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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8.5章】イグノ君、遺跡調査をする
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8.5−12 手の届く範囲で狙うのがベスト

 ……どうして、こんな事になったんだろう。俺は今、圧倒的に理解不能な状況に混乱している。

 浄化遺跡の調査は(擦った揉んだもあったけど)概ね完了の扱いになるそうで、ハーヴェンに連れられて調査結果を報告するため、「依頼斡旋所」にやってきている。まぁ、そこまでの流れは当然だと思うし、文句もない。だけど、ハーヴェンが受付の女の子に報告書を提出している背後で……俺は何故か、キリアさんを右腕にぶら下げていた。


「うふふ。私はイグノ君でも文句ないし、これからよろしくねー」

「……う、うん……」


 相変わらずの透け透けローブ……じゃなくて、魔法学園指定の真っ黒なローブを着ているキリアさんは聖女というよりも、魔女っぽい出立ちで。これはこれで悪くない。だけど……だけど、さ! ここまでの手のひら返しは酷くない⁉︎ 俺はイケメン枠じゃなくて、肥料枠じゃなかったのかよ⁉︎


「やっぱり、男は手の届く範囲で狙うのがベストよね。……奥さんが天使だなんて聞かされたら、恋人にしてだなんて、恐ろしくて言えないわ」

「手の届く範囲……ってのが、気に入らないけど。ま、その判断は賢明かも。……ハーヴェンのお嫁さん、超偉い天使様みたいだから。逆らったら、それこそ死んじゃう程度じゃ済まないみたいだぞ」


 なんでも、人間(キリアさんも含む?)が天使を怒らせた場合、冗談抜きで人生お先真っ暗コース確定らしい。この世界は彼女達の監視下に置かれていて、ちょっとでも目を付けられたら、世界の果てまで追いかけ回されて、最後は拷問フルコースを味わう羽目になる……とは、ハーヴェンの談。

 結局、キリアさんを体よく振り払えなかったハーヴェンは「実は悪魔でした」と種明かしをすると同時に、天使と契約済みである事をバラす事で、彼女のしつこいアプローチを躱す事に成功していた。……ハーヴェンにくっついたら、天使様の制裁もセットでくっついてくるともなれば。いくら好色な性女様と言えど、命懸けの横恋慕はしたくないと見えて、アッサリと身を引いた……までは良かったんだけど。


(で、そのとばっちりが俺に来ちまった……と)


 アプローチを躱したところで、キリアさんを野放しにできない状況は変わらない。それに、キリアさんの必死のお願いもあって、彼女に同情してもいたんだろう。ハーヴェンはキリアさんを今後のお仕事に同行させる事で、保護と同時に監視もするつもりだそうで。


「実は、イグノ君は将来有望な特殊祓魔師候補でな。折角だし、イグノ君と組んでみたらどうだろう?」


 ……とか言っちゃって、いつもの能天気スマイルを炸裂し、キリアさんをその気にさせやがった。褒められるのは悪くないけど、俺に性悪女を押し付けるのはどうかと思うぞ⁉︎ 確かに、俺とくっついた事にしておけば、大天使ちゃんも納得してくれるかもだけど⁉︎ いくら天使ちゃんが怖いからって、無責任にカップリングするなよ!


「お待たせ、お二人さん。無事に報告は終わったぞ」

「うん……それはそうと、ハーヴェン。この後はどうするんだ?」

「とにかく、出ようか。ほれ、人を待たせているし」


 あっ、それもそうか。それでなくても、ハーヴェンは凄腕の特殊祓魔師ってこともあって、依頼斡旋所でも注目の的らしい。天使ちゃんの話があったばかりで、微妙な気分になっちゃうけど……受付の女の子、明らかに浮ついてるし。……ここは早めに出たほうがいいな。色んな意味で。


「……さて、と。気分はどうかな、金色の栄光さん達」

「えーと、気分はそこまで悪くないが……」

「本当に、大丈夫なんだろうな……?」


 そうして、斡旋所からほど近い酒場に待たせていたのは、自称・Sランクパーティの金色の栄光の面々。だけど、真面目な話があるのも理解しているみたいで。ロケーションは酒場なのに、酒を呷ることもなく大人しくしている。


「もぅ〜、大丈夫だって言ってるでしょ? あんた達に植えた種は、芽吹かないようにしてあげたわよ。その内、大きなお便りと一緒に、外に出るから」

「……それが信用できないから、困っているんだろうが」


 うん、その心配はご尤も。俺も自分の腹に寄生植物の種があるだなんて聞かされたら、気が気じゃない。そもそも、こいつらがゲッコウダケを食おうとしたのは……食うに困ったからじゃなくて、種を植えられて絶望したからだった。


(毒キノコの苦しみよりも、寄生の苦しみの方が長いもんな……)


 金色の栄光はランクは自称だけど、冒険者としてはそれなりにマトモな集団だったようで。ヒーラーはいないが、しっかりと薬師をパーティに組み込んでいた。そんで、その薬師が真っ先に気付いたんだとか。……キリアさんがクグツマンドラゴラだって事と、あの森が彼女の縄張りだったって事に。そして、種を植え付けられた奴の末路を知っていたからこそ……手近に生えていた毒キノコで集団自殺を図ろうとした。


(で、そこにノコノコと登場したのがハーヴェンだった……と)


 ハーヴェンの登場は肥料だけじゃなくて、コレクションも引っかかったように見えたんだろう。キリアさんは咄嗟に「聖女なんですぅ」と嘘をつき、魅了に陥落し始めていた冒険者達を雇った体で、ハーヴェンゲットも目論んだ。でも、彼女の予想に反して、ハーヴェンには魅了が通用しなくて。……その後の展開は、俺も知っての通りだ。


「キリアさんが嘘をついていると思いたくないが……まぁ、あんた達の心配も分からなくもない。だから、すぐにでもどうにかしたいのなら、魔法学園のヴァンダート分校へ行ってみて。この書状を見せれば、治療や経過観察までしっかりとしてくれるから」


 そんな事を言いつつ、ハーヴェンが冒険者達に手紙らしき物を配り始めるが……手渡された瞬間、彼らの顔が一気に引き攣る。一体……何が書かれているんだろう? あの紙切れ。


「特殊祓魔師の……紹介状?」

「あんた、まさか……タダの調査員じゃなくて、特殊祓魔師だったのか?」

「えっ? あっ、そうか。そう言えば、面と向かって自己紹介してなかったっけ……」


 って、そこからかよ! 今更過ぎるにも、程があるだろ!


「とにかく! これに懲りたら、2度と公開前の浄化遺跡に踏み込まないでくれよな。今回は運よく、大事に至らかなったけど。あの浄化遺跡はキリアさんの縄張りだった以前に、魔物もかなりの高レベルだった。命が惜しいなら、依頼斡旋所を通して、無理のない仕事を選ぶ方をオススメするぞ」


 ハーヴェンにそこまで言われて、自称・Sランクパーティも反抗する気も起きないらしい。浄化遺跡突入前は、あんなにイキってたのに。助けられた事もあってか、とっても素直に「そうします」と頷いているじゃないの。


「やっぱり、普通の男は見所もゼロよね。うふふ〜! イグノ君は有望な魔術師みたいだし? これから一緒に、お仕事も頑張りましょうね!」

「お、おぅ……」


 無事に肥料枠からイケメン枠に昇格できたのはいいんだけど、ヒロイン第一号がクリーチャーとか。……嫌がらせかな? 嫌がらせなんだな?


(あぁ、女神様。モテにモテたいと、確かに思ったりしましたけど。せめて、ヒロインは普通の女の子でお願いしたいです……)


 ……ハーレムの皮切りが「エイリアーン」だなんて、冗談抜きで夢に出てきそう。いや、マジで。

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― 新着の感想 ―
は?笑 なんでそういうことになっちゃってんの? ハーヴェン先生これオッケーなんですか?何か目論見があるんですか?笑
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