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幕間 ノルド北王国

     ◆     ◆     ◆


 大陸の北辺、雪を戴(いただ)くヒム・ガの峰々を背に、ガラガラ川とガン・ドラの大河に挟まれて、一つの王国が東西に長く横たわっている。

 ノルド北王国。

 二つの大国に挟まれた小国でありながら、北の山より魔物が下るとき、最初にその牙を受けるのはいつもこの国だった。ゆえに人々は、古くからノルドを「大陸の盾」と呼ぶ。


 かつてこの地には三つの王国があった。だが二百年前、〈人魔大戦〉の炎が城を焼き、村を灰にし、三つの王冠を滅ぼした。戦の後、焦土(しょうど)に残された人々を束ね、新たな旗を掲げたのが、現王より四代前の王である。

 それから二百年。王都ラクナウには百万を超える民が暮らし、街道には荷馬車が行き交い、鍛冶場では槌の音が絶えない。だが、どれほど時代が移ろっても、ノルドの民が北の山々へ向ける畏敬(いけい)だけは変わらなかった。彼らは山環と人環を篤(あつ)く敬い、雪を戴くヒム・ガの峰々を――「第四環神の生み出した巨人の壁」と呼ぶ。

 それは古い伝承の名残ではない。山を恐れ、山に守られて生きるこの国にとって、信仰は今なお暮らしの根にある。


 そして、その麓には大陸最強と謳われる三百の兵――灰の三〇〇がいる。

 ノルド北王国が立つ限り、北の門は開かない。

 それが、小さき王国が大国と肩を並べる理由だった。



     ◆     ◆     ◆

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