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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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ライムの中の人

 名前呼びもできた。

 スキンシップも、軽くだけどできはじめている。


 なのに――告白だけは、まったく進まない。

 しかたないので、こちらから仕掛けるしかなさそうだ。


 今日は誘導尋問を試してみたいと思う。


 今好きな人とかいるのと無邪気に聞いて、相手に意識させる作戦だ。

 どもらずサラッと流すくらいがいいらしい。


 居間で2人しかいない時に……。

 よ、よし、今だ。

「大樹って……今……す、す、好きなひ、ひと、い、いるの?」

 くそぅ。めちゃくちゃどもった。


「えっ……!? な、なんでそんなこと聞くんだよ!」

 お、いいね。良い感じに慌ててる。

「別にぃ~。ちょっと聞いてみたかったんだ……」


「……う、うん。い、いるよ」

 大樹はちょっと悩んだ末に答えたが、やっぱりどもっていた。

 まぁ、答えはあたしだって、ずっと前に聞いてるんだけど。

 顔が真っ赤だぞ。

 一応、意識させることには成功したかな?

「ふ、ふーん、そっか〜。そっか~」


「ちなみに、どんなコ?」

「え、え……あ……。う~ん、そうだな。世界一かわいいコだよ」

「へ、へぇ~」

 ちょっと、これ、思ったよりこっちの方が恥ずかしいんだけど。


「見た目だけ? 性格とかは?」

「せ、性格もいいよ。なんというか適度な距離感というか」

 あれ? もっと近づかないといけないのかと思ったら……

 今の程度でいいんかい。


「楓ちゃんみたいに、ベッタリなのがいいのかと思ってた」

「たまにはいいかもしれないけど……」

 たまには、いいんかい!

「ずっとだと、ちょっとシンドイかな」

「ふ~ん」


「そういう葉月はどうなんだよ?」

 おっと、こっちに飛び火しちゃった。


「あたしは気軽に話せる仲がいいな」

「ふ~ん」


この作戦を実行してから数日経った――


 何もない。何もないんだが?

 ……。

 これは、あれですか? 作戦失敗ですか?

 これでも、気づかない系ですか?

 気づいてるけど、足を踏み出せない系ですか?


 仕方ないので、あたしは次の策に移行した。


「あたし、自分から告白できないタイプなんだよね」


 突然、そんなことを切り出してみた。

 何の脈絡もなく、いきなり。


「なんだ葉月、急に……」

「ただ告白は男の人からがいいな……って言いたかっただけ」

 そう言って、あたしは部屋に戻った。

 だって、恥ずかしいじゃん。


――その夜――

――葉月視点

「ねぇ、ライム……」


 またきたか。

 あたしは例によって、AIのライムを真似て答える。

=はい、なんでしょう=

「やっぱり告白って男の方からすべきなのかな?」

 お? 今日、言ったことを早速気にしてるのか?

=そうだと思います=

「やっぱり、そうかぁ~。

 でも、なぁ、今の関係が壊れそうで怖いんだよな」


――大樹視点

 スマホがブルっと振動した。

 いけね。マナーモードのままだった。

 マナーモードだと、ライムが応答してくれないんだよな。


 あれ? え?

 スマホの画面を見た。

 これまでの相談履歴など表示されていない。

 それじゃ、この声は何?


=どうかしましたか?=

 それは、壁の向こう側から聞こえていた。

 もしかして?


「俺の義妹が、俺のこと好きなのか知りたいんだけど?」

=最近の妹さんは、どんなことを言っていましたか?=


「『好きな人はいるか?』って言ってた」

=他には何か言ってませんでしたか?=


「『男の人から告白されたい』って言ってた」

=なるほど、それは脈ありですね。ですが、あなたが告白しなければ何も進みません=

 スマホに目を落とす。

 やはり、相談内容は表示されていない。


「俺が告白したらOKしてくれるかな?」

=たぶん大丈夫でしょう。しかし、あまり期間を空けると逆に冷めてしまうでしょう=

 スマホの画面は消えたままだ。

 ロック解除するも、相談内容は表示されていない。


「なるほど。ありがとう、葉月」

=どういたしまして=

 そうか。

 この声は葉月だったのか。


 え?

 ちょっと待て?


 どこからが葉月だったんだ?


 もしかして、葉月が来たときからずっとか?


 俺が葉月が大好きだって言ったこと、筒抜けだったのか?


 あ~。もう。

 恥ずかしすぎる。


 明日から、葉月にどうやって会えばいいんだ。

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