鍛えてくれませんか」
「よかろう」
「では行くぞ、ウメノ、受け止めてみよ」
そう言ってヴァルクネアさんは尻尾で私を突っついた。
次に気が付いたらヴァルクネアさんが泣いていた。
「ヴァルクネアさん、どうしたんですか」
「すまぬ、ウメノ。まさかおぬしがあそこまでか弱いとは思わなんだ」
ヴァルクネアさんに話を聞くと私は死にかけたらしい。そしてヴァルクネアさんが治癒魔法をかけてくれて一命を取り留めたそうだ。なんでもヴァルクネアさんは治癒魔法を使えるそうな。私たちの周りにはなにやら綺麗な雫型の石がいくつも落ちている。
「あの、ヴァルクネアさん。これはなんですか?」
雫型の石を手のひらに乗せて聞けば、ヴァルクネアさんは答えてくれた。
「恐らく竜の涙というアイテムであろう。ウメノが持っておくとよい」
「はい、そうします」
アイテムボックスに竜の涙をしまった。




