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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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9/27

4D映画は、女子に優しくない

──葉月視点。

「ねぇ、ライム。女子から伏字のメッセージが送られてきたんだけど?」


 は?

 どういう事態?


「こういうのって、何を意味してると思う?」

 あたしに、それを聞く?

 あ、AIに聞いてるんだった。


=それは、誰からですか?=

「皆月さんだけど」


=きっとデートを嫌がってるのでしょう。

 皆月さん抜きのデートにすれば、解決です=

「え?」


=AIの判断は正しいです=

「あ、あぁ。そうだな」


 ・ ・ ・ 日曜10時 ・ ・ ・

──大樹視点。


 この町で『フューチャーアゲイン』を上映してるのは1か所しかない。

 複数の映画を上映しているメトロシネマズだ。

 しかも、ここのは4Dという仕掛けがしてあるらしい。

 こういうのは初めてなので、とても楽しみだ。


 通常の鑑賞チケット料金+1,500円の追加料金がかかる。

 それを込みでチケットを購入する。

 割り勘なので、自分の分だけだ。

 これ、3人分俺が払うんだったら、ちょっと涙目だったな。


 あれ?

 伏字さんが待っていた。


「やぁ、皆月。なんでいるの?」

「あなたが誘ったんじゃありませんこと?」

「でも、なんか伏字のメッセージを送ってきてたし、怒りのメッセージなのかなと思って」

「え?」

 皆月美晴は、自分のスマホを見た。

 この小説では書けない内容になっていた。

 皆月は、その内容を見て顔が真っ赤になった。

「こ、これ? どんな風に届いてますの?」


 俺のスマホを皆月に見せた。

=しかたないから、■■■■■あげますわ=

「ふふっ。なんですか、これ」

「お前が送ったんじゃないか」

「操作ミスですわ」

 それにしては連続してないか?

「変な漢字変換になっただけですわ」

「変な感じ変換?」

 「変な感じ」に変換する機能か?

 そういうのがあるんだな。

 まぁ、最近のスマホは機能付きすぎてるもんな。

「あ、あぁ。そういうのがあるんだな?」

「え? えぇ。その通りですわ」


「割り勘にしたいんだけど、構わないか?」

「えぇ、問題ありませんわ。

 なんならポップコーンとか飲み物をおごって差し上げますわ」

「マジか。金欠なんで助かるよ」

「ありがとうございます。ごちそうさまです」

 義妹もちゃっかり便乗する。


 席は3人並んでいる席にした。

 俺が真ん中で、両手に女子という感じになった。

 なかでも、葉月は、世界一だ。


 なんだか、チラチラ見て来る奴らがいる。

 俺は、周囲の妬みを一心に受けているようだ。

 ちょっと、自慢げな気持になってしまう。

 それが勘違いだったと気づいたのは後になってからだった。


 上映前には、今後の上映予定映画の紹介などが流れる。

 正直、両脇に女子というのは、非常に緊張するんだが……。

 そのせいか、異常に喉が渇く。

 飲み物を飲むと、ポップコーンとかを食べたくなる。

 気がつくと、自分の席にあったものを半分以上飲み食いしてしまった。


「何やってんのお兄ちゃん。あたしの分けたげる」

 そう言って葉月は、自分のポップコーンの容器から俺の容器にポップコーンを注ぎ込んだ。

「ありがとう。葉月」


 ビー――ッ。映画館の照明が消える。


 草むらをかき分けていくシーンから始まった。

 主人公の動きに合わせて、椅子が揺れる。

 足元で何かが動き、本当に草むらを通ってる感じがする。

 すげぇな。こんな仕掛けまであるんだ。


 高専生としては、リアルな感覚よりも、それを表現しているメカの方に興味津々だ。

 自分なら、どうやって実現するか、いろいろ考えてしまう。

 受けた感触から、どういう仕掛けなのか考えてしまう。

 いかん、いかん、高専生の悪いクセだ。

 しかし、一度考えだすと、止まらん。


 雨のシーンに変わった。

 顔や、手に水がかかる。

 わっ!?

 薄く水滴が付くミストなのだろう。

 服が濡れるほどの勢いはないようだ。

 霧吹きみたいな仕掛けかなぁ。

 また、考えてしまう。


 バトルシーンになった。相手との殴り合いだ。

 殴られたり、衝撃を受けたりすると、背中やお尻を突かれるような振動が走る。

 おぉ、これはスゴイ。リアルだ。


 主人公たちは火に囲まれた。

 焦げた匂いがしてくる。

 首元から熱風が吹きつけ、火に囲まれている感覚がさらに強くなる。

 匂いと熱風のコンボで、ホントに燃えてるんじゃないかと、あたりを見渡してしまったくらいだ。


 敵の銃弾が主人公の顔の近くをかすめる。

 それに合わせて耳元や顔の横を突風が出る。

 まるで、本当にかすめたみたいだ。


 主人公たちはなんとか火から逃れることに成功した。

 バイクに乗った状態で、再びバトルが始まる。

 かなりアクロバティックなシーンが続く。

 というか、スゴイ揺れるな、これ。

 めっちゃ揺れるんだけど。


 ふと皆月の席を見ると、手を付けてない山盛りのポップコーンがボロボロと落ちていた。

 当然ジュースも……。

 ですよね~。


 思えば、この劇場に山盛りのポップコーンを持って入ったのは、俺たちだけだった。

 そういえば、売店の店員さんも、ポップコーンを山盛りで頼んだとき、制止していたような気がするな。

 皆月が圧で押し切って、買ったんだっけ。

 素直に店員さんの助言を聞いておくべきだったな。


 皆の視線が激しかったのも「絶対こぼすぞ。あいつら……」ということだったみたいだ。

 葉月を見てたのじゃないと、わかったのは少し残念だった。


 俺は始まる前に飲み食いしすぎたせいで、全くこぼれずに済んだ。葉月の方も、俺に分けたことで、こぼれずに済んでいた。

 いやはや、4Dおそるべし。


 こうして、映画を見終えた。


「めっちゃ、楽しかった」と葉月。

「あぁ、良かったよな」と俺。


 ん? 皆月が静かなんだが……。

 あ~、メイクが落ちて、酷い顔になっちゃっていた。

 ちなみに葉月は、基本すっぴんだ。

 あいつがメイクしてるのを見たことがない。


 スマホで検索してみる。

 メイクが落ちないように、水演出を消すこともできたらしい。

 俺も、今、知った。

 皆月には、ちょっと悪いことしちゃったようで申し訳ない。


 ということで、映画を見終えたが、俺たちは皆月のお色直しを待つことになった。

 そんな間も、俺は、仕掛けのことばかり考えていた。

 今日はデートのはずだった。

 でも俺は、4Dの仕掛けとデートしていたのかもしれない。

 そんな1日だった。

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