幕間 創世十環神話譚
◆ ◆ ◆
創世十環神話譚。
はじまり、世界はただの暗がりだった。形も音もなく、息をひそめたような闇だけが、どこまでも続いていた。
やがて蒼き女神が最初の輪――
第一光環をそっと回し始める。
闇はひび割れたようにほころび、無数の光の粒が、ふわりと生まれた。
続いて、第二星環が回りはじめる。
散らばっていた光は少しずつ集まり、やがて夜空に瞬く星々となっていった。
第三陽環が回ったとき、ひときわ強い光が生まれ、太陽となり、昼と夜が分かれ、光が世界を照らし、闇がそれを包むようになった。季節もこの環が刻む歩みに合わせて巡る。
次に回った第四山環で平らだった世界はうねり、盛り上がり、山がそびえ、谷が刻まれる。
第五河環が動き出すと、山からあふれた水が細い筋となって流れ、それらはやがて一つにまとまり、川となって大地を縫い、海へと続く道を描く。
第六潮環が回ると、水は大地の窪みに集まり、海と湖を満たしていく。水面は静まらず、満ちては引き、引いては満ちる。潮の満ち引きはこの環が今もどこかでわずかに回り続けている名残だと人々は語る。
第七獣環が一巡すると、世界は騒がしくなり、深い水には魚が、空には鳥が、陸には獣が生まれ、魔獣までもが姿を現した。
第八樹環が回ると、岩だらけだった大地に緑が這い広がる。森が広がり、草原が波打ち、穀物が実り、果実が色づき、薬草がひっそりと芽を出した。
そして、第九人環が静かに回ったとき――
人が生まれた。彼らには言葉と理性が与えられ、かすかな魔力の芽も宿ったのだと。
――だが、その先、第十の輪の名は語られない。
人の手が届かぬ遠き環だとだけ伝えられている。
◆ ◆ ◆




