ライムの中の人
名前呼びもできた。
スキンシップも、軽くだけどできはじめている。
なのに――告白だけは、まったく進まない。
しかたないので、こちらから仕掛けるしかなさそうだ。
今日は誘導尋問を試してみたいと思う。
今好きな人とかいるのと無邪気に聞いて、相手に意識させる作戦だ。
どもらずサラッと流すくらいがいいらしい。
居間で2人しかいない時に……。
よ、よし、今だ。
「大樹って……今……す、す、好きなひ、ひと、い、いるの?」
くそぅ。めちゃくちゃどもった。
「えっ……!? な、なんでそんなこと聞くんだよ!」
お、いいね。良い感じに慌ててる。
「別にぃ~。ちょっと聞いてみたかったんだ……」
「……う、うん。い、いるよ」
大樹はちょっと悩んだ末に答えたが、やっぱりどもっていた。
まぁ、答えはあたしだって、ずっと前に聞いてるんだけど。
顔が真っ赤だぞ。
一応、意識させることには成功したかな?
「ふ、ふーん、そっか〜。そっか~」
「ちなみに、どんなコ?」
「え、え……あ……。う~ん、そうだな。世界一かわいいコだよ」
「へ、へぇ~」
ちょっと、これ、思ったよりこっちの方が恥ずかしいんだけど。
「見た目だけ? 性格とかは?」
「せ、性格もいいよ。なんというか適度な距離感というか」
あれ? もっと近づかないといけないのかと思ったら……
今の程度でいいんかい。
「楓ちゃんみたいに、ベッタリなのがいいのかと思ってた」
「たまにはいいかもしれないけど……」
たまには、いいんかい!
「ずっとだと、ちょっとシンドイかな」
「ふ~ん」
「そういう葉月はどうなんだよ?」
おっと、こっちに飛び火しちゃった。
「あたしは気軽に話せる仲がいいな」
「ふ~ん」
この作戦を実行してから数日経った――
何もない。何もないんだが?
……。
これは、あれですか? 作戦失敗ですか?
これでも、気づかない系ですか?
気づいてるけど、足を踏み出せない系ですか?
仕方ないので、あたしは次の策に移行した。
「あたし、自分から告白できないタイプなんだよね」
突然、そんなことを切り出してみた。
何の脈絡もなく、いきなり。
「なんだ葉月、急に……」
「ただ告白は男の人からがいいな……って言いたかっただけ」
そう言って、あたしは部屋に戻った。
だって、恥ずかしいじゃん。
――その夜――
――葉月視点
「ねぇ、ライム……」
またきたか。
あたしは例によって、AIのライムを真似て答える。
=はい、なんでしょう=
「やっぱり告白って男の方からすべきなのかな?」
お? 今日、言ったことを早速気にしてるのか?
=そうだと思います=
「やっぱり、そうかぁ~。
でも、なぁ、今の関係が壊れそうで怖いんだよな」
――大樹視点
スマホがブルっと振動した。
いけね。マナーモードのままだった。
マナーモードだと、ライムが応答してくれないんだよな。
あれ? え?
スマホの画面を見た。
これまでの相談履歴など表示されていない。
それじゃ、この声は何?
=どうかしましたか?=
それは、壁の向こう側から聞こえていた。
もしかして?
「俺の義妹が、俺のこと好きなのか知りたいんだけど?」
=最近の妹さんは、どんなことを言っていましたか?=
「『好きな人はいるか?』って言ってた」
=他には何か言ってませんでしたか?=
「『男の人から告白されたい』って言ってた」
=なるほど、それは脈ありですね。ですが、あなたが告白しなければ何も進みません=
スマホに目を落とす。
やはり、相談内容は表示されていない。
「俺が告白したらOKしてくれるかな?」
=たぶん大丈夫でしょう。しかし、あまり期間を空けると逆に冷めてしまうでしょう=
スマホの画面は消えたままだ。
ロック解除するも、相談内容は表示されていない。
「なるほど。ありがとう、葉月」
=どういたしまして=
そうか。
この声は葉月だったのか。
え?
ちょっと待て?
どこからが葉月だったんだ?
もしかして、葉月が来たときからずっとか?
俺が葉月が大好きだって言ったこと、筒抜けだったのか?
あ~。もう。
恥ずかしすぎる。
明日から、葉月にどうやって会えばいいんだ。
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