腹黒い親戚
大樹の親戚の親子が泊りに来た。
まさか、あたしに恋愛バトルを仕掛けてくる幼女がいるとは思わなかった。
そのコは、うちに着くなり、
「お兄ちゃん大好き」
と大樹に抱きついていった。
幼女だ。8歳とか言っていたな。
しかも――
ほっぺにキスだと!?
「わたし、お兄ちゃんと結婚するんだ」
「あはは……。うんうん、楓ちゃんが大きくなったらね」
「約束だよ。絶対、絶対だからね。指切り……」
おい。
そんなあいまいな約束、断れ。
今すぐに……。
「葉月、女の子同士、楓ちゃんと遊んであげて」
「うん、わかったよ。大樹」
2人きりになった途端、楓ちゃんが本性を現した。
あざといかわいさなど、どこかに吹っ飛んでいる。
鋭いジト目。
雰囲気まで真っ黒・黒な感じだ。
「けっ……。なぁに、あなた? お兄ちゃんのこと名前呼びして」
「あたしは、葉月。大樹の妹だよ」
「いいこと。わたしはお兄ちゃんと結婚する女なの。ずっと前から、そういう約束をしているんだから」
なぜだか知らないけど、カチンときた。
「親戚だと結婚できないんじゃないの?」
「はとこだから、結婚できるのよ」
そう言われて、なぜか言い返してしまった。
「ふ~ん? あたし、義理の妹なの。血が繋がってないから、大樹と結婚できるわよ」
「それほど、好きでもないくせに?」
え?
こんな幼女にそんな指摘をされるとは思わなかった。
「ど、どうしてそう思ったの?」
「わたしはお兄ちゃんにハグしてもらったことがあるけど、あなたはあるの?」
いや、それ、絶対幼い子に対する対応だから。
「わたしたちはスキンシップもできる仲なの。ほっぺにチュウもしたことあるんだから」
う……。
そう言われると、差を感じる。
いや、別にチュウしたいわけじゃないよ。
「あなた、お兄ちゃんに触れもしないじゃない」
楓ちゃんは畳みかけてくる。
確かに大樹は、スキンシップがないと家族らしくないと言っていたっけ……。
そう言われてもなぁ。
皆月さんはバシバシ叩いてくる。
楓ちゃんは子どもなことを利用して、あざとく抱きつく。
あたしは……。
「わたし、お兄ちゃんに告白されたこともあるんだから」
え? ウソでしょ?
「3回も告白されてるんだから」
いやいや、ありえないって。
子どもに対する冗談的なものだよね?
そのことが気になって、頭の中がグルグルしていた。
楓ちゃんが、その後も、いろいろと口撃してきたけど、ほとんど聞こえていなかった。
楓ちゃんが離れた隙に、大樹を問い詰めに行った。
「大樹、楓ちゃんに告白したってホント?」
「え? あ、あぁ。あの話か……」
なんだと。ホントなのか……。
頭の中がゴチャゴチャしてきた。
「見せてもらったこと、あるよ」
あるのかよ。
ん? 見せてもらった?
「トモコレの話だろ」
そっちかよ。
楓ちゃん、現実とゲームの境目があいまいじゃない?
思い込みの深さが、ちょっと怖い。
……いや、待って。
あたし、今なんでこんなに焦ってたんだ?
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