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番の手作りの服というのはヴァルクネアさんの琴線に触れたらしい。キラキラした目で服を縫ってほしいと言われて断れる人間がいるだろうか? 答えは否である。仕方がないので手芸店で型紙を買ってシャツを縫っている。ミシンがほしい。オール手縫いなのだ。ちょっとしんどい。
だというのにヴァルクネアさんは私には貢ぎ物のドレスを着てほしいそうな。片や私の縫った残念なシャツ、片やドレス姿。絶対ダメだと思う。私がヴァルクネアさんを虐げているようにしか見えない。
「できましたよ、ヴァルクネアさん」
「ありがとう」
さっそく今着ているシャツを脱いで私の縫ったシャツに着替えた。
「あ、ちょっと大きいですね」
残念ながら私に型紙の補正なんて能力はないので私の縫った服が着たいなら大きめのシャツを着てもらう他ない。
「ヴァルクネアさん、仕立て屋に頼みません? それかサイズの合う古着を探しましょう」
「仕立て屋か。うむ、ウメノの服を縫ってもらいたいな。王都に行くか」
そんなわけで王都行きが決まってしまった。
荷物をまとめてアイテムボックスに入れて竜の姿のヴァルクネアさんの背中に跨る。そこからは休憩を除いてヴァルクネアさんは飛び続けた。森で一晩明かし二日で王都近くの森に辿り着いた。そこで人の姿になって服を着てもらう。
そうして私たちは王都に足を踏み入れた。今日の私たちはピックの街で買った古着を着ているけれどちょっと気後れしてしまう。ここは流行の最先端なのだ。よかった、ヴァルクネアさんが私の縫ったシャツを着たがらなくて。
「あ、ここ仕立て屋ですよ」
二人で入ったがなんだか忙しそうで接客も適当だ。
「シャツとズボンなら金貨二枚。女物のワンピースなら金貨三枚からだね。あんたら払えるのかい?」
「そうですね、今日はこれしか持っていないのでやめておきましょう」
大金貨を一枚見せてそう言えば店員の態度が変わった。
「まあまあ、お嬢様そんなことおっしゃらずに。是非ともうちで仕立ててくださいな」
「行きましょう、ヴァルクネアさん」
掌返しがすごかったけど、私はヴァルクネアさんを連れて店を出た。ちなみに大金貨一枚は金貨百枚の価値がある。当然両替もしてあるがそちらはアイテムボックスの中だ。
次に見つけた仕立て屋に入ってみる。
「あらいらっしゃい。初めてのお客さんよね? 今日はなにをお求めかしら?」
ふっくらとした中年の女性が声をかけてくる。ニコニコとしていて感じがいい。
「彼のシャツとズボン。それから私のワンピースを仕立てたくて」
「シャツとズボンは綿なら金貨一枚、シルクなら金貨三枚で仕立てられるわ。ワンピースは綿なら金貨一枚と銀貨五枚から。シルクなら金貨四枚からよ」
「普段着なので綿でお願いしていいですか?」
「ええ、もちろん。それじゃあ採寸しないとね」
そう言って店主はヴァルクネアさんを奥に連れていった。その間私はソファに座らされデザイン画を見ているよう言われた。これが今の流行。ウエストに編み上げをつけるのが流行りのようだ。ちなみにこの世界の下着はコルセットに紐パンである。私はコルセットは既製品を買っているがお金持ちはオーダーするらしい。
「それじゃあ今度はお嬢さんの番よ」
店主が店の奥に連れていってくれる。ワンピースを脱ぐよう促され、下着姿になった。
「あら、あなた。随分細身なのね。コルセットのオーダーも承っているけどどう?」
「お願いしていいですか?」
今使っているコルセットはウエストはちょうどいいが実はカップが浮いているのだ。
「銀貨六枚ね」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
「サテンを使ったおしゃれなコルセットも金貨一枚で作れるわよ」
「あ、じゃあそれで」
「色は何色がいいかしら? あなたの肌なら優しい色味の方が似合いそうね。サンプルを持ってくるわ」
サテンの布を何枚も抱えて店主は戻ってきた。
「あら、これなんていいんじゃない?」
あれでもない、これでもないと私に布を当てていた店主が勧めてきたのはパウダーピンクのサテンだった。確かに肌が明るく綺麗に見える。
「これでお願いします」
採寸を終えて服を着て戻ればヴァルクネアさんがさっきのデザイン画を見ていた。
「店主よ、これを彼女に仕立ててやってくれ」
そう言って見せたのは胸下に編み上げのあるティアードスカートのワンピースだった。ギャザーの間にはレースも付いている。なるほど、ヴァルクネアさんはこういうのが好きなのね。可愛いとは思うけど服に着られそうだ。
「あら、お嬢さんの意見は聞かなくていいの?」
「ウメノの好きな服も仕立ててもらえばいい」
「あ、じゃあこのエプロンドレスを」
こっちはエプロンのウエストの左右に編み上げが付いているデザインで肩紐と裾のフリルが可愛いのである。
「色はどうするの?」
「ワンピースは臙脂でエプロンは白でお願いします。ワンピースの裾のレースは黒がいいです」
「あら素敵ね。じゃあエプロンの編み上げのリボンは黒のサテンリボンなんてどうかしら?」
「それでお願いします」
「彼のおすすめは何色にするの?」
「アイボリーか水色がいいと思うんですけど、どっちがいいと思います?」
「そうね、あなたなら水色よ」
「なら水色でお願いします」
前金を支払って店を後にした。全部出来上がるのは一ヶ月後らしい。その間私たちは王都に泊まることにした。




