第74話 いただきます
教会の扉が開く。
待っていた人たちが、一人、また一人と会場へ入ってきた。
猛暑の中を歩いてきたため、皆汗をぬぐいながら席へ着いていく。
社会福祉協議会の職員や地域ボランティアが笑顔で迎えた。
「こちらへどうぞ」
「ごゆっくりお過ごしください」
調理場では、冷やしうどんが次々と出来上がっていく。
「一杯できました!」
「お願いします!」
栞が丁寧に具材を盛り付ける。
凪が冷たいつゆを注ぎ、最後に氷を加える。
「はい、完成!」
正義は出来上がった一杯を両手で受け取ると、利用者のもとへ運んだ。
「お待たせしました」
「冷やしうどんです」
一人のおじいさんが目を細める。
「ありがとう」
「こんな暑い日に、冷たいもんはありがたいなぁ」
「どうぞ、ごゆっくり召し上がってください」
正義も自然と笑みを返した。
次は、小さな子どもを連れた母親のもとへ。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
「いただきます」
母親は何度も頭を下げ、小さな子どもも嬉しそうに丼を見つめている。
一方、凪も元気いっぱいに声を掛けていた。
「お待たせしました!」
「いっぱい食べてくださいね!」
「美味しそうやなぁ」
「ありがとう!」
利用者たちの笑顔に、凪も思わず笑顔になる。
栞も一人ひとりへ丁寧に料理を届けていた。
「どうぞ」
「ごゆっくり召し上がってください」
「ありがとう」
「若い人たちが頑張ってくれて嬉しいわ」
「ありがとうございます」
栞は優しく頭を下げた。
やがて会場のあちこちから、
「いただきます」
という声が聞こえ始める。
冷えたうどんを口へ運んだ人たちの表情が、ほっと和らいだ。
「美味しい……」
「冷たくて生き返るわ」
「今年も来て良かった」
そんな声があちこちから聞こえてくる。
三人はその光景を見て、自然と顔を見合わせた。
正義が小さく呟く。
「料理を作るだけじゃないんですね」
「笑顔まで届けているんだ」
栞は穏やかに頷く。
「はい」
「だから、この活動が大好きなんです」
凪も嬉しそうに笑った。
「『いただきます』って、こんなに温かい言葉やったんやな」
会場には、笑顔と「いただきます」があふれていた。
その一杯には、教会の人々、社会福祉協議会、地域ボランティア、そしてエンジェル部のみんなの優しさが込められている。
三人はその想いを胸に、再び出来上がった冷やしうどんを手に取り、笑顔で利用者のもとへ歩いていった。




