二十
「澪の説が正しいにしても、単独犯の可能性も視野に入れた方が良いのではありませんか?」
暴れた所為か熱まで出始め、史哉から無理やり解熱剤を飲まされ、大人しく横になった。
「私は、谷崎君の言ってる通りだと思うわ。さっき、ここの研究施設の所長を知ってるかって話したでしょ?」
「ああ、そう言えば、そんな話をしていたな。知ってんのか?」
「薗村 俊夫。過去に合衆国の研究所に居た男よ。そこの研究所でバイオハザードを引き起こして国際手配されていたのを、この国の政府が匿ったのだと思うの。居場所が判明したのは、半年前ね。この学院に現れたことで潜伏先が判明したってわけよ」
秋月の言葉に、俺達は固まった。国が国際手配されている人間を匿うなんて、許されるはずがない。しかし、研究施設の稼働時期と一致する。
「貴女が編入してきたのも、同じ頃ですよね?」
「ええ。私は、あの男を追って来たんだもの」
「追って……ですか。その理由は、僕たちが窺がってもよろしいものですか?」
「そうね。良いかもしれないし、悪いかもしれない。係わる覚悟があるなら話すわよ?」
関わるも何も、もう、関わっている。狂乱者も生きる屍も見ているのだから。
「話せ。知っていた方が、対処しやすい」
「……ねえ、谷崎君。周防君って、貴方以外には俺様なの?」
彰が俺様? 秋月の言葉に答えられず、史哉へ視線を向ければ、何故か失笑している。
「そうですね。一概にそうともいえませんが、まあ、言葉遣いは悪いですね。ただ、有言実行の人なので、誰も俺様とは言わなかったですよ?」
「ふーん。執行部の部長だし、そんなものかしら」
「おい。くだらねえ話してんじゃねえよ。さっさと、始めろ」
「ハァ……。ま、いいわ。私が薗村を追っている理由は、二つよ。親の仇を取りたいのとウイルスの確保」
親の仇と聞いて、体を起こす。こんなの横になったまま聞いていい話じゃない。
「谷崎君は寝たまま聞いて。もしくは、眠ってくれると嬉しいわ」
「でもっ」
「足手纏いは要らないって言ってるのよ。いつ襲われるか解らない状況なんだから、さっさと熱下げる努力をしたらどうなの?」
足手纏いときっぱりと言い切られて、横になる。秋月の言う通りだ。横では、何故か史哉が彰を押さえつけている。
「……すまない。秋月の言う通りだ。少し休む」
「解ればいいのよ」
俺が再び横になると、上から毛布が掛けられた。
「医務室の備品です。今は、休むことを優先してください」
「話なら、後から聞かせてやる」
史哉と彰に諭されてしまってはどうしようもない。俺は、静かに瞼を閉じた。




