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202/204

201. 小旅行のはずが

 あいかわらず鉄道は大人気だ。車両を増やして3両編成にして乗員数を増やし、運行本数も午前午後に2往復するようにした。これでも、乗員数はほぼ100%。これでも商会が制限しているみたいで、乗りたいって人はもっと多いんだって。


 利便性に対して運賃が安すぎるんじゃないかってカールさんから指摘を受けた。僕自身そう思わないでもない。普通の乗合馬車と同額だから、乗るならどっちを選ぶと言われれば、そりゃ鉄道だよね。


 実際、馬車組合からはクレームがきたらしい。対応に関してはカールさんに一任してるから詳しくは知らないけど、座席の優先販売枠を提供したり、鉄道警備の人員を馬車組合から受け入れるとかで折り合いをつけたみたい。僕ではそういう対処は難しかっただろうから、ありがたい限りだよね。


 鉄道運賃を値上げすることも考えたけど、ちょっと抵抗があるんだよねぇ。


 普通の馬車って、結構維持費がかかるんだ。馬には十分な飼い葉も必要だし、水場の整備もいる。それに対して、鉄道馬車を動かすロボ君はロボなのでコストがかからない。まぁ本来はエネルギーとか鉄道の整備とかの費用はあるんだけど、それもデュプリケーターの力で実質コストゼロだ。そう考えると、馬車よりも運賃を高くするのもどうかなって思うんだよね。


 とはいえ、今のままだと問題が大きいので徐々に値上げすることは決まっている。あとはどのくらいまで値上げするかだね。庶民が気兼ねなく利用できる価格帯は維持したいところだ。


 とまぁ、人気すぎて予約が取れない鉄道馬車なんだけど、今日は僕たちで一車両貸し切っている。鉄道を運行するのはロルレビラ商会だから、会長特権ってやつかな。貸し切った車両は、通常編成の3車両に追加する形だから予約客にも影響はないよ。


 今回のラーベルラ行きの目的は、観光、かな。いつも屋敷の管理をしてくれるバダックさんやキーラさんを労う意味を込めて、ラーベルラを案内することになっている。実際のところは、ライナとレイネが自分たちの作った像を見せたいというので、こうなったんだけどね。まぁ、バダックさんもキーラさんも楽しそうにしているから問題はないでしょう。


 貸し切りにすると、一車両で20人まで乗れる。なので、ブルスデンで僕がお世話になっている人も招待している。具体的には、ロルレビラ商会の実質的な後見をしてもらっているエレナさん。いつものメンバー、オードさんたち。ギタラ仲間のレンサーさんもパーティでの参加だ。あとはリッドさんやケルテムさんも誘ったんだけど、宿や従魔ギルドを放っておくわけにはいかないと断られちゃった。


「私たちまで良かったのでしょうか?」


 恐縮するようにそう言ったのは、リーヤムさんだ。サーカス団からはリーヤムさんとデルグ団長の二人を招待している。デルグさんはレンサーさんたちに混じって楽しげにしてるから、反応は対照的だ。


「もちろんですよ。ネズミレースの運営ではとてもお世話になっていますから」

「いえ、でも、すでにお礼はもらったわけですし」

「それとこれとは別ですから」


 リーヤムさんへのお礼だけど、“亜空間収納”馬車計画が頓挫したので、代わりに“従魔応援”を上げることにしたんだ。そっちはかなり喜んでもらえたんだけどなぁ。


 もしかして、迷惑だったのかもと考えていると、リーヤムさんの隣に座っていたエレナさんからフォローが入った。


「もっと気軽に考えていいと思いますよ。ロイ君のやることですから。いちいち真剣に考えていたら疲れちゃいますよ」


 ええと、フォローなんだよね?


「で、ですが。ご領主様の関わっている事業なんですよね? 普通なら予約すら取れないと聞いてます。それを一車両貸し切って、しかも目的は観光だなんて」


 あ、リーヤムさんから見ると、そんな感じなんだ。たしかに、ラウル様が関わっているといえば関わってる。運営にはノータッチなんだけど、外から見ると、そうは考えられないのかもね。


 話を聞いたエレナさんは苦笑いで頷いた。


「まぁそうですね。でも、実際はロイ君自身が便利に使いたいから作ったようなものですよ。領主様が関わっていると言っても、ロイ君としては頼まれたから他の人たちにも使えるようにしたってくらいの意識で、領主様肝いりの事業だなんて考えは全然ないと思います」

「えぇ!?」


 リーヤムさんが驚いた顔で僕を見る。どうやら、僕の想像以上に、鉄道は重要事業だと思われていたみたいだ。


 あと、エレナさんの推測が的確すぎる。その辺りの話は全然したことがないはずなのに……まぁ、カールさんが情報を上げてるだろうから、わかるか。


「もしかして、鉄道事業ってラウル様が主導してると思われてるんですか?」

「それはそうよ。普通はこういう大規模事業は領主様の主導でやるものなのよ」


 エレナさんが笑顔で指摘する。


 言われてみれば、その通りだ。でも、僕は領主代理でもあるし、区長代理でもある。だから、僕がやってもおかしくはないはずだ。


「まぁ、そんなわけで、ロイ君的には自分用の乗り物に仲が良い人を招待したくらいのつもりでいればいいと思いますよ」

「そうなんですね。ちょっと、なんていうか……スケールが違いますね」

「まぁ、ロイ君だから」

「そうですよね。ロイさんですから仕方がないですか」


 あれ。変なところで意気投合してない?


「とにかく、予約とか領主様のこととか気にしないで楽しんでください」

「はい、そうですね。そうします」


 エレナさんのおかげで、リーヤムさんも少しは気が楽になったみたい。良かった良かったと安心したところで、事件は起こった。


 隣の車両から、柄の悪い男たちが乗り込んできたんだ。

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