第91話 開店準備
夏休みも終わりに近付いた八月下旬。
エンジェル部の三人は、いつものように教会へ集まっていた。
「皆さん、おはようございます」
シスター小林が笑顔で迎える。
「おはようございます!」
栞と凪が元気よく挨拶を返す。
正義も軽く頭を下げた。
「おはようございます」
シスター小林は一枚のポスターを取り出した。
「今日は皆さんにお願いがあります」
三人は自然と姿勢を正す。
「来週、この町で『楠市民夏祭り』が開催されます」
「楠市長が主催する、この地域で一番大きな夏祭りです」
凪が目を輝かせる。
「あっ!」
「あのでっかい祭りや!」
シスター小林は微笑んで頷く。
「はい」
「地域の自治会や学校、福祉団体など、多くの方が参加されます」
正義は少し驚いた。
「そんな大きなイベントなんですね」
「毎年、たくさんの市民の皆さんが来場されます」
シスター小林は続ける。
「そして今年、教会もバザーを出店することになりました」
「エンジェル部の皆さんには、そのお手伝いをお願いしたいのです」
「バザーですか」
栞は嬉しそうに微笑む。
「はい!」
「ぜひ参加させてください」
凪も元気いっぱいに手を挙げた。
「任せてください!」
「接客でも呼び込みでも何でもやるで!」
シスター小林は思わず笑う。
「頼もしいですね」
そして正義へ視線を向けた。
「桜木君も、お願いできますか?」
正義は少し考えてから頷いた。
「分かりました」
「僕もお手伝いします」
「ありがとうございます」
シスター小林は嬉しそうに微笑んだ。
「それでは早速、準備を始めましょう」
三人は教会の集会室へ移動する。
机の上には、地域の方々から寄付された品物が所狭しと並んでいた。
食器。
本。
ぬいぐるみ。
文房具。
日用品。
さまざまな品物が箱いっぱいに詰められている。
「すご……」
正義は思わず声を漏らした。
「全部バザーで販売するんですか?」
「はい」
「売上は教会の活動費や、地域福祉への支援に充てられます」
栞は一つひとつの品物を丁寧に手に取り、汚れがないか確認していく。
「こちらはきれいですね」
「値札を付けましょう」
凪は箱を覗き込みながら笑った。
「見て見て!」
「これ、めっちゃかわいい!」
小さなぬいぐるみを手に取り、嬉しそうに見せる。
「子どもに人気が出そうですね」
正義も自然と笑みを浮かべた。
三人は役割を分担し、黙々と準備を進めていく。
値札を貼る正義。
品物を整理する栞。
元気よく箱を運ぶ凪。
単純な作業だった。
それでも、不思議と時間が経つのは早かった。
「これで最後ですね」
栞が笑顔で箱を閉じる。
凪は額の汗を拭きながら、大きく伸びをした。
「よーし!」
「準備完了!」
正義は整然と並んだ品物を見渡し、小さく頷く。
「こうして並ぶと、お店らしく見えますね」
シスター小林も満足そうに微笑んだ。
「皆さんのおかげです」
「きっと素敵なバザーになりますよ」
地域最大の夏祭りまで、あと一週間。
エンジェル部の新たな活動が、静かに幕を開けようとしていた。




