↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/27

パンツの正しい使い道

「よう、大ちゃん。今日も乗りに来たのかい?」

「いや、体験乗馬の野外コースを頼みたいんだ。

 初心者だけど、俺が引いて俺が責任を持つ」

「ふぅん? まぁ、いいけど」

「キュロットと長靴(ちょうか)貸してもらっていい?」

 などと話し込んだ上で、あたしは、

 女性スタッフの導きで、更衣室に案内され、

 下はキュロットに、靴は長靴に履き替えた。


 キュロットというのは、

 足にピチピチ密着する感じの乗馬ズボンだ。


 事務室にはネコがいた。

 カワイイ。実は、ネコ大好き。

 触れそうとしたら、スンとかわされ逃げられた。

 まぁ、わかってたけど。


 着替えて出てくると、

 お兄ちゃんも乗馬用の装いに着替えていた。

 ふぅん?

 様になってるじゃない。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 最初砂場で、練習し屋外へ行くコースだ。


 まずは馬に……

 ちょ……

 高いんだけど。足、届かないんだけど。


 あたしの足をお兄ちゃんが手で持ち抱え、

 ぐんと上に持ち上げる。

「乗りにくかったら、俺を踏んでもいいから」

 そんなことできないでしょ。

 あたしは、なんとか馬に乗った。


 高っ……。高すぎでしょ。

 馬に乗ると、こんなに高いの?

 あたしは、背が高いほうではない。

 そのせいか、高い視線は大好きだ。

 子どもの頃、お父さんに肩車してもらったのを思い出した。


 歩く(並足(なみあし))、止まる、方向転換、走る(速歩(はやあし))という基本操作を教えてもらう。

 走るのは立ったり座ったりする必要があり、ちょっと疲れる。

 走り方には他に、駆歩(かけあし)、襲歩(しゅうほ)というのがあるらしいが、初心者はそこまでしない。


 おおむねマスターしたので、お兄ちゃんが手綱を握り、馬を屋外に連れ出した。

 お兄ちゃんは、ここにはよく来るそうだ。

 乗馬のライセンスも持っているらしい。


 林の道を少し抜けると、見晴らしのいい道に出た。

 町が一望できる。

 うん、こういうのも悪くない。

 馬に揺られて、しばしの時間を楽しんだ。


 最後は、馬の首のあたりをポンポン叩いて、褒めるらしい。

 あたしも、それを実践してみた。

「ようし、えらいぞ」

 ブルル……

 馬が何か応えた気がした。


 乗馬を堪能したら、

 お兄ちゃんが馬を洗うというので、事務室で待っていた。


 さっきのネコが、そそそ……と寄ってきて、

 足元で体をスリスリし始めた。

 え?

 ちょ……?


 女性スタッフが言った。

「気に入られちゃいましたね」

 ネコを触るが、全然逃げない。


 ふと、持ち上げて膝に乗せてみた。

 逃げない。

 膝の上で大人しくしてくれた。

 撫で放題だ。おぉぉぉ……。

 ネコの体温と、呼吸が伝わってくる。


「このコ、何て言うんですか?」

「トラです」

 う~ん。シマシマの柄だからトラ。

 わからなくはないが、安直すぎん?

 まぁ、かわいいからいいけど。


 お兄ちゃんが戻ってきた。

「すまん、待たせたな」

「今日、お兄ちゃんは乗っていかないの?」

「うん? 見たいのか?」

 見たいっちゃあ、見たい。

 本音は、まだネコいじりたいだけだが。


「しょうがないな、次の時間予約入れるか」

 そう言って、事務所で何かに書き込んで、

 回数券みたいなのを渡していた。

 乗馬クラブには時間割みたいなのがあって、

 そのスケジュールに合わせて、予約を入れたりするそうだ。



 お兄ちゃんが馬を連れて砂場に現れた。

 頭には、帽子型のヘルメット。ムチも手にしている。

 砂場には、丸太に白と赤で模様を入れたようなものが、置かれている。障碍(しょうがい)というそうだ。

 なんか、人と同じくらいの高さのものもあるんだけど、大丈夫なん?


 お兄ちゃんが馬を走らせる。

 おぉ、これが駆歩(かけあし)ってヤツ?

 3拍子のリズムで馬が駆けていく。


 障碍を飛ぶ。

 ふわりと、馬が浮き上がる。

 あんなに高いのを飛んじゃうんだ。

 すっご……。


 詳しいことは何も知らないけど。

 なんだか、すごくカッコよかったぞ。


 馬に乗ったあと、また、お兄ちゃんは馬を洗いにいく。

 ここでは、馬の手入れをして終えるのが基本らしい。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「すまん、待たせたな。せっかくなので、ここで昼も食べていこう」

 ログハウスみたいなところは、食堂になっているらしい。

「ここの兄ちゃんが作る料理はうまいぞ。

 予約したら、コース料理も作ってくれるらしい」


 マジか?

 凄腕シェフか。


 ログハウス――もとい、食堂に入ると、

 少しチャラい感じのお兄さんが話しかけてきた。

「よう、大ちゃん。彼女かい?」

 この人が、例の凄腕シェフなのだろう。


「いや、ちがうよ。でも、大切な……」

 大切な?

 なにかボソボソと言ってるけど、聞こえない。


「大切な?」

 シェフがツッコんだ。

 ナイス、ツッコミ。今日のツッコミ大賞を与えよう。


「……か、家族なんだ。親父が再婚して義妹ができたんだ」

 なんだかお兄ちゃんは早口だった。

「ふぅん?」

 シェフは信じてないようだった。


 お昼をいただいた。

 なんのことない、シェフのおすすめ日替わり定食だ。

 でも……

「おいしい!」

「だろ!」


 昼を食べ終えると、お兄ちゃんはさっきのパンツが入った袋を差し出した。いつの間にか、ジップロックとタオルまで入っている。

「更衣室にシャワー室がついてる。シャワー浴びた方がいいぞ」

 シャワー浴びさせて、どこに連れてくつもりだぁ~。

 あたしの妄想は、どんどん加速していく。


「馬は結構ニオイが付くからな」

 え?

 あぁ、そうなのね?

「あぁ、1回洗濯したくらいでは落ちないからな」

 マジかぁ!?

 おしゃれ着じゃなくて良かったぁ。

 それで、着替えか。パンツと靴下は貸してもらわないもんな。

 それで、ジップロックか。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 乗馬クラブに寄ったあとは、またロープウェーで山を下りる。


 今度は、町の方向がガラス張りになっている。

 町の景色が一望できた。


 いいじゃん、いいじゃん。


 だんだん下がっていくのが玉に瑕だけど。


 次は、どこに連れていくつもりなんだろう。


 あたしは、どことなくワクワクしていた。

--------------------------------------------

 お読みいただき、ありがとうございます!


 少しでも楽しんでいただけましたら、

 ★や【ブックマーク】で応援していただけると、

 今後の創作活動の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。