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第73話 炊き出しの日

 八月中旬。


 照り付ける真夏の太陽が、朝から街を熱気で包んでいた。


 朝八時。


 エンジェル部の三人は教会へ集まっていた。


 礼拝堂の隣にある調理室では、大勢の人たちが忙しく準備を進めている。


 教会の関係者。


 社会福祉協議会の職員。


 地域ボランティア。


 毎年恒例となっている炊き出しの日だった。


 シスター小林が三人へ説明する。


「今日は教会と社会福祉協議会が合同で行う炊き出しです」


「暑い日が続いていますので、今年は冷やしうどんをご用意します」


 正義は調理室を見渡した。


 大きな寸胴鍋では、うどんが次々と茹で上げられている。


 別の机では、青ねぎやきゅうり、錦糸卵などの具材が手際よく盛り付けられていた。


 保冷箱には氷がぎっしりと詰められ、冷えたつゆも準備されている。


「すごい量ですね……」


 正義が思わず呟く。


 シスター小林は穏やかに頷いた。


「毎年、多くの方が来られますから」


「皆さんに少しでも涼しく、美味しく召し上がっていただけるよう準備しています」


 凪はエプロンを締め直しながら笑った。


「よーし!」


「うち、盛り付け頑張るで!」


 栞も笑顔で頷く。


「私は具材を並べます」


 正義はシスター小林へ向き直った。


「僕は何をすればいいですか?」


「桜木君は配膳をお願いします」


「出来上がった冷やしうどんを、お一人ずつお渡ししてください」


「分かりました」


 三人はそれぞれの持ち場へ向かう。


 調理室では、


「うどん上がりました!」


「つゆお願いします!」


「薬味追加しまーす!」


 威勢の良い声が飛び交っていた。


 誰一人として手を止めることなく、それぞれが役割を果たしている。


 その姿を見た正義は、小さく息を漏らした。


「こんなにたくさんの人で、一つの炊き出しを支えているんですね」


 栞は微笑む。


「一人ではできないことも、みんなで力を合わせればできるんです」


 凪も元気よく頷いた。


「ほな、うちらも頑張ろ!」


 三人は笑顔で持ち場へ散っていく。


 やがて、すべての準備が整った。


 シスター小林が会場を見渡し、静かに頷く。


「それでは始めましょう」


 教会の扉がゆっくりと開かれる。


 猛暑の中、人々が一人、また一人と会場へ足を運んできた。


 冷たい一杯に込められた優しさを届ける一日が、静かに始まろうとしていた。

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