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幕間 救世主誕生


     ◆     ◆     ◆



 赤子は、産声を上げなかった。

 助産師に抱かれた赤子は、褐色の瞳を開いたまま、煤けた天井を見つめている。あまりの静けさに、助産師は戸惑ったように眉を寄せた。


「この子……」

「顔を、見せて」


 寝台から伸びた腕は頼りなく、指先まで震えている。助産師が抱いた赤子を近づけると瞳が動き、汗に濡れた女の顔を捉えた。


「はじめまして。私がお母さんよ」


 頬に指が触れた瞬間、赤子は顔を歪め、堰(せき)を切ったように泣きだした。助産師が息をつき、女も目尻を濡らしながら笑う。


「まあ。そんなに嫌だった?」


 泣き声は、いつまでも止まらなかった。



     ◆     ◆     ◆


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