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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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大樹の部屋に潜入するぞ

 突然、お部屋訪問~!!

 教えてもらう口実で訪ねたら、部屋に入れてくれるだろう。

 こうして大樹の部屋に侵入し、こいつの部屋の中に写真とか飾られてないか調べてやろうという作戦だ。

 我ながらカンペキだなと思っている。


 大樹の性格的に、断れまい。


「大樹~、ちょっと勉強教えて欲しいんだけど」

 コンコン……。

 あたしは大樹の部屋をノックした。


「あ。ちょ、ちょっと待ってくれ」


 バタバタ音がする。

 ガチャ。


「え~と、なんだっけ?」


 あたしが顔を右に動かせば、同じように顔を動かす。

 スキをついて顔を素早く左に動かしても……ついてくる。

 動きがわからないくらいゆっくり右に動かしても......。


 鏡のようにタイムラグを感じない素早い動きだ。


 頑なに部屋の中を見せてくれない。


 クソッ……。全然、奥が見えない。


「ちょっと勉強教えて欲しいところがあるんだけど」


 もちろん、ウソだ。

 いや、口実だ。


 これでも、あたし、学力はそれなりのつもりだ。


「あぁ。わかった」

 そう言って部屋を出る。


 え?


「それじゃ、葉月の部屋行こうか」

「え? あ、うん」

 大樹の部屋を見に行くはずが、自分の部屋を見せることになるとは......。


 大樹はあたしの部屋に入ると、見まわした。


「あ、あんまり、ジロジロ見ないでよ?」

 恥ずかしいじゃん。

「あぁ、すまん。女子の部屋に入るのは初めてだったのでつい……」

 あたしが、初めてだとうぅ~?

「ふぅ~ん……」

 まぁ、悪い気はしないけど。


「で、何を教えて欲しいんだ?」

「あ、うん。ここなんだけど」


 教科書を指さしたのは、微分積分のページだ。

 高校数学では比較的むずかしそうなとこだし、知らないフリしてもいいよね。


「微分・積分かぁ。俺も苦手なんだよな」


 マジかぁ。

 それじゃ、教えてもらうことは無理か。


「一緒に考えていこうか」


 え? そうくるんだ?


 こうして、あたしが理解している問題なのに……。

 苦手としている大樹に教えてもらうということになった。


 なかなかにむずかしいミッションだな。


「これは、こんな感じなのかな?」


 わからないフリしつつ、正解に誘導しなくては。


「なるほど。それじゃ、こうすればいいのかな?」

「あ、そうだね。大樹、頭いい」

「葉月のおかげで微分・積分苦手じゃなくなったかも」


 褒められるのは嫌いじゃないけど。

 あたしは何をしたかったんだっけ?


 こうして、1日目の作戦は失敗に終わった。

 しかし、これであきらめるつもりはないぞ。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

翌朝――。


 その日、長谷川家は皆、寝坊していた。

 お母さんも、忙しく動き回っていた。


 大蔵さんも、大樹も、まだ寝ている。


 お母さんは、あたしにカギを投げてよこした。


「葉月。大樹くん、起こしてきて」

「うん、わかった」


 ふふふ……。

 あたしは、これで大樹の部屋に入る大義名分を得た。


 ガチャ……。

 カギを開けて大樹の部屋に入る。

 初めて入る男子の部屋だ。


 大樹は椅子に座ったまま、机の上で突っ伏していた。


 机の上には数学の教科書と、ノート。

 開かれたページは微分・積分の次の範囲だ。


 勉強しながら寝ちゃったのかな。

 次は教えてやるぞというつもりかな?


 机の上には、写真とかあるのかな?

 あった。……あたしの写真じゃん。

 この前、白玉で撮ったヤツだ。


 そして、プレゼントで買ったはずのガラスの馬の置物。

 え?

 お前宛のプレゼントだったんか~い。


 ……と、いかんいかん。

 起こさないと。


「大樹、起きて……」

 まずは揺する。

 全く起きない。


「大樹……」

 大きく揺する。

 全く起きない。


「大樹ったら……」

 さらに大きく揺する。

 あ……。揺すりすぎた。椅子から落ちる。

 体で支える。


「ちょ……。重い。重い……」


「何、やってんの。あんたたち」

 遅すぎるので、お母さんが様子を見に来た。

 あたしの上に大樹がのっかった感じになってる。


「あ、お母さん。助けて。全然、起きない」

 お母さんは大樹を起こす……

 あたしは、大樹の下から抜け出し、その後はお母さんに任せることにした。


「大樹。起きなさい。遅刻するわよ」

 お母さんの声で、大樹は一発で起きた。

 すごいな。


「ん……。あれ? 今日、祝日じゃなかったっけ?」

「え? あれ?」

 祝日だった。

 あたしもお母さんも、言われるまで気づいていなかった。

 なんてこった。


 でも、まぁ。

 大樹の部屋が見れたし、良いとしよう。

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