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不承転生者の魔法学園生活  作者: ウバ クロネ
【第8.5章】イグノ君、遺跡調査をする
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8.5−8 人の道的な部分で、ダメなヤツ

 畑を前にして、睨み合うハーヴェンとキリアさん。ハーヴェンと俺が魅了に引っかからなかったのは、いいとして……なーんか、妙に腑に落ちない。だって、ハーヴェン……本気で怒っているみたいなんだもん。いつもの平和ボケした雰囲気、ないんだもん。マンドラゴラが危なっかしいのは、俺も何となくは分かるけど。何も、そこまで怒らなくてもいいんじゃ……。


「きっと、この雰囲気だと……聖女だなんて身の上話も嘘なんだろう? そっちの冒険者さん達はあんたのボディガードじゃなくて、新しい宿主にするために引き連れてきたんじゃないか?」

「ふーん……やっぱり、特殊祓魔師ってのは食えない連中よね。その言い草だと……クグツマンドラゴラの生産方法も知っていそうね?」


 あれれ? そうなの? キリアさん……聖女じゃないんだ?


(でも、まぁ。それは妙に納得かも)


 確かに、キリアさんの馴れ馴れしさと、透け透けさは聖女のそれじゃないよな。どちらかと言うと、ビッチな娼婦のそれなワケで。俺の勝手なイメージかも知れないけど、聖女って、もっとこう……いかにも清らかな雰囲気だと思うんだ、多分。


「なぁ、ハーヴェン。それはそうと……何がそんなに問題なんだ? 確かに、マンドラゴラはヤバいモンスターなんだろうけど……」

「大問題だ。クグツマンドラゴラは、タダのマンドラゴラじゃない。人の体に寄生し、宿主を乗っ取りながら生長する厄介な奴らでな。……種を植え付けられた人間は、まず助からない。そんな危険な魔物を……この端正な畑を見る限り、意図的に育ててきたんだろう。……穴の数からしても、相当人数が犠牲になっているはずだ」


 あっ。これは確かに、ヤバそうか? 危険なのも大概だが、それ以前に……人の道的な部分で、ダメなヤツ?

 俺が何かを察したのにも気づいたのか……渋い顔をしたまま、ハーヴェンが続けることによると。体内で芽吹いたクグツマンドラゴラはじわじわと宿主の体から養分を吸収し、冬が近づくと、宿主を操って土の中に潜り込むらしい。そして、硬いサヤで円柱状のカプセルを作り上げると……そのまま地中で越冬するそうな。


「それで、冬を無事に越した後……夏になったら、自力で這い出てくるんだが。土から出た瞬間に絶叫する習性は変わらないし、通常のマンドラゴラよりもデカい分、凶暴さも増している。だから、本格的に活動される前に引っこ抜いて、サヤ越しに絶命させるのが最も安全かつ、効率的な収穫方法だとされている。だけど……」

「そんなことをされたら、中の人は助からないよな……」


 その通り。まだまだおっかない顔をしているハーヴェンが、やるせなさそうに呟く。

 そもそも、種を植え付けられた時点でアウトなんだろうけど。宿主には意識はきちんとあるそうで……痛みなんかもしっかりと感じるものらしい。


(こりゃハーヴェンが怒るのも、無理ないか……)


 いくら貴重な薬の材料になると言っても、やっちゃいけないタイプの生産方法だと思う。でも、それ以外にも大問題が残ってて。人を食い物にさせて収穫(?)したクグツマンドラゴラは、強烈な媚薬の原料になるそうで。ただただ好意を煽るだけじゃなくて、相手を意のままに操ることまで出来ちまうんだとか。

 ……ここまで聞いといて、なんだけど。これは確かに、全体的におっかないな。魅了に引っかるのもよろしくないけど……何より、寄生ってのがかなりヤバい。それって要するに、内側から食われるってことだよな? そんなことをされるくらいなら、死んじゃった方がマシかもしれない。しかも、トドメにサンドバッグ代わりにされるだなんて……俺は絶対に嫌だぞ。


(あぁぁ……今回のお題はモンスターパニックじゃなくて、エイリアーン的なパニックホラーだった……)


 だけど、畑が空っぽなのを見るに……今年の分は収穫後なのかも知れない。ハーヴェンの指摘をそのまま鵜呑みにすれば、キリアさんは冒険者達を新しい肥料にしようとしていたみたいで。……ボディガードにするためってのも、嘘っぽい。


(そう言や、ハーヴェンも言っていたっけな。……俺は本格的に陥落する前にスープを腹に収めたから、大丈夫だったって……あれ? だとすると……?)


 こいつらはキリアさんの魅了にバッチリ引っかかっているってことか? しかも、ハーヴェンの話を聞いても逃げようともしないのを見るに……魅了というよりは、洗脳されている?


「な、なぁ、ハーヴェン」

「その様子だと……イグノ君も、気づいたか?」

「うん……話の流れからするに、キリアさんはここでクグツマンドラゴラを作っているんだよな? で、その大元を集めるために……しっかりと、クグツマンドラゴラの媚薬を使っているで合ってる?」

「だろうな。これだけの人間を一気に服従させられるとなると、魔法薬かそれに準ずる特殊能力を使っていると見て、間違いないだろう」


 魔法薬か特殊能力? えーと……前半は媚薬も含まれそうだし、話の流れからしても不思議じゃないけど。特殊能力は違くない? そんな能力があるんだったら、媚薬に頼る必要はないと思うけど。


(ハーヴェンは一体……何が言いたいんだ? もしかして、キリアさんは……人間じゃないとか⁇)


 ハーヴェンがいるのだから、あまり怖がる必要はないんだけど。下手をしたら、俺も種蒔きされちゃうところだったんだよな? サンドバッグの末路を迎えるかも知れなかったんだよな? ……魅了に引っ掛からなくて済んだとは言え。こうなってくると、キリアさんが「お下品な聖女もどき」から「得体の知れない魔女」に見えてくる。

 いや、大丈夫なはず。いくらなんでも、キリアさんのお口からは「キシャァァァッ!」って長い舌、出てきたりしない……。


「ふふ……そう。気づいちゃったの。……だったら、仕方ないわね。あなた達には特別に、力づくで種を生みつけてあげちゃうわ」


 ゾワリと漂う、不気味なキリアさんの言葉に、背中を強烈な寒気が駆け抜けていく。何やら意識も朦朧としているのか、ボーッとするばかりな冒険者達の視線を尻目に、キリアさんの姿がニョキニョキと変化していって。元から少ない布面積のローブを割いて現れたのは、根っことも虫の足とも取れない、無数に生えそろった緑色の生足。いくらなんでも、この脚線美に見惚れることはできないなぁ……なんて、ブロークンハートな気分で見つめていると。今度はキリアさんの口が耳まで裂け、喉の奥からニョロニョロと長い舌がこんにちわしているじゃないか。

 ……あっ、ヤバい。キリアさん、そっちの住人だった。冗談抜きで、「キシャァァァッ!」系のクリーチャーだった。……これだったら、「蛇さんこんにちわ」なモンスターパニックの方が、まだマシだったかも知れない。クリーチャーに種付けされた日には……俺、お婿に行けなくなっちゃう。

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― 新着の感想 ―
エイリアン!なつかしー! 2くらいしか覚えてないけど笑 にしてもやばいやつやーん。ハーヴェン先生がおこなのもわかるわー
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