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第67話 また来てね

 楽しい時間は、あっという間に過ぎていった。


 保育室の時計は、帰る時間を知らせている。


 保育士が子どもたちへ優しく声を掛けた。


「みんな、お兄さんとお姉さんは、もう帰る時間ですよ」


「えー!」


 保育室には一斉に残念そうな声が響く。


 栞は子どもたちの前へしゃがみ込み、優しく微笑んだ。


「今日はたくさん遊んでくれて、ありがとうございました」


「こちらこそ、ありがとう!」


 子どもたちは元気よく答える。


 凪も笑顔で手を振った。


「めっちゃ楽しかったで!」


「また鬼ごっこしような!」


「うん!」


 子どもたちは嬉しそうに何度も頷いた。


 一方。


 正義の服の裾を、小さな女の子がそっと掴む。


「お兄ちゃん……」


「はい?」


「もう帰っちゃうの?」


 正義は少し困ったように笑う。


「今日は帰ります」


「でも、また来る機会があれば遊びますよ」


 その言葉を聞いた女の子は、ぱっと笑顔になった。


「ほんと?」


「約束です」


 正義が優しく頷くと、


「やったー!」


 その声を聞いた子どもたちが一斉に集まってきた。


「また来てね!」


「約束やで!」


「今度も遊ぼ!」


 小さな手が次々と差し出される。


 三人は一人ひとりと手を繋ぎながら約束を交わした。


「また来ますね」


 栞が優しく答える。


「次はもっといっぱい遊ぼ!」


 凪も元気よく笑う。


 正義は少し照れくさそうに頷いた。


「……はい」


「また来ます」


 その一言だけで十分だった。


 子どもたちは満面の笑みを浮かべる。


 園長先生も保育士たちも、その様子を温かく見守っていた。


 三人が保育園を後にすると、子どもたちは園庭まで駆け出してくる。


「バイバーイ!」


「また来てねー!」


 元気いっぱいに手を振る子どもたち。


 三人も何度も手を振り返した。


「また来るからなー!」


 凪が大きな声で応える。


 栞も優しく微笑みながら手を振る。


「皆さんも元気でいてくださいね」


 正義も少し照れながら、小さく手を振った。


「また会いましょう」


 子どもたちの姿が見えなくなるまで、三人は何度も振り返る。


 帰り道。


 しばらく歩いたところで、凪がにやりと笑った。


「正義」


「今日は完全に『お兄ちゃん』やったな」


 栞も嬉しそうに微笑む。


「子どもたち、本当に正義君のことが大好きでしたね」


 正義は少し照れくさそうに笑う。


「……僕も、楽しかったです」


 その素直な一言に、栞と凪は少し目を丸くした。


「珍しい」


 凪が笑う。


「正義が素直や」


「そんなに驚かなくてもいいでしょう」


 三人は顔を見合わせ、思わず笑い合った。


 保育園で過ごした一日は終わった。


 けれど、


「また来てね!」


 という子どもたちの元気な声は、夏の青空の下、いつまでも三人の心に残り続けるのだった。

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