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幕間 救世主誕生②


     ◆     ◆     ◆



 眩しい。寒い。うるさい。身体が重くて、指一本まともに動かせない。

 ぼやけた視界の向こうに、煤けた天井が見えた。

 産婆は赤子を抱え、不安そうな顔でこちらを覗き込んでいる。


「この子……」


 声は聞こえるし、意味も分かる。

 なのに喉が思うように動かない。


「あらやだ。全然泣かないわ」

 

 泣いたほうがいいのだろうか。

 そう考えていると、別の声がした。


「顔を、見せて」


 身体が運ばれ、視界の端に寝台に横たわる女の顔が見えた。優しい眼差し。汗で髪を額に張りつかせてひどく疲れた顔をしている。


「はじめまして。私がお母さんよ」


 頬に温かな指先が触れると、胸の奥から何かが込み上げた。


「――ぁ、あ……!」


 次の瞬間には喉いっぱいに泣き叫んだ。止めようとしても止まらない。勝手に顔が歪だ、声が漏れる。

 女――母親が、目尻を濡らしながら笑った。


「まあ。そんなに嫌だった?」


 違う。

 けれど、口から出るのは泣き声だけだった。


 ――また、ここからか。



     ◆     ◆     ◆


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