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Never give in ~俺たちは絶対に諦めない~  作者: 玄雅 幻
第九章 憎しみの最果て
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四十四

 第一鑑賞室で、仲間達と死んでいった生徒達に謝罪を済ませる。

 そして、玄関ホールで支度をして、役員寮から出た。風の強さは変わらない。

「そうだ。生きた屍と狂乱者、進化してるから気をつけて」

「進化……ですか?」

 後にいる史哉が、尋ねてくる。

「そう。進化としか呼びようがない。耳が聞こえる、跳躍力が高くなる、嗅覚が鋭くなる、走ってくる。色々と進化してる」

 至る所に、首無し遺体があるが、見ないようにして進んだ。説明をするなら、高等部の出入り口でしよう。そう決めて歩みを早める。サクサクと進み、問題の場所に着いた。

「こっちの二人は、動きも緩慢で声も弱かったんだ。だけど、こっちの一人は五メートル程まで近づいたら、振り向いて走ってきた」

 あの時は、驚いたが、咄嗟に動けたのは、きっと身体が動きを覚えていたんだ。

「ああ、声も凄かったな。その所為で、この二人に気付かれたんだ」

 話をしながら、研究員の遺体を反転させる。認証カードを掴み取り、立ち上がった。もう一人の認証カードも取る。

 管理システムが、どういう物なのか、分からない。図面にも、書かれていなかった。一枚で、入れるとは限らない。出来れば、四人分の認証カードが欲しい所だ。

「なあ、澪。一つ訊いていいか?」

 真後ろから彰に声を掛けられ、振り向くと眉間に皺を寄せている。どうしたんだろう?

「構わないよ」

「これは、本当に澪がやったのか?」

 ああ、彼方此方に散らばる遺体のことか。

 歩きながらは……無理だよね。手っ取り早く、話してしまおう。

「意識のある状態で、刈ったのは、この三人だけ。後の人達のことは、覚えてないんだ。しっかりと意志を持って刈り取ったのは大学部の中だけだった」

「っ! そうか。なら、史哉の推論は正しかったんだな」

 推論? 史哉へ視線を遣ると、困ったように話し始めた。

「生徒会長室までの状態を見て、自分なりに澪の心理状態を考えてみたのですよ。その結果、防衛本能が体を支配し、通常の意識が無いトランス状態になっているのではないかと、推論したのです」

 確かに意識は無かった。完全に覚えていない。そんな、状態もあるのか。

「とりあえず、進もうか。研究施設の近くまでは居ないと思うけど、急いだ方がいい」

 話を切り上げて、歩き出す。駐車場で研究員の遺体を見つけ認証カードを四人分、確保した。管理棟も、今のところ、静かだ。


 購買部まで来て、違和感を感じた。なんだ? 何かが……。

「ねぇ、こんな遺体あったかしら?」

 小声で秋月が、史哉に話しかけている。

 そうだ、それだ! この遺体には、頭がある。高等部の運動場に向かって倒れているということは――――。

「澪! 隠れろ!」

 俺が大学部を見上げ、何か光る物を見つけた時と、彰が叫んだのは、同時だった。

 ガゥン

「っ!」

「澪!」

「谷崎君!」

 俺の名前を呼ぶ二人と秋月の声が遠くに聴こえ、俺は何故か弾を避けていた。

「あいつ等、人間だろ! 何で撃つんだよ!」

「食糧盗ろうとしてるんだから当たり前だろ!」

「そんな酷いことするな」

「ごちゃごちゃと五月蝿い!」

「なっ!」

 ガゥン

「ぐっ!」

「ははは、俺ってやるじゃん。これなら……」

「これなら、何? ねえ、先輩。この銃、自衛官の人達のだろ? なんで、先輩が持ってるんだ?」

 弾を避け、そのまま全速力で駆け上がると、二階で仲間割れを起こした先輩が、仲間を殺す瞬間が見えた。その銃に見覚えがある。新堂さんが持っていた銃と同じ銃。東條さんの銃だった。

 その銃は、そんな使い方をしていい銃じゃない。人を守る為の銃だ……。 

「ひっ!」

 真後ろから近付き、剣鉈を首に宛がうと声にならない悲鳴を上げた。

「答えろ。自衛官から盗ったのか?」

「い、いいだろ。死んだ奴が持ってても使わねえじゃねえか。っ!」

 その言葉に、俺は手に持っている剣鉈へ力を入れる。すると、首から一筋の血が流れた。

「そ、そ、そんなに、この銃が欲しければ、くれてやるから。な、なあ、頼むよ」

 銃が欲しいとか、そんな問題じゃない。だが……。

「そのぐらいにしておけ」

 追いついてきた彰に、止められた。

「た、助けてくれ!」

「先輩、とも呼びたくありませんが、見苦しいですよ? 仲間を撃つなんて、随分と外道な真似をなさってるのですから、僕達の助けなど必要しないでしょう?」

「亡くなってるからって、人の物を勝手に盗むことは良くないわ。銃を置いて、消えてくださる?」

 次々、畳み掛けるように言われ、とうとう先輩は銃から手を離した。それを、彰が床に落ちる前に取る。

「ほら、澪も放してやれ」

 スッと腕の力を抜き、剣鉈を首から離すと転がるように先輩は駆けて行った。

「いきなり、走り出さないでください。追掛けるのが、大変でした」

 あ。やってしまった。勝手な行動は、しないつもりでいたのに……。

「ご、ごめん。頭に血が上って……」

「そんなことだろうと思ったぜ。で、銃はどうする気だ?」

 考えてなかった。返しに行きたいが、二人の眠る場所は、此処からだと遠い。

「……持って行こう。使うつもりはないけど、もしもの時の為に。使わなかったら、新堂さんの言った通り捨てて行く」

 足元に散らばった弾倉を拾い集め、リュックへ仕舞う。この先の階段を下りれば、研究施設のすぐ近くだ。


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