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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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お兄ちゃん、何しに来たの?

 ジュエリーショップに入ると、店員さんは「おまえ、高校生だろ」と言わんばかりの視線を送ってきた。

 うん、場違いなのはわかってるよ。


 あたしは店員さんに伝えた。

「女性向けのフリーサイズの指輪を見たいんですが、予算3万円未満で」


 店員さんがいくつか用意している間、あたしはお兄ちゃんに聞いた。

「相手の好みは?」

「知らない」

 知らないのかよ?


「いや、かわいいのが好きとか。キレイなのが好きとか」

「う~ん」

 一度考えてから、あたしを見る。

「う~ん」

 もう一度考えてから、あたしを見る。

 何、その意味深な目線は?

 あたし宛のプレゼントなの? そうなの?

「よくわかんない」

 考えた末の結論が、それかぁ~。


 店員さんが、いくつか見繕ってくれた。

 派手すぎず、地味すぎない絶妙なチョイスだ。

 価格も3万円未満と言ったのに税抜き3万円前後で揃えてくる。

 ギリギリまで絞り取ろうという魂胆がミエミエだ。


「試着なさいますか?」

「そうだな。葉月、つけて見て」

 えぇぇ、あたしはマネキンですか?


「こちらなんかが、一番お似合いだと思いますが……」

 あえて、一番高いヤツを推してくる。

 当然、税込み3万円以上だ。


 まぁ、たしかにカワイイ。

 割と好みだが。

 あたしは指輪をはめた手を見せる。

「ど、どう?」

「う~ん。ちょっと違うかなぁ」

 何が違うの? あたし、これ割と好みだよ。

 ってゆうか女性の好みがわからなくて、あたしを頼ったんじゃなかったの?


 あ!

 何も考えずに、左手の薬指にはめてた。

 いや、そういう意味じゃないからね。


 こうして、全種類試着したが、お兄ちゃんはどれも断った。


 そこで店員さんは、ターゲットを変えてきた。

「こんなものはいかがでしょうか?」

 指にはめるG-SHOCKってヤツだ。

 金色に輝くヤツを持ってきた。


 あたしは、値段の方を見る。約6万円。

 お兄ちゃんは、時計の方しか見ていない。

 明らかに目の色が変わっている。

 おぉい、帰ってこい。

「うわぁ。こんなのあるんですね」

 興味津々なのが駄々洩れだ。

 あえて言おう。カモであると。


「でもベルト部分は調整できないのかぁ」

「スペーサーを嵌めて調整可能ですよ」

 店員さんは、もうイケイケの姿勢だ。


「腕時計みたいなベルトのヤツがあればいいんだけどなぁ」

 店員さんは、この機を逃さず、隠し持っていたものを差し出した。

「いいですね、これ。ベルトも本物の腕時計そっくりだ」

 価格は1万5千円弱。

 お兄ちゃんは、即決した。


 支払いの時、店員さんはお兄ちゃんの財布の中を見逃さなかった。

 その後、店員さんは様々なものを持ってきて、あたしに試着させた。

 ネックレスとかイヤリングとか……いろいろだ。

 もう、着せ替え人形の気分だ。


 結局、アクセサリーは、いずれも購入に至らなかった。

 こうして、指時計だけを買って、ジュエリーショップを後にした。

 お兄ちゃん、何しに来たの?


 あたしが少し疲れているのを察したのか、

「そこで、何か甘いものでも食べていこう。おごるよ」

 と喫茶店に誘った。

 お金の心配はないと知っている。

 せっかくなので、ケーキを3つくらい頼んだ。


 お兄ちゃんは、ホットケーキを注文した。

「これがうまいんだよなぁ~」

 お兄ちゃんはそう言いながら、ホットケーキを食べている。

 う~ん、あたしの作ったホットケーキと比べられている気がして解せぬ。


 って、あれ?

 映画館に行くのに、割り勘って言ってたのは、なんで?

「お兄ちゃん、今日は、なんでこんなに余裕があるの?」

「あぁ、お金を押し付けられたんだよ」

「誰に?」

「皆月に……」

 なんでも、先日のお礼だとか……。

 まぁ、1000万円の人だもんね。


 甘いものを食べて、気力は復活した。

 しかし、プレゼント選びは、まだ続く。

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