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第68話 こんにちは

 保育園でのボランティアを終えて数日後。


 朝九時。


 エンジェル部の三人は教会へ集まっていた。


 シスター小林は今日の予定表を見ながら、穏やかに微笑む。


「今日は地域の老人ホームを訪問します」


「利用者の皆さんとお話をしたり、レクリエーションのお手伝いをしたりする予定です」


 栞は静かに頷いた。


「よろしくお願いします」


 凪はにっこりと笑う。


「いっぱいおしゃべりしてくるわ!」


 一方、正義は少し緊張した様子だった。


「僕、お年寄りとあまり話したことがなくて……」


 シスター小林は優しく微笑む。


「難しく考えなくても大丈夫ですよ」


「皆さん、お話し相手が来てくださるだけでも嬉しいんです」


「いつもの皆さんでいてくださいね」


「……はい」


 三人は教会を後にし、老人ホームへ向かった。


 施設へ到着すると、施設長と職員たちが笑顔で迎えてくれる。


「ようこそ、お待ちしていました」


「今日はよろしくお願いします」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 三人は揃って頭を下げた。


 施設の中へ入ると、ゆったりとした時間が流れていた。


 保育園とは対照的に、とても穏やかで静かな空間だった。


 窓辺で外を眺める人。


 新聞を読む人。


 将棋を楽しむ人。


 編み物をする人。


 利用者たちは、それぞれ思い思いの時間を過ごしている。


 職員に案内され、三人は談話室へ入った。


 利用者たちが一斉に顔を上げる。


 栞は一歩前へ出て、丁寧に頭を下げた。


「皆さん、こんにちは」


「聖フェリス学園エンジェル部です」


「本日はよろしくお願いいたします」


 凪も元気いっぱいに笑顔を向ける。


「こんにちは!」


「今日はいっぱいおしゃべりしましょうね!」


 最後に正義も少し照れくさそうに口を開いた。


「桜木正義です」


「よろしくお願いします」


 一瞬の静けさの後、談話室に温かな拍手が広がった。


「よう来てくれたねぇ」


「若い子が来ると元気をもらえるわ」


「ありがとう」


 利用者たちは皆、優しい笑顔を向けてくれる。


 その温かな歓迎に、正義の表情からも少しずつ緊張が消えていった。


 栞は嬉しそうに微笑む。


「今日は短い時間ですが、よろしくお願いいたします」


 利用者たちも笑顔で頷く。


「こちらこそよろしくね」


「楽しみに待っとったんよ」


 三人は顔を見合わせ、小さく頷き合った。


 そして、それぞれ利用者のもとへ歩き始める。


 新しい出会いは、一つの「こんにちは」から始まる。


 穏やかな時間が、ゆっくりと流れ始めていた。

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