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とてもとても……うすい壁:「本音」から始まるラブコメディ:毎日AM6時更新  作者: 秋月心文


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頼っちゃうぞ

「意中の女子を振り向かせるにはどうしたらいいと思う?」


「女子? ネコじゃなくて?」


 俺は、相談する相手を間違えたと後悔した。


 こいつは小原洋治。

 脳の80%がネコに汚染されていると自称している男だ。


 こんなヤツだが、恋愛相談をするなら、俺はこいつしか思いつかなかった。


 洋治は少し考えた末、妙に自信ありげな顔をした。


「いいか大樹。恋愛で一番ダメなことはなんだと思う?」


 言われるまでもない。


「嫌われることだろ」


「チッチッチッ。違うんだな。一番ダメなのは無関心だ」


「無関心? 嫌われることよりも?」


 理解できん。


「そうだ。無関心ということは、記憶の片隅にも残らない」


「でも、嫌われるよりマシだろ」


「嫌われるということは記憶に強く残る」


「まぁ、そうだな」


 よくわからないが、まずは記憶に爪痕を残せと?


「記憶に強く残った存在は、どうしても気になってしまう」


「うん」


「そうしているうちに相手のことをより知っていく。

 『こいつ、思っていたより嫌なヤツじゃないかも……』とな」


 うん? ちょっと待て!


「結局、いっぺん嫌われてみろと?」


「そうは言っていない。記憶に残ることをしろと言うことだ」


 そう言われてもなぁ。


「たとえば?」


「相手に何か頼ってみろ。面倒なものほどいい」


「は?」


「うざがられない?」


「そうなればそうなったで、記憶に残ることに成功している」


 なるほど……。


「『あたしが苦労かけた人』にランクアップできるぞ」


 女子っぽい口マネをして、そんなことを言う。

 あまりの奇行にキョトンとしていると、洋治は続けた。


「要は、他の男より関心を持たれるようになるってことだ」


 ふむふむ……


「どういうのを頼ったらいいの?」


「相手が得意なこと。もしくは、大樹が苦手なことだな。

 そうでないと……」


「そうでないと?」


「頼んでも断られる」


「そりゃそうか……」


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


「ねぇ、陽菜(ヒナ)」


「どうした葉月?」


「意中の男子を振り向かせたいんだけど?」


「男子? イヌじゃなくて?」


 あたしは、相談する相手を間違えたと後悔した。


 陽菜は脳の半分がイヌに汚染されていると自称している女。

 それでも、あたしが一番話しやすい親友だ。


「もちろん、人間の男子だよ」


 すると陽菜は、あたしが思ってもみなかった答えを返してきた。


「相手に何か頼ってみたら。できるだけ面倒なものを」


「は?」


「面倒ごとを押しつけろと?」


「うん。面倒なことほど相手の記憶に残るからね」


「ふぅん……」


 とはいえ……


「どういうのを頼ったらいいと思う?」


「相手が得意なことか、葉月が苦手なことでないと、ふつうに断られるでしょ」


「なるほど……」


 相談しておいてなんだが。

 陽菜がイヌ以外のことでまともなことを言うとは思わなかった。


 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・


 2人は知らなかった。

 自分たちが同じ恋愛テクニックを教わっていたことを。


 しかも、それを教えた2人は兄弟だった。

 その恋愛テクニックは兄弟の両親が実際に使ったものだった。

 ただし、まさか同じ日に同じ相談を持ちかけているとは、2人とも知る由もない。


 かくして、2人は相手に頼るネタを探しはじめる。

 2人の「頼っちゃうぞ」作戦が開始される。

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