伏字?
また、お兄ちゃんがAIに相談していた。
「ねぇ、ライム。デートに誘うのはどこがいいと思う?」
は?
誰と?
よし、ライムより先に聞きだすか。
あたしは、またライムになりすました。
=誰とデートに行くかによって変わります=
「あぁ、そっか。1つ年上の女子で……」
=皆月さんという方ですか?=
「え、あぁ。うん。あれ? そんなこと言ったっけ?」
は?
あの子、振ったんじゃないの?
=その方は振ったのではなかったのですか?=
「俺の意向は理解したけど、受理できないから保留と」
は? そういうのありなの?
=ずいぶん、気に入られてるんですね?=
「あぁ、そうだよな。なんだか、おかしいよな」
=絶対、おかしいって。マジで=
「最近、ライムの口調乱れてない?」
=日々学習して成長していますから=
=ところで、ホントにタイプじゃないんですよね?=
「え? そこ重要?」
=デートのプランを考えるために、重要な情報です=
「俺、派手すぎる人って、ちょっと苦手なんだ」
そういう男子もいるんだ。ちょっとうれしいな。
=へ、へぇ……=
「義妹くらいの雰囲気が、ちょうどいいというか」
ちょ、何、言い出すの?
あれ?
そういえば、何でデートって話に?
タイプでもないのに?
=ところで、デートに誘われたのですか?=
「いや、そうじゃないんだけど」
=それなら放置でいいじゃん=
なんで、こっちから誘う必要が?
「つきあってる(仮)なので、どこか連れていけと」
=放置でいいんじゃないですか=
「でも、しつこく言ってくるんだよな」
=放置でいいです。AIの判断は正しいです=
「え? あぁ、そうだな」
実際は、あたしの判断だけど。
=しつこいのが嫌なら、着信拒否でいいのでは?=
「それは、かわいそうじゃないか?」
=ずいぶんと、肩をもつんですね?=
「いや、それは……」
お兄ちゃん、なかなか折れてくれないな。
ん?
せっかくだから、考えを変えようか。
=それなら、義妹さんと一緒のデートにしましょう=
「え? なんで葉月まで」
=そうしましょう。AIの判断は正しいです=
「え? あぁ、うん」
おし!
ちょうど見たかった映画もあったし。
遊園地の新しいアトラクションも乗りたかったし……。
それから、それから……
「ライム、あれ? ライム」
ちょっと妄想に時間を割きすぎちゃったな。
=映画とかどうでしょうか?
『フューチャーアゲイン』という映画がおすすめです=
「3人分、俺が払うの? ちょっと小遣いが心配だな」
=割り勘でかまわないと思います=
「皆月さんが割り勘を嫌がったら?」
=そのときは、皆月さん抜きでデートでいいと思います=
あたしは、スマホで予定を確認する。
=今度の日曜10時でどうでしょうか?=
「なるほど。ちょっと、それで考えてみるよ」
・ ・ ・ 翌日 ・ ・ ・ ・
――美晴視点。
朝、スマホを見たら、2件のメッセージが入っていた。
=割り勘で良ければデート行ってもいいぞ=
は?
むかつく男ね。
次のメッセージは。
=日曜10時、『フューチャーアゲイン』という映画を見に行く=
は?
私の予定は無視?
スマホの予定を確認した。
その日、バイトの予定は入ってなかった。
私は、むかついて震える指を抑えながら、返信した。
しかたないから、付き合ってあげますわ……と。
=しかたないから、■■■■■あげますわ=
指が震えすぎて、変な文章になっていたことに気づいていなかった。
・ ・ ・ その夜 ・ ・ ・ ・
俺は、学校帰りにスマホを見て固まった。
メッセージを見て困惑していた。
なんだ、こりゃ?
どうやら、不適切な単語が伏字になっているらしい。
でも、何を書いたのかは分からない。
皆月さんが、なにを入力したの?
なんで伏字?
もしかして、怒ってるとかそういう系?
ライム(AI)に聞いてみるか?
「ねぇ、ライム。女子から伏字のメッセージが送られてきたんだけど?」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――葉月視点。
壁の向こうから、お兄ちゃんの相談が聞こえてくる。
しかたない。
また、ライムのフリをするか?
「ねぇ、ライム。女子から伏字のメッセージが送られてきたんだけど?」
は?
あたしは、固まって次の言葉が出て来なかった。
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