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異世界のオークな初陣(後編)

「退くな! ここが踏ん張りどころだぞ!」


 ロンバルド侯爵が声を張り上げる。今、彼は押し寄せるナバック王国軍の猛攻をどうにか耐えしのいでいた。

 だが、耐えしのいで、それからどうする?

 自問自答するが答えは出ない。

 偶発的な衝突から生じたノゼ平原の戦いは、今や味方のディアン王国軍が圧倒的に不利な状況に陥っていた。

 ロンバルド侯爵の軍勢はおよそ千五百。合計一万を超えるディアン王国軍の中でも最大規模の兵力であり、ディアン王国軍右翼の要として布陣している。

 ディアン王国軍の左翼は、オルフェン伯爵軍の敗北をきっかけに崩壊しつつあり、そこから一方的に押しまくられるような状況が続いている。このままいけば左翼に続き、中央部の軍勢が崩壊するのも時間の問題ではないだろうか。

 そんな中、右翼はまだ持ちこたえていたが、それはロンバルド侯爵の奮闘によるところが大きい。彼は自分の軍勢が右翼の要であることを十分承知しており、自分たちが敗れれば右翼全体が崩壊することもよくわかっていたから、こうして声を上げ、時には自ら前に出て槍を振るい、必死の奮戦を続けていたのだ。

 だが、それもそろそろ限界かとロンバルド侯爵は思った。

 いかに自分たちが頑張っても、他の部分から負けてしまえばどうしようもない。

 ロンバルド侯爵はディアン王国の大貴族であり、王国に対する忠誠心や、他の弱小貴族を助けなければならないという責任感も持ち合わせていたが、それでも第一に考えるのは自分の家のことだ。

 勝てる見込みがあるなら最後まで戦うことも考えるが、この戦いはどう考えても負け戦だ。ここで自分が最後まで踏みとどまり、他の貴族たちが逃げるための時間稼ぎをする気まではない。

 まだ戦力を保持しているうちに、他の貴族を見捨てて自分が先に逃げるべきだと彼は決断した。


「聞け! これより――」


 我らは戦場を離脱する、と続くはずだった言葉を止めたのは、こちらに向かって突撃してくる軍勢に気づいたからだ。

 両軍の位置関係は、西にディアン王国軍、東にナバック王国軍が布陣して戦っている。今こちらに向かってくる軍勢は南から、つまり戦う両軍の側面を突く形で突っ込んでくる。数は数百といったところか。

 それにしても、あの旗はなんだとロンバルド侯爵は思った。

 軍勢の先頭を走る男が白地に赤い丸という大きな旗を掲げているのだが、そんな旗は見たこともない。さらに軍勢の姿も普通ではない。全員の鎧を赤一色に染めているのだ。こんな特徴的な軍勢は見たことも聞いたこともない。

 ならば見知らぬ敵の援軍かと疑うところだが、ロンバルド侯爵はあれが味方だと確信していた。軍勢の先頭を走る男に見覚えがあったからだ。

 その男は明らかに大きかった。後ろを走る兵士たちに比べて頭一つ高いどころか、倍ぐらいあるように見える。知らない者なら目の錯覚かと思うかもしれないが、今のディアン王国にはそんな有名人が一人いる。黒い鎧をまとった巨大な戦士が。


「味方の援軍だ! もう一踏ん張りだ!」


 退却を取りやめ、戦うことを選択し直したロンバルド侯爵が叫ぶ。

 軍勢の横を突くのは効果的だが、騎兵ではなく歩兵、それも数が数百では少なすぎて戦局を好転させることは難しいだろう。しかしあの男がいるなら話は変わってくるもしれない。


「黒い戦士リョーチだ! セレーネ殿下と、黒い戦士が来てくれたぞ!」


 ロンバルド侯爵はここぞとばかりに大声を張り上げた。

 今やリョーチは有名人で、兵士たちにもその名は浸透している。噂に尾ひれがついて化け物のように思われていたり――実際に化け物だが――逆にその強さを疑う者もいたが、味方としてやって来るなら、これほど力強い存在はない。

 しかも巨漢のリョーチは遠くからでもよく目立つ。

 遠くから走ってくるリョーチの姿を見た兵士たちの士気が上がり、崩れかけていた陣形が少し立ち直る。

 これでもうしばらくは持つとロンバルド侯爵は思った。だが、もしリョーチが負けるようなことがあれば、今度こそ軍勢の士気は崩壊し、二度と立て直せないだろう。

 ロンバルド侯爵はリョーチの活躍に期待しながらも、逃げ出すときのこともしっかりと考えていた。


 旗を掲げ、軍勢の先頭を走るリョーチは、頭の中でもう一度セレーネの命令を繰り返した。


「とにかく前にすすめ。突進が止まれば包囲されて終わりだから、前へ前へと進んで突き崩すんだ」


 止まらず前に進む、それを繰り返しながら、リョーチは軍勢の先頭に立って敵軍に突撃する。

 そんな彼の前に最初に立ちはだかったのは、ナバック王国軍のハガナ子爵の軍勢だった。もっともハガナ子爵に立ちはだかるつもりはなく、ナバック王国軍の最左翼に位置していたため、たまたま最初にぶつかることになっただけなのだが、これはハガナ子爵にとって大きな不幸となった。


「南から敵の別働隊らしき部隊が、こちらに向かって突撃してきます!」


「なにっ!?」


 部下の報告を聞いたハガナ子爵は、慌ててそちらを見た。

 今、ハガナ子爵の軍勢は西へ向いて進み、ディアン王国軍へ攻撃を仕掛けようとしていたところだった。南からということは、その横っ腹を突かれることになり、下手をすれば大損害を受けてしまう。

 だがハガナ子爵はこちらに向かってくる敵部隊を見て、ほっと一安心した。二三百ほどの小勢だったからだ。ハガナ子爵の軍勢はおよそ五百。敵を侮れる程の差はないが、ひとまず受け止めるぐらいはできるだろう。そうすれば、すぐに味方が助力に来てくれるはずだ。

 これが騎兵ならば数が少なくても突破されてしまう恐れがあるが、見たところ相手は槍を構えた歩兵ばかり。鎧を赤一色に染めた派手な軍勢なのが少し気になったが、戦は派手さを競うものでない。


「南に向けて構えろ!」


 ハガナ子爵の命令に会わせ、配下の軍勢が足を止め、慌ただしく南に向きを変える。

 この時代、専門の兵士の数はまだまだ少なく、軍勢の主力は徴兵した領民か、金で雇った傭兵である。そのため全体での訓練も満足には行えず、軍勢の向きを変えるだけでも一苦労である。幸いまだ敵と交戦し始めていなかったため、どうにかこうにかハガナ子爵軍は南に向きを変え、敵を迎え撃つ体勢を整えた。

 だがここでハガナ子爵はおかしいことに気づいた。突撃してくる敵の先頭は黒い鎧を着た戦士なのだが、その姿がやけに大きく見えたのだ。目の錯覚かと思っているうちに、配下の兵士とその黒い戦士が衝突した。


「うおりゃーッ!」


 声を張り上げたリョーチが、鉄の棒を横になぎ払う。敵の兵士たちが槍を突き出してくるが、そんなものはお構いなしだ。

 旗をくくりつけたままの鉄の棒が次々と敵をなぎ倒し、はじき飛ばしていく。悲鳴を上げた敵兵士の中には、数メートルも飛ばされた者がいた。

 敵の兵士たちの槍も次々にリョーチの体に当たるが、それらは全て黒い鎧がはじき返した。人間が着れば一歩も動けないような重く分厚い鎧は、簡単には貫けない。

 一歩前に出たリョーチが、再び鉄の棒をふるうと、これまた敵の兵士が一気に十人以上なぎ倒される。

 なぎ払う、前に出る、なぎ払う、前に出る――それを数回繰り返したところで、敵の軍勢は一気に崩壊した。


「ば、化け物だ!」


「逃げろ!」


 最初の一人が槍を捨てて逃げ出すと、後はあっという間だった。リョーチも驚いてぽかんとしてしまったぐらいだ。

 実戦経験のない兵士が多いのはディアン王国だけの問題ではなく、敵のナバック王国も同じだった。一度形勢が不利になれば、そこから一気に崩れてしまうのだ。もっともいきなりリョーチと戦うことになれば、ベテランの兵士であっても逃げ出しただろうが。

 リョーチは逃げ出す兵士たちは、そのまま何もせず見逃した。これ以上攻撃しても、戦闘ではなく虐殺だと思ったからだ。その代わり、軍勢の後ろの方で馬に乗っている男を見つけた。あれが敵の指揮官に違いないと思ったリョーチは、そちらへ向かって駆けだした。


 ハガナ子爵は自分の方にリョーチが向かってくるのを見て、自分も馬をリョーチに向かって走らせた。近習の者たちは慌てて止めたが、今の彼にはそんな声も耳に入らない。

 もしハガナ子爵が冷静だったなら、一目散に逃げ出していたはずだ。しかしいきなり自分の軍勢が崩壊するのを見たハガナ子爵は完全に冷静さを失い、一種の錯乱状態でリョーチに戦いを挑んだのだ。


「この化け物が」


 すれ違いざま、ハガナ子爵は渾身の力を込めて槍を突き出した。槍はリョーチの左肩あたりに当たったが、音を立ててはじき返された。

 対するリョーチも鉄の棒を振るい、それは馬上のハガナ子爵の胴体に当たった。ハガナ子爵も鎧を身につけていたが、リョーチの一撃はそれを大きくへこませ、ハガナ子爵の体を馬上からたたき落とした。

 地面に落ちたハガナ子爵は口から大量の血を流していたが、まだ生きていた。どう見ても助かりそうにない状態だったが。


「とどめを刺してやれ」


 後ろからやってきたセレーネが命じると、配下の兵士がハガナ子爵の体に槍を突き立てとどめを刺す。これは苦しませないための慈悲でもあった。


「さすがだなリョーチ。まだまだいけるか?」


「はい。大丈夫です」


「よし。ならば続けて行くぞ」


「はい!」


 力強く返事をするリョーチ。

 この時、もし部隊の様子をよく見ている者がいれば、兵士たちの態度が二分されていることに気づいただろう。

 セレーネは三百の軍勢を率いていたが、実はその部隊は大きく二つに分けることができた。

 鎧と兜を装備しているためわかりにくいが、兵士たちの半分は獣人だった。彼らはセレーネとリョーチによって奴隷から解放され、その後で改めて兵士として雇われた者たちだ。

 彼らにとってリョーチは恩人であり、自分たちを率いる偉大な戦士であった。これまでリョーチの戦いを目にしたことがある者がほとんどで、その目にはリョーチへの信頼があり、強い忠誠心が見て取れた。

 一方、残りの半数はセレーネが金で雇った人間の傭兵たちだ。初めてリョーチの戦いを目にする者も多く、そんな彼らの目に浮かぶのは信頼よりも恐怖だった。まさに化け物を見るような目つきで彼らはリョーチを見ていた。

 味方だったからよかったが、もし敵になっていれば――そんな風に思った者も多かったはずである。


「リョーチ、次はあそこだ!」


 セレーネが指さした方へとリョーチは走り出す。

 そこでは、敵味方の軍勢が戦いを繰り広げていた。明らかに優勢なのは敵側であり、味方の軍勢は押されている。

 リョーチはその敵部隊へ横から突っ込んだ。

 それはナバック王国のレイカー伯爵の軍勢だった。数はおよそ一千。

 レイカー伯爵は隣にいたハガナ子爵の部隊が一瞬で崩壊するのを見て仰天し、それをやった敵部隊が今度は自分たちの方へ向かってくるのを見て、慌てて迎撃を命じた。

 とはいえレイカー伯爵の部隊はすでに前の敵と交戦中である。それを無視するわけにもいかず、対応はどうしても遅れた。それでもどうにか百人ほどの弓隊がリョーチの方を向き、矢をつがえて弓を引き絞った。


「放てえ!」


 指揮官の号令に従い、一斉に放たれた百本の矢が放物線を描いてリョーチに殺到する。

 だがリョーチは降り注ぐ矢を気にせず、旗を掲げたまま走り続けた。鎧に何本も矢が当たるが、そのほとんどがはじき返される。一本だけ左腕の関節部に当たった矢が、中の鎖帷子も貫いて肌に突き刺さった。

 だが痛みはほとんどない。分厚いオークの肌が矢を受け止め、かすり傷にしかならなかったのだ。

 仰天したのはレイカー伯爵軍である。確実に矢が命中しているのに、それをものともせずに突っ込んでくるのだ。


「あの化け物を止めろ!」


 レイカー伯爵は悲鳴のように絶叫し、続いて二射目、三射目が放たれたれるが、やはりリョーチは止まらない。そしてここまで来るとリョーチが近づきすぎて矢を射られなくなった。いくら何でも味方の上に矢を降らせるわけにはいかない。


「槍隊で包み込め! 奴を止めろ!」


 弓隊に代わり、今度は槍を構えた兵士たちが前に出てリョーチに突きかかるが、結果は先ほどと全く同じである。

 兵士たちの槍はリョーチに通用せず、逆にリョーチが鉄の棒を振るうたび、数人から十数人の兵士がなぎ倒されていく。

 敵の兵士たちを次々と倒していくリョーチは、その軍勢の後ろに控える騎士に気づいた。おそらくあれが敵の大将だと思ったリョーチは、あることを思いつき、持っていた鉄の棒を地面に突き立てた。

 武器から手を離したのだから、敵にとってはまたとないチャンスだ。だがここまでさんざんリョーチの強さを見せつけられていた敵兵たちは、逆に警戒して近づけなくなってしまう。

 敵が自分に近寄ってこないことを確認したリョーチは、腰に結びつけてあった袋に手を入れた。取り出したのは人の頭ぐらいある大きな石だった。それはちょうどリョーチの大きな手にすっぽりと収まる大きさだった。

 ここへ来る途中、セレーネから武器として使えそうだなと言われ、拾って持ってきていたのだ。

 リョーチはその石を右手で握ると大きく上に持ち上げた。それはまさに野球の投球モーションだった。リョーチは大きく振りかぶって石を投げた。目標は敵の大将だ。

 まだかなりの距離があるし、リョーチとしてはびびらせてやろう、ぐらいの気持ちで投げたのだが、それがよかったのだろうか。石は見事に馬上のレイカー伯爵に命中した。

 衝撃でレイカー伯爵は馬から落馬し、地面に体を打ち付け気を失った。近習の兵士が慌てて助け起こすと、配下の騎士の後ろに乗せて逃げ出した。

 向こうにしてみればまぐれ当たりともわからず、再び狙われる前にとにかく逃げろというわけだ。

 そしてこれにつられるようにレイカー伯爵の兵士たちも一気に逃げ出した。


「伯爵様がやられた!?」


「もうダメだ!」


 リョーチの圧倒的な力に恐怖していたところに指揮官が逃げ出したのだから耐えられるはずがない。口々に悲鳴を上げて兵士たちが逃走していく。

 これを見て歓声を上げたのがディアン王国の兵士たちだ。


「見ろ、敵が逃げていくぞ!」


「リョーチだ! 黒い戦士がやってくれたぞ」


 黒い戦士リョーチが来た! セレーネ姫殿下が来た! という叫びは瞬く間にディアン王国軍全軍に伝わり、押されていた兵士たちがたちまち力を取り戻す。

 逆にナバック王国軍には大きな動揺が走った。


「敵に化け物の援軍が来たみたいだぞ!?」


「味方が次々に敗走しているらしいぞ!?」


 さらにこの機を逃さず、セレーネはリョーチにさらなる攻撃を命じ、ハガナ子爵、レイカー伯爵の軍勢に続いて新たに二つの敵部隊を敗走させる。

 ここまでやった時点で戦局は逆転しており、明らかにディアン王国が優勢となっていた。

 それは戦場の真ん中にいたリョーチにも感じられた。あちらこちらで味方が反撃に転じ、敗走する敵が出始めていたのだ。


「むっ?」


 そんな中、リョーチは泰然と構えたまま動かない敵の部隊を見つけた。よし、次はあいつらだと思ったリョーチは、そこに向かって駆けだした。


「あの旗は……」


 リョーチの後ろに続いていたセレーネは、彼が向かう敵軍が掲げる旗を見て表情を険しくした。

 この時代の旗は複雑化していて、遠くから見ただけでははっきりと判別はできない。しかしあの旗が、もし自分の思っている旗なら――

 セレーネは急いでリョーチの後を追った。


「敵がこちらに向かって参ります。黒い大男です」


「あれが近頃ディアンを騒がしている黒い戦士か。なるほど、本当に大きいな」


 レガリー伯爵は自軍に向かってくるリョーチを見て言った。

 リョーチが次の攻撃目標に選んだ部隊、それを率いるのがレガリー伯爵だった。配下の軍勢は一千ほど。だがこの軍勢は味方が攻撃に出たときも軽々しく動いたりせず、今まで戦況をじっと静観していた。今や敗走しつつある他のナバック王国軍と違って浮き足だってもいない。

 当主のガルア・レガリー伯爵はこの時ちょうど六十才。この世界では隠居していて当然の老齢だったが、彼はまだ矍鑠としていた。若い頃から戦場を駆け巡り、多くの戦功を上げてきた古強者である。彼は配下の兵士たちからも深く信頼されており、伯爵様のためなら死んでもいいと考えている兵士も一人や二人ではない。そんな軍勢だからこそ、敗走しつつある味方を見ても落ち着いていたのだ。

 レガリー伯爵は情報収集にも熱心で、隣国ディアン王国を騒がすリョーチについても知っていた。ただ噂半分だと思っていたので、それほど危惧していなかったのだが、戦場で実際にリョーチを見て考えを改めた。

 あれは並の兵士ではない。たった一人で戦場の流れを変えることができる、本物の豪傑だ。


「どうされますか?」


 部下から聞かれたレガリー伯爵は、力強い声で命令する。


「第一陣の兵士たちは盾を構えよ。可能な限り密集し、複数で敵の攻撃を受け止め、できれば受け流せ。槍隊は奴の正面に立たず、左右や背後から攻撃せよ。敵は強力な戦士だが、たった一人ならやりようはある。相手を人間と思うな。オークのような化け物が、堅い鎧を身につけ襲ってくると思って対処せよ!」


 レガリー伯爵は今日初めてリョーチの戦い方を見て、その対抗方法を考え出していた。さすがの彼もリョーチの中身がオークだとは思っていなかったが、ある意味、中身をオークだと見抜いて対処したのだ。

 兵士たちが命令に従って動く。盾を構えた兵士たちが前に出て、その後ろに槍隊が控えるという陣形を組んだところに、リョーチが一人で突っ込んできた。


「うりゃあッ!」


 これまで通り敵に向かって鉄の棒を振るったところで、リョーチはこれまでと違うことに気づいた。

 手応えがない!?

 ここまで、リョーチが鉄の棒を一振りすれば数人以上の兵士を吹き飛ばしていた。ところが今回は吹き飛ばすどころか、倒れる兵士もいないのだ。二回三回と攻撃しても同じである。

 オークの圧倒的な力は人間を軽く凌駕する。とはいえ複数の人間が力を合わせて対抗すれば話が違ってくる。一人なら受け止められない一撃も、十人が集まって盾を構えれば受け止めることもできる。しかも兵士たちは大型の盾を斜めに倒して構えることで衝撃を受け流していた。これではいかにオークの怪力でも、力任せの一撃で粉砕することは難しい。

 これこそ身体能力に劣る人間が、モンスターと戦うために編み出した集団戦法だった。一人で正面から戦っても勝てないなら、知恵を使い数をそろえて立ち向かえばいいのだ。

 兵士たちは盾を構えて防御に徹するだけでなく、果敢な反撃も行う。正面からの攻撃は行わず、リョーチの左右や背後に回り込んだ槍兵が、盾兵の間から飛び出して来ては攻撃してくるのだ。そしてリョーチがそちらに向くと盾兵の背後へと下がり、また別の方向から槍兵が出てきては攻撃する、というのを繰り返す。

 そんな散発的な攻撃ではリョーチになかなかダメージを与えることができないが、リョーチも敵を倒すことができない。飛び出しすぎた数人の兵士を打ち倒したが、それぐらいでは相手もひるまない。

 両者の戦いは我慢比べの様相を呈してきたが、先に耐えきれなくなってきたのはリョーチの方だった。

 鉄の棒が重いとリョーチは思った。これまで軽々と振り回してきた鉄の棒がやけに重く感じられる。身にまとう鎧もずしりと体にのしかかってくるようだ。

 考えてみればそれも当然で、リョーチは戦闘開始からここまで、重い鎧を装備して走り回り、鉄の棒を振り回して戦い続けてきたのだ。いかにオークが桁外れの体力を持つとはいえ、それにも限界がある。加えてこれまでは一方的に勝っていたから調子に乗って疲れを感じていなかったのだが、苦戦して勢いが止まったことでたまっていた疲れが一気に出てきたのだ。

 このままじゃまずいかもしれないとリョーチは思った。それはこの世界でオークとなって以来、初めて感じた敗北の予感だった。

 もしこのままリョーチが一人で戦い続けていたなら、本当にそうなっていたかもしれない。だがリョーチは一人ではなかった。彼にも仲間がいたのだ。


「リョーチを救え!」


 セレーネの号令に従い、赤い鎧の兵士たちがリョーチの元へ殺到する。これまではリョーチの後ろに控えていたセレーネ率いる三百の軍勢が、苦戦するリョーチを見て戦いに加わったのだ。

 数と練度はレガリー伯爵の兵士が上回っていたが、セレーネの兵士たちの半数を占める獣人は、基本的な身体能力が普通の人間よりも高い。さらに彼らはリョーチを深く敬愛していたため、死に物狂いの勢いで襲いかかった。


「リョーチ様をお助けしろ!」


「奴らを通すな!」


 レガリー伯爵も軍勢の一部を前に出して迎え撃ち、両軍は激しくぶつかった。だが勢いは明らかにセレーネ側にあった。


「死兵を相手にしても損害が増えるだけか。一度下がり陣形を組み直せ」


 命を捨ててかかってくる相手と正面から戦えば損害が大きくなる。あと少しであの黒い戦士を倒せるなら話は別だが、疲れてきたとはいえ相手はまだ戦えそうだ。このまま戦っても倒す前に囲みを突破されるとレガリー伯爵は判断し、自ら兵士を下がらせたのだ。

 相手が下がったことでセレーネの兵士たちもリョーチのところへたどり着き、こちらもいったん後ろに下がって両軍勢は距離を置いた。


「余計なお世話だったか?」


 リョーチの側へやってきたセレーネが、茶化したように訊いた。


「そうですね、と言いたいところですが、正直助かりました」


 そう答えたリョーチは、大きく深呼吸して気合いを入れ直す。

 先程一人で戦っていたときは疲労で重かった体が、ずいぶんと軽くなった気がした。疲れが消えたわけではないが、こうして仲間に囲まれていると新たな力がわき上がってくる気がする。

 これまでリョーチにとって獣人たちは助けなければならない存在だった。彼が本当に助けたいのはかわいいケモミミ少女で、他の獣人はおまけのような扱いだったが、それでも助けるべき存在には入っていた。それが今回初めて助けられたことで、リョーチの中で意識の変化が起こっていた。

 一方的に助ける相手ではなく、ともに助け合う仲間に変わったとでも言えばいいのだろうか。

 自分には困った時に助けてくれるたくさんの仲間がいる――そう思うと力がわいてきたのだ。


「もう一度仕切り直しです。今度こそ奴らに勝ちます」


 勢い込んでリョーチは言ったが、


「いや、その必要はない」


 冷静にセレーネが言った。


「どうしてですか? 今度はさっきのようには――」


「これ以上戦う必要はないということだ。回りを見てみろ」


 言われて戦場を見回せば、すでに戦いの決着は付きつつあった。敵の軍勢は全面的な潰走状態になっており、味方の軍勢はその追撃態勢に移っている。

 リョーチがナバック王国軍の左翼を突き崩したことで、劣勢だったディアン王国軍が息を吹き返し、そこから反撃に転じたのだ。ナバック王国軍はそれを支えきれず、中央にいた貴族の軍勢も敗走し始め、ついに全面崩壊に至ったというわけだった。

 そんな中、唯一どっしりと構えたまま動かないのが、先程リョーチが戦っていたレガリー伯爵の軍勢だ。彼の軍勢は敗走する味方の盾となるかのように、どっしりと陣を構えたままだ。

 結果、追撃しようとするディアン王国軍がレガリー伯爵軍へと殺到し、激しい戦いが始まっていた。


「さすがはレガリー伯爵。見事な戦いだが数が違いすぎる。我々が行かなくても時間の問題だ」


 セレーネの言う通り、レガリー伯爵は配下の軍勢を叱咤して見事な防戦を繰り広げていたが、攻撃するディアン王国軍は数倍の数である。味方の救援もないまま戦い続けても、少しずつ数を減らされて敗北するのは目に見えていた。


「とはいえ、これで終わりというのもつまらないな。リョーチ、ついてこい」


 セレーネがレガリー伯爵の軍勢に向かって馬を進ませたので、リョーチは慌てて後を追い、その後に続いて軍勢も動き出す。


「やっぱり戦うんですか?」


「そうじゃない。戦いを終わらせるんだ」


 リョーチにはよくわからなかったが、また何か悪巧みを思いついたんだろうと思って、それ以上は訊かず黙ってセレーネの後に続いた。


「そこまでだ! 双方槍を収めよ。戦いをやめよ!」


 ディアン王国の貴族たちの軍勢と、レガリー伯爵軍が争うど真ん中に、セレーネは声を上げながら強引に割って入った。

 戦いはやめろと言われて簡単にやめられるものではなかったが、セレーネの赤一色の軍勢、なによりリョーチの姿はよく目立った。

 ディアン王国の兵士に、彼に突っかかっていくような命知らずはいなかったため、いやでも戦いをやめて後ろに下がらざるを得ない。防御に徹していたレガリー伯爵軍も前に出ようとはせず、両軍の戦いはすぐに収まった。

 間にセレーネたちを挟み、奇妙なにらみ合いが実現したのだ。


「先程からの見事な戦い、音に聞こえたレガリー伯爵とお見受けしたが!?」


 レガリー伯爵軍に向かってセレーネが叫ぶと、応じるように馬に乗った一人の騎士が前に出てきた。


「いかにも。私がガルア・レガリーだ!」


 老いを感じさせない矍鑠としたたたずまい。レガリー伯爵本人だった。


「お初にお目にかかります。我が名はセレーネ。ディアン王国の王女だ」


「ディアンに男に混じって剣をもてあそぶ小娘がいると聞いたことがある。なるほど、こうして戦場にまでやって来るとは、噂以上にとんでもない小娘のようだ」


 あざ笑うかのような口調に、ディアン王国の兵士たちがむっとした顔になる。彼らの中には同じような悪口を言っていた者もいるのだが、他国の人間に笑われると不思議と腹が立ってくるものだ。

 だが言われた当人のセレーネは、


「はっはっはっ! それは耳が痛い」


 と笑って受け流した。


「レガリー伯爵。そんな小娘から提案があるのだが、聞いていただけるか?」


「小娘の戯れ言などに耳を貸すつもりはないが、一応、聞くだけは聞いてやろう」


「では言おう。この戦いの決着はついた。貴殿らの負けだ」


「我が軍勢はまだ負けていない!」


「確かに貴殿の軍勢はいまだ健在だ。だが全体の勝敗が決まった今、貴殿だけが戦い続けても無駄というものだ。貴殿も、もう十分に意地も見せたし、これ以上無駄な戦いを続けなくともよかろう?」


「貴様、まさか私に降伏しろというのではないだろうな? 小娘ごときに膝を屈するとでも思ったか!?」


「降伏してもらえるならありがたいが、しろと言ってもするまい? だからこのまま兵をまとめて帰っていただきたい。もちろん我が軍は一切手を出さない」


 この提案にはレガリー伯爵も驚いたようだ。


「我々を見逃すというのか?」


「その通り。ここは貴殿ほどの男が死ぬ場所ではあるまい? 同じ戦場で死ぬにしても、もっとふさわしい戦いがある。そうではないか?」


「その言葉を信じろと?」


「ディアン王国王女セレーネの名において誓おう。もし邪魔する者がいれば、私とこのリョーチが相手をする」


 リョーチも敵を逃がすというセレーネの提案に驚いていたのだが、さも当然だとばかりに一歩前に踏み出した。兜のおかげで顔が見えなくてよかったと思いつつ。中身はオークだから、顔が見えたら表情以前の問題だが。


「勝手なことを言われては困りますぞ殿下!」


 味方の軍勢の中から、十人ほどの騎士が飛び出して来た。全員が馬にまたがり、セレーネのところへ走ってくる。セレーネに呼びかけたのは、その中で先頭を走る騎士だった。中年の男性で、きらびやかな鎧をまとっている。


「ジェリド侯爵か」


 自分に向かってくる騎士を見て、セレーネが言った。

 ジェリド侯爵は、今回のディアン王国軍の指揮を任された貴族だった。


「何か問題でも?」


「問題でも、ではありませんぞ殿下。いかに王女とはいえ、この場での殿下は私の部下です。勝手な約束をされては困る」


 正論だった。

 ジェリド侯爵は国王によって全軍の指揮官に任命された。参戦するセレーネもその指揮下に組み込まれているから、彼の命令に従わなければならない。敵と勝手に約束を交わすことなどもってのほかだ。

 だが正論だからと引き下がるセレーネではなかった。


「ジェリド侯爵のおっしゃることはもっともだ。だが私も王女の名において誓ったことを、今更撤回はできない。これは困ったな」


 わざとらしい困り顔を浮かべるセレーネ。

 リョーチはその顔を見て、なぜか因縁をつけるヤクザを連想してしまった。


「仕方あるまい。ジェリド侯爵が私の言い分を認められないというなら、ここで一戦交えるまで。私とこのリョーチが全力をもってお相手しよう」


 やっぱりそう来たかと思いつつ、リョーチはセレーネの横に歩み出て、威嚇するかのように鉄の棒を地面に突き立てた。

 このあたり、もはや阿吽の呼吸だ。

 どん、という振動が起こり、ジェリド侯爵やその配下の騎士たちがビクリと震える。彼らが震えたのは地面が揺れたせいだけではないだろう。


「待っていただきたい。私は何もそこまでは言っておらん」


 慌ててジェリド侯爵が言う。

 本来なら彼の方が上の立場なのに、それが逆転したかのようだ。

 もしここが例えば会議場だったとしたら、ジェリド侯爵はもっと強気な態度に出ていただろう。だがここは戦場の真ん中だった。

 周囲にいるのは殺気立った兵士たちで、空気には血のにおいが充満している。そんな中で発せられたセレーネの脅しは、恐るべきリアリティをもっていた。味方同士の戦いなど簡単に起こせるはずがないのに、それが簡単に始まってしまいそうな雰囲気があったのだ。

 そしてリョーチもいつでも飛び出せるように準備していた。

 このお姫様は本当にやりかねない、と思いながら。

 セレーネの言っていることは脅しだ。しかし彼女は脅しを脅しで終わらせず、実力行使に出ることを躊躇しない。それはこの一年のつきあいでよくわかっていた。


「では私の意見に賛成してくれるのだな?」


 ジェリド侯爵は答えず左右を見回した。どこかに自分の味方がいないか探すように。

 すると他の軍勢の中から、馬に乗った一人の貴族が飛び出してきた。


「お待ちいただきたい!」


「おお、ロンバルド侯爵!」


 ジェリド侯爵の顔がぱっと明るくなった。

 ジェリド侯爵はセレーネと対立している貴族派の貴族だった。そしてロンバルド侯爵も明確な立場をとっていないが、限りなく貴族派に近い中立派として知られていた。

 そのロンバルド侯爵が声を上げて出てきてくれたのだから、ジェリド侯爵は心強い味方が現れたと思っただろう。しかし、


「私もセレーネ殿下のお考えに賛成いたします!」


「ロンバルド侯爵!?」


 自分の味方だと思っていたロンバルド侯爵がセレーネに賛成したため、ジェリド侯爵は仰天した。

 セレーネも少し驚いたようだが、こちらはすぐに笑顔になってロンバルド侯爵にお礼を言う。


「ありがとうロンバルド侯爵。やはり貴殿も武人の心意気を持っているようだな」


「いえいえ、お礼を言われるようなことでは」


「ロンバルド侯爵、貴公は我らを裏切るつもりか!?」


 驚きから立ち直ったジェリド侯爵が、怒りもあらわにロンバルド侯爵に詰め寄る。


「裏切りとはおかしなことを言う。いったい、私が誰をどのように裏切ったというのか?」


「それは……」


 ジェリド侯爵にとっては明確な裏切り行為だが、それをここで大っぴらに言うことはできなかった。貴族派から国王派に寝返りセレーネに与するのか、などと当人の前で言えるわけがない。


「さてジェリド侯爵。そろそろ貴殿の結論を聞かせてもらおう。私の言うことに賛成か? それともあくまで反対して私と戦うか?」


 返答に窮したジェリド侯爵だったが、これ以上は抵抗できないとあきらめたのか、苦々しい顔で口を開く。


「……わかりました。賛成しましょう」


「一切文句はないということだな?」


「ありません!」


 セレーネが念を押すと、ジェリド侯爵はやけになったように答えた。


「はっはっはっはっ!」


 大声を出して快活に笑ったのは、一連のやりとりを横で見ていたレガリー伯爵だった。


「セレーネ王女。先ほどはあなたのことを小娘と言ったが、どうか許してほしい」


 レガリー伯爵はセレーネに頭を下げた。


「あなたもまた立派な武人のようだ」


「他でもないレガリー伯爵にそう言っていただけるとは、うれしいことだ」


「それでは我らはこれで失礼させてもらう。またどこかの戦場でお会いいたそう」


 レガリー伯爵はそう言うと自陣へと引き上げ、すぐに軍勢をまとめて退却していった。だまし討ちなどまるで警戒していない、堂々たる退却だった。


「よし、勝ちどきを上げろ!」


 セレーネが剣を持った右手を高々と上げると、リョーチや配下の兵士たちも同じように右手を突き上げ、


「オーッ!」


 と声を上げた。それに呼応し、他のディアン王国軍の兵士たちも勝ちどきを上げる。

 それはこの戦場の主役が誰であるかを明確に示すような光景だった。


 こうして後にノゼ平原の戦いと呼ばれることになる戦いは終結した。

 戦術的にはディアン王国軍の大勝といってよかったが、元は偶発的な衝突から始まった戦いである。戦略的に大きな意味があるわけではなく、この戦いに勝利したところで、両国の関係に大きな変化が生じるわけではない――この時、多くの人間がそう思っていた。

 だが後に多くの人間が言うことになる。

 あの戦いこそが、ディアン王国とナバック王国の動乱の始まりであり、大陸全土を巻き込む戦乱のきっかけだったのだ、と。

 当然ながらリョーチもそんなことは知らない。

 今の彼は、とりあえず勝ったし、帰ったらケモミミの女の子たちも喜んでくれるかなあ、などと思いながら勝ちどきを上げるだけだった。






 太陽の乙女と黒い戦士。

 縦三メートル、横五メートルという大きな絵画で、現在はアードル美術館が所蔵している。

 描かれているのはディアン王国のセレーネ王女と、その配下で黒い戦士と呼ばれたリョーチだ。

 作者は当時新進気鋭の画家として頭角を現しつつあったバルク・フォルナー。描かれたのは大神歴一〇五六年で、同じ年に起こったノゼ平原の戦いでの二人の活躍を宣伝するため、セレーネ王女からフォルナーに依頼したという。

 ノゼ平原の戦いは、最初ディアン王国が劣勢だった。そこへ遅れて到着したセレーネは、味方の危機を救うべくリョーチとともに先頭に立って敵に突撃、次々と敵を打ち破っていった。

 太陽の乙女と黒い戦士は、そのときの二人の様子を躍動感あふれる豪快かつ大胆なタッチで描いている。

 一説によるとフォルナーがこの絵を描く際に、多少絵心のあったリョーチが助言したそうなのだが、はっきりとしたことはわかっていない。ただこの作品を契機にフォルナーの絵柄が大きく変化したのは事実で、何らかの刺激を受けた可能性は高い。

 絵には赤い鎧をまとって白馬にまたがり、剣を振りかざして突撃するセレーネと、その横で太陽旗を掲げて一緒に突撃するリョーチの姿が描かれているのだが、実際には二人は先頭に立って突撃したわけではなかったとする説、あるいは二人ではなくリョーチだけが先頭に立って突撃したとする説もある。

 ただ二人が先頭にいたかどうかはともかく、二人がノゼ平原の戦いで大活躍したことは間違いない。

 セレーネはこの絵の完成後、盛大なお披露目パーティーを開き、絵を一般市民にも広く公開するという当時としては斬新な宣伝を行った。この巨大な絵は市民たちの度肝を抜いたようで大変な話題となり、必然的にセレーネの武名も広く喧伝されることとなった。

 これも一説によるとリョーチの進言によるものらしいが、いずれにしろこの太陽の乙女と黒い戦士は単なる絵画作品というだけでなく、歴史に残る宣伝道具でもあるのだ。

 もしこの名画を鑑賞する機会があれば、そんなことを頭の片隅に置いて見てみるのもいいのではないだろうか。


 ヴァンヴァ・バーン「名画に歴史あり」より抜粋

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