2人きりかよ
楓ちゃんは終始、大樹にベッタリだ。
だいたい大樹のひざの上にのっている。
小さい子なので、大樹の胸元にすっぽりおさまっている。
そのまま、大樹とゲームで対戦したりしていた。
大樹の顔もなんだか緩んでいた。
いや、緩みすぎだろ。
ちょっとムカついたけど、それ以上に……。
楓ちゃんが、あたしと目が合うたびに、勝ち誇った笑顔でこちらを見てくる。
すごく、すご~く、カチンとくる。
人を逆なですることにかけては一流だ。
実にムカつく。どんな大人になるか心配だ。
あざとく甘えることにも特化している。
甘え上手なのだろう。
男子って、こういうコの方が好きなのかな。
なんだか、すごくモヤモヤする。
楓ちゃんが来ている間、ずっと大樹を占有されている気がする。
楓ちゃんが大樹の部屋で遊びたいというので、大樹が連れていった。
部屋まで連れて行くのかよ。
少しは嫌がればいいじゃん。
2人きりかよ。
せめて、あたしも誘えばいいじゃん。
戻ってきた楓ちゃんは、大樹に甘えつつも、あたしをジロリと睨んできた。
ん?
勝ち誇った感じじゃないのが意外だな。
はは~ん。
もしかして……。
大樹の部屋で、あたしの写真を見てしまったな?
何枚もの写真を超絶大きくプリントしてもらってたもんな。
大樹のことだ。絶対、全部部屋に貼っている。
白玉で撮ってもらったから、あたしのかわいさ2倍くらいになってるし……。
どうよ?
楓ちゃんは悔しさのあまり、地団駄を踏んでいた。
小さな体でバタバタしているのが、なんかかわいい。
ふふん。
なぜか、あたしはニヤリと笑っていた。
自分で気づいて、逆に焦った。
夕食は、みんなで同じテーブルで食べた。
うちの食卓は結構広い。
2家族くらい同時に食事できる。
あれ?
大樹の左のほっぺに、ご飯粒がついていた。
「大樹。ほっぺたに、ご飯粒ついてるよ」
そう言いながら、勝手に手が動いていた。
あ、あれ?
あたしは、大樹のほっぺたについてたご飯粒を、手で取るとパクリと自分の口に入れた。
楓ちゃんの顔が真っ赤になった。
ん?
あれ?
そこって……楓ちゃんが大樹のほっぺたにキスした場所じゃん。
あ?
間接キス!?
いや、別にそういう意味じゃないからね。
と口に出すわけにもいかず……。
何を勘違いされたのか、それ以来、あたしは楓ちゃんに距離を取られるようになった。
お~い。
取って食べたりしないぞ。
まぁ、変に絡まれるよりは、やりやすいか?
こうして、親戚親子の滞在も終わり、彼らは帰っていった。
帰る際、楓ちゃんは大樹に「抱っこ、抱っこ」とお願いし、大樹に抱えられながら、玄関まで行った。
そして、頬にキスをしようとしてやめた。
「それじゃ、お兄ちゃん。またね。
約束、絶対、絶対忘れないでね」
そう言って帰っていった。
「大樹、何か約束したの?」
知ってるけど、あえて聞いてみた。
「約束? 何かしたっけ? 葉月、覚えてる?」
覚えてないのかよ。
なんだか、楓ちゃんが少し可哀そうに思えてきた。
「ううん。知らない。全然、知らな~い」
だけど、教えてあげない。教えてあげるものか。
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