第58話 新しい夏
夏休み最初の日。
朝から眩しい陽射しが降り注ぎ、青空には大きな入道雲が浮かんでいた。
約束の時間。
正義が教会へ着くと、栞と凪がすでに待っていた。
「おはようございます、正義君」
栞が柔らかく微笑む。
「おはよー!」
凪も元気よく手を振った。
「眠そうやな」
「夏休みくらい寝ていたかったので……」
正義が苦笑すると、凪は声を上げて笑う。
「まだ言うとる!」
三人は並んで教会の中へ入った。
礼拝堂では、シスター小林が穏やかな笑みで迎えてくれる。
「皆さん、おはようございます」
「改めまして、夏休みもよろしくお願いします」
三人は揃って頭を下げた。
シスター小林は優しく微笑みながら話し始める。
「エンジェル部は、学校の部活動であると同時に、地域の皆さんを支えるボランティア活動も行っています」
「困っている人がいれば手を差し伸べる。」
「悲しんでいる人がいれば寄り添う。」
「そして、誰かの笑顔のために、自分たちにできることを考え、行動する。」
「それが、エンジェル部です」
礼拝堂は静まり返っていた。
正義は真剣な表情で話を聞いている。
「これから皆さんには、地域清掃や福祉施設への慰問、保育園のお手伝い、病院訪問、炊き出しなど、さまざまな活動へ参加していただきます」
「学校の中だけではありません」
「地域全体が、皆さんの活動の場になります」
正義は少し驚いたように目を瞬かせた。
学校の部活動だと思っていた。
しかし、エンジェル部が向き合っているのは、学校だけではない。
地域全体だった。
「大変そうですね」
思わず本音が漏れる。
シスター小林は優しく頷いた。
「ええ、大変です」
「ですが、それ以上に得られるものがあります」
「きっと、この夏は皆さんにとって忘れられない夏になりますよ」
栞はその言葉に嬉しそうに頷いた。
「私もそうでした」
凪も笑顔で拳を握る。
「なんかワクワクしてきた!」
話を終えた三人は教会を後にする。
眩しい陽射し。
青空には大きな入道雲が浮かび、遠くから蝉の鳴き声が聞こえてきた。
本格的な夏が始まったのだ。
栞は空を見上げ、小さく微笑む。
「今年の夏は、忙しくなりそうですね」
正義も青空を見上げる。
ほんの少しだけ口元を緩めた。
「……退屈だけは、しなさそうです」
その言葉に、栞と凪は顔を見合わせて笑う。
三人は並んで歩き出した。
この先、どんな人と出会い、どんな出来事が待っているのか。
まだ誰も知らない。
けれど、一つだけ確かなことがある。
この夏はきっと、一生忘れられない夏になる。
こうして、エンジェル部の新しい夏が幕を開けたのだった。




