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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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2人きりかよ

 楓ちゃんは終始、大樹にベッタリだ。

 だいたい大樹のひざの上にのっている。

 小さい子なので、大樹の胸元にすっぽりおさまっている。

 そのまま、大樹とゲームで対戦したりしていた。


 大樹の顔もなんだか緩んでいた。

 いや、緩みすぎだろ。

 ちょっとムカついたけど、それ以上に……。


 楓ちゃんが、あたしと目が合うたびに、勝ち誇った笑顔でこちらを見てくる。

 すごく、すご~く、カチンとくる。

 人を逆なですることにかけては一流だ。

 実にムカつく。どんな大人になるか心配だ。


 あざとく甘えることにも特化している。

 甘え上手なのだろう。

 男子って、こういうコの方が好きなのかな。

 なんだか、すごくモヤモヤする。


 楓ちゃんが来ている間、ずっと大樹を占有されている気がする。


 楓ちゃんが大樹の部屋で遊びたいというので、大樹が連れていった。

 部屋まで連れて行くのかよ。

 少しは嫌がればいいじゃん。


 2人きりかよ。

 せめて、あたしも誘えばいいじゃん。


 戻ってきた楓ちゃんは、大樹に甘えつつも、あたしをジロリと睨んできた。


 ん?

 勝ち誇った感じじゃないのが意外だな。


 はは~ん。

 もしかして……。


 大樹の部屋で、あたしの写真を見てしまったな?

 何枚もの写真を超絶大きくプリントしてもらってたもんな。

 大樹のことだ。絶対、全部部屋に貼っている。

 白玉で撮ってもらったから、あたしのかわいさ2倍くらいになってるし……。


 どうよ?


 楓ちゃんは悔しさのあまり、地団駄を踏んでいた。

 小さな体でバタバタしているのが、なんかかわいい。

 ふふん。


 なぜか、あたしはニヤリと笑っていた。

 自分で気づいて、逆に焦った。



 夕食は、みんなで同じテーブルで食べた。

 うちの食卓は結構広い。

 2家族くらい同時に食事できる。


 あれ?

 大樹の左のほっぺに、ご飯粒がついていた。


「大樹。ほっぺたに、ご飯粒ついてるよ」

 そう言いながら、勝手に手が動いていた。

 あ、あれ?

 あたしは、大樹のほっぺたについてたご飯粒を、手で取るとパクリと自分の口に入れた。


 楓ちゃんの顔が真っ赤になった。


 ん?

 あれ?

 そこって……楓ちゃんが大樹のほっぺたにキスした場所じゃん。


 あ?

 間接キス!?


 いや、別にそういう意味じゃないからね。

 と口に出すわけにもいかず……。


 何を勘違いされたのか、それ以来、あたしは楓ちゃんに距離を取られるようになった。


 お~い。

 取って食べたりしないぞ。


 まぁ、変に絡まれるよりは、やりやすいか?



 こうして、親戚親子の滞在も終わり、彼らは帰っていった。

 帰る際、楓ちゃんは大樹に「抱っこ、抱っこ」とお願いし、大樹に抱えられながら、玄関まで行った。


 そして、頬にキスをしようとしてやめた。


「それじゃ、お兄ちゃん。またね。

 約束、絶対、絶対忘れないでね」


 そう言って帰っていった。


「大樹、何か約束したの?」

 知ってるけど、あえて聞いてみた。


「約束? 何かしたっけ? 葉月、覚えてる?」

 覚えてないのかよ。

 なんだか、楓ちゃんが少し可哀そうに思えてきた。


「ううん。知らない。全然、知らな~い」

 だけど、教えてあげない。教えてあげるものか。

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