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198. 従魔登録に来たはずが

 トビネズミが働き先を求めてくるって話には驚いたけど、そうなるとなおさら従魔登録はやっておかないと。ちょこちょこビネが代理でやってくれているけど、全然間に合ってないんだって。


 というわけで、みんなで従魔ギルドに向かう。ロボが100体に、新規登録予定のトビネズミが40人だ。かなりの大集団になってるから、どうしても注目を集めちゃう。道行く人への説明要員として、僕とビネが集団の先頭、ルクスとライナ、レイネが後ろについて移動する。


「わぁ! トビネズミだよ!」

「サーカスかな?」

「いや、違うだろう。あれはきっとレースに出る新人だな!」

「あのゴツゴツしてるのは?」

「ありゃゴーレムだな。警備かな」


 従魔ギルドのある通りは人が多い。迷惑にならないように端を歩いてるんだけど、足を止めてしまう人が出るんだよね。そのせいでちょっとした渋滞が起きてる。こうならないためにも、もっとこまめに登録しないと駄目なんだろうなぁ。


 ありがたいことに、街の人たちは好意的に見てくれている。サーカスやネズミレースで、うちのトビネズミは大人気だ。今回も何かの宣伝と勘違いしてるみたい。


 まぁ、あながち間違いじゃないんだけど。今回の新たに従魔となったトビネズミの半分はレーサー志望。ネズミレースで栄光を掴もうとブルスデンにやってきた子たちだ。


 彼ら彼女らはレーススターになるという野望を持っている。だからというわけではないんだろうけど、お調子者が多くて、サービス精神も旺盛だ。


「チュ!」

「チュチュウ!」


 歓声を送る人たちに手を振る……くらいならいいんだけど、集団から離れてファンサービスまでしようとするから困る。


「チュウ!」

「「「ピ――!」」」


 幸い、ビネとロボたちがしっかり引率してくれたので、ある程度統制はとれてたけど。そうでなければ大変になってたかも。


 どうにかこうにか、従魔ギルドにたどり着いた……のはいいけど、ここで問題発覚。


「……あれ、もしかして、全員は入らないんじゃない?」

「チュウ?」

「あはは……何も考えてなかった」

「チュウ」


 ビネは呆れたって感じに息を吐く。僕に何か考えがあると思ってたみたい。でも、残念。何も考えてませんでした。


「あらあら、これは大変ね」


 どうしようかと入口で立ち往生していたら、ギルドの中からアクラさんが顔を出した。


「すみません。全員の従魔登録をしたいんですけど……」

「受付には入らないわねぇ。訓練室を開放するからちょっと待っててね」


 訓練室は、ギルドの訓練とか試験に使われる部屋だ。動き回るのでそこそこの広さがある。その訓練室を3部屋分開けてもらえたので、全ロボをそこに押し込む。ちょっとかわいそうな気もするけど、そこはロボだから本人たちは平気そうだ。


「何回かに分けるべきだったな」

「ゴーレムぎゅうぎゅう」

「ぎゅー」


 ルクスたちともようやく合流できた。移動するだけで大変だったよ。まぁ、図らずともネズミレースの宣伝にはなったみたいだけど。あと、ロボたちのお披露目としては悪くなかったかも。


「こりゃまた大勢でやってきたねぇ」


 受付前でしゃべっていると、アクラさんが猫を抱えてやってきた。魔猫で従魔ギルド長のケルテムさんだ。


「すみません。いろいろ立て込んでいて」

「うん。まぁ、話は聞いてるよ。ラーベルラに行ってたんだってね。あっちには従魔ギルドがないからしょうがないかニャア」


 ケルテムさんは僕の事情を知っているみたい。おかげで、まとめての従魔登録になったことにお小言みたいなものはなかった。けど――


「どうしようか。この数の登録試験をするのは大変だよ」

「そうですねぇ」


 トビネズミたちを前にケルテムさんとアクラさんが相談している。やっぱり、この数は非常識だったみたい。


「すみません。今日は一部の子だけ登録してもらって、残りの子は後日でも構いませんから」

「謝る必要はないんですよ。これが私たちの仕事なんですから」

「まぁ、いっぺんに片付けたほうが楽は楽だしニャア」


 迷惑かけたかなと思うけど、ニコニコ笑って大したことがないと言ってくれる。とはいえ、実際に試験をやると大変だよね。


 どうするのかな、と思ってたらケルテムさんがぽふっと肉球で受付の机を叩いた。


「よし。今回の試験はなし! 全員合格ということにするニャ」

「えぇ!?」


 あまりな発言に大きな声が出ちゃった。でも仕方ないよね。試験なしで合格なんて。


「ご自分が楽したいからって、それは乱暴すぎますよ」


 流石にこの決定には納得できないみたいでアクラさんが苦言を呈す。けれど、ケルテムさんはゆるゆる首を振った。


「別にそういうわけじゃないよ。楽でいいなぁとは思うけどねぇ」


 にゃははと笑ってケルテムさんは続ける。


「ちょっと話を省略しすぎたから、順を追って話すよ。まずねぇ、ロイ君には従魔に関する特殊な才能があるのは間違いないニャ。そうだよね?」


 ケルテムさんが見透かすように言った。僕には固定因子で【魔物使いの才能】がある。そういう意味ではケルテムさんの言う通りだと思う。


 僕が頷くと、ケルテムさんも2、3度頷いた。


「そういう子には優先的にギルドの要職についてもらうって制度があったでしょ」

「制度ではないですけど、積極的にスカウトするという方針ですね。あら、まさか」

「うん。ロイ君には従魔ギルドの支部長になってもらおう」


 へ……?

 ケルテムさん、今なんて言った?


「ロイを支部長にするって、そんなことできるんですか?」 


 ビックリして言葉が出ない僕の代わりにルクスが聞いてくれる。それでもケルテムはペースを崩さず、ゆっくり頷いた。


「そりゃできるよ。だって、僕がギルド長だからニャア」


 そうだった!


 ケルテムさんは従魔ギルドの長。それはこの街のという意味ではなく、この国の従魔ギルドすべてを統括するという意味だ。支部長の採用権限くらいあるのかも。


「支部ー?」

「どこの支部ー?」


 ライナとレイネは“支部”って言葉が気になったみたい。たしかにそれも重要だ。よく知らない場所に派遣されるとか、嫌だよ。せっかくまた、ブルスデンのお屋敷に戻れたのに。


「なんでもいいんだけど……君たちの商会ってなんだっけ?」

「ロルレビラ商会ですけど」

「ああ、そうだったね。それじゃ、ロルレビラ支部で」


 そんな簡単に決めちゃっていいの!?


 だけど、これはもう決定事項みたいで、ケルテムさんは一件落着って顔をしてる。アクラさんも納得してるみたいで反対はない。


 というわけで……従魔登録しにきたら、何故か僕が支部長になっちゃった!


 支部長なので、僕の権限で従魔登録の合否を出せる。全員合格っていうのはそういう意味らしい。


 なんだか、とんでもないことになったなぁ。

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