第59話 地域清掃
夏休み最初のボランティア活動の日。
朝八時。
エンジェル部の三人は教会へ集合していた。
青空には大きな入道雲が浮かび、朝から強い日差しが照りつけている。
「今日は河川敷と中央公園の清掃活動です」
シスター小林が地図を広げながら説明した。
「地域の自治会の皆さんも参加されますので、皆さんも一緒に活動してくださいね」
「はい!」
栞と凪は元気よく返事をする。
正義も小さく頷いた。
「では、出発しましょう」
三人は軍手をはめ、ごみ袋と火ばさみを手に河川敷へ向かった。
現地へ着くと、すでに多くの地域住民が集まっていた。
「おはようございます!」
栞が明るく挨拶する。
「あら、栞ちゃん。今年も来てくれたのね」
「おはようございます!」
地域の人たちは栞の姿を見るなり笑顔になる。
その様子に正義は少し驚いた。
「知り合いなんですか?」
栞は照れくさそうに微笑んだ。
「去年、先輩たちと一緒に参加していたので」
「その時に皆さんと仲良くなったんです」
「なるほど」
正義は納得したように頷く。
エンジェル部は、学校の中だけで活動しているわけではない。
こうして地域との繋がりを少しずつ築いてきたのだ。
「それじゃ始めましょう!」
凪の一声で清掃活動が始まる。
三人は河川敷へ散らばり、ごみを拾い始めた。
空き缶。
ペットボトル。
菓子袋。
吸い殻。
草むらには思っていた以上にごみが落ちている。
「意外と多いですね」
正義が火ばさみで空き缶を拾い上げる。
「夏は河川敷を利用する人も増えますから」
栞はごみ袋へ入れながら答えた。
凪は鼻歌交じりにごみを拾っている。
「こういうの、結構好きなんよな」
「宝探しみたいやん?」
「宝じゃなくて、ごみです」
正義が冷静に突っ込む。
「あはは!」
凪は楽しそうに笑った。
しかし。
三十分ほど経った頃だった。
照りつける太陽はさらに勢いを増し、河川敷は熱気に包まれていく。
額から汗が流れ落ちる。
正義は思わず空を見上げた。
「……暑い。」
ぽつりと漏らす。
「まだ三十分ですよ?」
栞が苦笑する。
「もう十分です」
「帰りたいです」
「まだ始まったばっかりやで」
凪は笑いながら大きなごみ袋を軽々と持ち上げた。
「ほら、正義!」
「頑張れ!」
正義は深いため息をつく。
「夏休みくらい、家で涼しく過ごしたかった……」
「何言うてるん」
凪が笑う。
「夏休みは始まったばっかりや!」
「それが一番絶望なんです」
その一言に、栞と凪は思わず吹き出した。
夏空の下。
三人の笑い声が、河川敷いっぱいに響き渡るのだった。




