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その日、世界は分厚い雲に覆われた。邪竜が現れたのだそう。まあ私たちには関係ないなと思っていたらシールドの町に商人が来なくなった。王都で買い占めが起こっているらしく、商人たちは王都で高値で商品を売り払っているのだとか。ちょっと困るけど食料に関してはシールドの町は自給自足できているのでそこまで大きな問題ではない。
「困りましたね、そろそろ胡椒がほしかったんですけど商人が来ないことには買えません」
「王都まで買いに行くか?」
「それも一つの手ですね。物価が上がっているらしいので怖いですけど」
なんて会話をした次の日、国からお触れが出た。邪竜討伐のための騎士団は壊滅したらしい。若者は聖剣を抜けるか王都まで試しに来いとのこと。密かにすごくテンションが上がった。だってファンタジーっぽい。勇者を探すんでしょ? テンション上がる。
まあ私たちには関係ないことだとそれからも普通に暮らしていたらギルド長が家に来た。
「ヴァルクネア、お前は王都に行ってこい」
「私は若者という年齢ではない」
「十分若いわ! 俺から見たらガキみてえなもんだ」
ヴァルクネアさんの見た目は二十代半ばから後半くらいだ。本当は三百歳だけど。
「面倒だ」
「確かにここから王都まで馬を使っても一月はかかる。だが国からお触れが出てるんだよ。ギルドにも話が通ってる。これは義務だ」
ヴァルクネアさんが嫌な顔をした。
「いいか、義務だからな! 絶対王都に行けよ!」
そう念押ししたギルド長は帰っていった。
「一週間あれば往復できるがそうすると王都に行ったと信じてもらえぬ可能性があるな」
非常に面倒とその顔に書いてある。
「今夜はヴァルクネアさんの好きなホホロ茸のスープですよ。難しいことは明日考えましょう」
「ウメノの作る料理というものは全て美味い」
そりゃあ、生肉をそのままと比べたら美味しいよね。
次の日ギルドに行けば邪竜の討伐依頼が出ていた。勇者の手伝いをする人間を探しているようだ。志しのある者はエフェクター平原へ来いと書かれている。エフェクター平原はここから西へ百キロくらい行ったところだ。
今日の私たちはおばあちゃんの買い物代行のクエストを受けた。まあ小遣い稼ぎにしかならない。平和すぎて仕事がないのがシールドの町なのだから。
「思ったのだが」
「どうしたんですか? ヴァルクネアさん」
「邪竜を倒してしまえばよいのではないか?」
「ヴァルクネアさんならできそうですね」
なんて言ったからだろうか。では行ってくると言って竜の姿に戻ったヴァルクネアさんは飛んでいってしまった。




