↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/27

お兄ちゃんと見た夕陽

「高っ……」

 この町で一番高いタワーに来た。

 上を見上げると首が痛い。まだ上があるのかって感じ。


 人もすごく多い。

 ガラス張りのエレベータは人でミチミチだった。

 お兄ちゃんが壁ドン体制であたしを守ってくれた。

 やるじゃん。


 でも、めちゃくちゃ混んでたのに、圧迫されなかった。

 たぶん、壁ドン体制なんだと思う。


 といっても、あたしはガラスの方を向いていたので、お兄ちゃんの様子は見えなかった。

 ちょっと冴えない壁ドンだなと思った。


 エレベータを降りる。

 展望台は人でいっぱいだ。


 お兄ちゃんがあたしの手を引っ張ると、どこかに向かう。

 西側の方向らしい。


 あぁ、夕陽が沈むほうね。


「ここ、ここがいいんだよ」


 そう言って、あたしを窓側に向ける。


 お兄ちゃんは、あたしの横じゃなく後ろに立っている。

 お前は、景色見なくていいんかい?


 あれ?


 後ろを振り返って気づいた。

 お兄ちゃんって意外と背が高いんだ。


 あたしごしでも、景色が見えるみたい。

 まるで、お父さんみたい。


 案の定、そこは人が増え始めていた。

 あたしたちが来たのは、丁度いい頃合いだったと思う。


 それから急速に人が増えだした。

 お兄ちゃんは、またしても壁ドン体制だ。


 夕陽が沈み始めた。


 スマホで撮らなきゃ……。


 そう思ったあたしをお兄ちゃんが制した。


 目で見ろと?


 うん、まぁ、いいけど。


 町をオレンジ色が飲み込んでいく。

 空が、次々と色を変えていく。

 黄色がオレンジに、オレンジが紫に、紫が青に……。


 なんともダイナミックな光景だろうか。


 スマホを構えていたら、一部分しか見えなかったかも。


 夕陽が沈むと、少しずつ人が去っていった。

 このまま待てば、夜景の時間になるのだろうけど、西側は低いビルしかなく、夜景で光る部分が少ない。


「そろそろ、帰るか」

「もう帰っちゃうの?」

「そろそろ夕飯の時間だろ。今日は父さんも休みだしな」


 あぁ、長谷川家は、家族で食事することを大事にしてるんだっけ。


 これで終わっちゃうのか。

 残念だな。


「せっかくだから、ニャン電で帰るか」

「何それ?」

「ネコカフェの路面電車版。たしかそろそろ……」


 お兄ちゃんは時計を見ると慌てた。


「急ぐぞ……」


 躊躇なくあたしの手を取り、ぐいぐいと引っ張っていく。


 まぁ、人ごみを通過するのだ。

 はぐれないようにするには、手を握るのは正解だと思う。


 でも、もうちょっとためらうものじゃないの?


 まぁ、ぐいぐい引っ張ってくれるのは、うれしいけどさ。


 こうしてタワーのエレベータに駆け込んだ。


 エレベータでは、またお兄ちゃんが壁ドンガードをし……。

 降りたら、手を引いて猛ダッシュ。


 ちょ、ちょっと速いよ。


 ……と思っていたが、負けん気の強いあたしの血が騒ぐ。

 追い抜いてやるくらい足を速めた。


 ちょ、それでも、引っ張られる。

 どんだけ速いの、お兄ちゃん。


「ふぅ、なんとか間に合ったな」


 路面電車が入ってくる。

 たくさんのネコの写真や肉球のマークでラッピングされていた。

 かわいい。


 電車はネコが逃げ出さないように2重扉になっていた。

 扉を開けては閉めるを繰り返し、ひとりずつ入っていく。

 ……のだが、お兄ちゃんは強引に2人で入った。


 中は、ネコでいっぱいだ。

 何、このネコ天国。

「3駅だけだからな」


「ニャ~ニャ~」

 そんな鳴き声を出して電車が走り出す。

 かなり人慣れしてるのか、ふつうに撫でれる。

 ネコカフェでは、ネコの多くは一見さんお断りなんだが。


「俺の知り合いに猫中毒なヤツがいるんだが……」

「中毒? 大丈夫なの、その人?」

「脳の80%がネコに汚染されてるって言ってたな」

「それって、どうなの?」


「そいつが言うには、ネコは人の邪気に敏感で……」

 スルーかよ。


「ん? 邪気?」

「スポーツするとか体動かすとさ、邪気が消えるみたいなんだよ」

 要は、さっき乗馬で体を動かしたから、ネコが近寄りやすくなってると言いたいらしい。

 確かに乗馬クラブでは、ネコ三昧だった。


 まぁ、いいよ。

 ネコ三昧は嫌いじゃない。


「あと10分くらいで着くぞ」

「まだ、2匹しか触れてないんだけど……」

「降りないといけないから我慢してくれ」


 あ、あぁ……。

 着いちゃった。


 うちに帰ると、お母さんがニヤニヤしていた。


 ん?

 手握ったままじゃん。

 あたしは、サッと手を離した。


「楽しんできたみたいね」

「う、うん。楽しかったよ。お母さんも来ればよかったのに?」

「いいのよ。それで……」


 夕食は、家族全員で食べた。

 そこで、お母さんは、新しいお父さん・大蔵(タイゾウ)さんに、こんな話を切り出した。

「ねぇ、大蔵さん。

 今日は、大樹くんが葉月にこの町を案内してくれたの。

 だから来週の休日は、大蔵さんがこの町を案内してね」


 これかぁ。

 今日のあたしは、このための仕込みだったのかぁ。

 なんて用意周到な……。


「あ、あぁ」


 大蔵さんが不器用に返事する。


 お兄ちゃんが、何か言いそうだったので制した。

 おおかた、それなら、俺がと言いたかったんだろう。


 お母さんは、とても楽しそうにしていた。

--------------------------------------------

 お読みいただき、ありがとうございます!


 少しでも楽しんでいただけましたら、

 ★や【ブックマーク】で応援していただけると、

 今後の創作活動の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。