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202. 鉄道ジャック

「この馬車は俺たちが――へぶしっ!」

「なん――ぬぐわっ!?」

「あががが……!」


 乗り込んできた男たちが武器を構えようとして――潰れた。うんうん。うまく仕掛けが働いたみたいだね。


「チュチュウ!」

「ご苦労さま。他の車両は大丈夫?」

「チュウ!」


 鉄道警備担当のトビネズミ隊が現れて、土魔法で男たちを拘束していく。他の車両にも無法者が現れたけど、そっちでも仕掛けが発動して、うまく捕らえることができたみたい。良かった。


「こりゃ……どうなってるんだ?」

「どうせ、ロイだろ。今度は何をやったんだ?」


 呆然とするレンサーさんに、オードさんが事もなげに答える。どうでもいいけど、僕が何かしでかしたみたいな言い方、やめてほしいな。そりゃ、仕掛けを作ったのは僕だけどね。


「鉄道ジャック対策が発動したんです」

「鉄道ジャック? なんだそりゃ」

「ええと、鉄道の乗っ取り、ですね」

「なるほど。こいつら、ギャングの連中か」


 オードさんが顔を険しくした。ギャングたちが特区にちょっかいかけようとしていることはオードさんの耳にも入っていたみたい。


「お前ら――」

「あ、オードさん!」


 落ち着いてと言おうとしたけど遅かった。


「ぎぎぎ……な、なんだこりゃ」


 おお、耐えてる! 


 この瞬間、オードさんにも大きな負荷がかかってるはずだ。だけど、オードは中腰になりつつも、潰れるのを回避している。ベテラン冒険者くらいになると、完全に無力化はできないのか。ジャック犯対策としては、もうちょっと強化したほうがいいのかもしれない。


 と、そんなことを考えている場合じゃなかった。


 オードさんに感情因子の“平穏”を付与する。それで、オードさんにかかっていた負荷が消えたはずだ。


「お、なおった。わけがわからんな」

「感情に反応する仕掛けがあるんですよ。害意を持つと反応するので注意してください」

「なんだそりゃ、恐ろしいもの考えるな……」


 オードさんがぞっとしたって顔で引いてる。そんなに恐ろしいかな?


 うん……確かに、話している最中にいきなり相手が潰れるかもと考えると怖いかも。発動条件にはもうちょっと考えたほうがいいかも。


 最近になって、新たな因子加工を習得したんだ。“感情発動”という加工法で、感情因子と組み合わせることで、因子が発動する条件を設定することができる。


 あれだね、怒り状態のときに実力以上の力を発揮するみたいなことを因子で実現できるようになったんだよ。ちなみに、条件をつけたからといって発動したときの効果が上がるわけじゃない。常時発動したほうが普通に強いよ。でも、ネズミレースのレーサーネズミに付与するのはおもしろいかもしれないね。


 で、今のは感情発動の応用……みたいなものかな。物質に付与した場合、接触した生物の感情がトリガーになるみたいで、今みたいなことができるってわけ。


「条件についてはわかりましたわ! ですが、さっきのオードはどうなっていたんですの?」

「俺にもよくわからん。下から引っ張られていたみたいだったが」


 エリザさんに聞かれて、オードさんが首を傾げる。二人の視線が僕に向いた。


「さっきのは“超重力”の因……付与術が床にかけられているんですよ」

「「ちょうじゅうりょく?」」


 二人が首を傾げる。まぁ、わかんないよね。重力って言葉がそもそも一般的じゃないみたいだし。万有引力はもしかしたら発見されてるかもしれないけど、だとしても一部の学者が知っているだけで、一般常識ではない。


「ええと、地面が物をすごい力で引っ張るようになります」

「ああ……たしかにそんな感じだったな」

「今日軽装だったから耐えてましたけど、オードさんもいつもの装備だったら潰れてたと思いますよ」

「うげ」


 超重力の特性上、重装備の人ほど大きな影響を受ける。そういう意味では、あんまり鉄道ジャックとは相性がよくないんだよね。まだまだ改良が必要かな。まぁ、因子はあくまで時間稼ぎで、その間にトビネズミ警備隊が制圧する手筈だから、それほど問題はないけど。


「ロイ」


 そのとき、ルクスが僕の名前を呼んだ。その隣にはライナとレイナもいるけど、いつもの笑顔はない。


「どうしたの?」

「あいつらの捕縛を手伝ってたんだが……こんな物を持っていたぞ」

「え!?」


 ルクスが手渡してきた物を見て、びっくりした。だって、それは銃に見えたから。


「なんだ、それ」


 レンサーさんはピンと来ていないのか、首を傾げている。それはオードさんたちも同じだ。


「たぶん、武器だと思います」

「武器? それがか?」


 まぁ、そういう反応が普通だよね。


「強力な矢を飛ばす魔道具みたいなものだと思います」

「なんだと――」

「うぐぐ……この仕掛けをとめてくれ」

「あ、はい」


 オードさんとレンサーさんがまた潰れかけてしまった。やっぱり、感情発動は問題がありそうだなぁ。


 それはおいおい考えるとして、銃だこれは、明らかにこの世界の技術で作られた物ではない。ルクスたちが顔色を悪くしているのは、リックの研究小屋に出入りして多少の知識があるからだろうね。


 もちろん、これを作ったのがリックだとは思っていない。当然、レグザルでもルーナでもないだろう。


 邪教徒。その存在が、僕の頭にちらついた。

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