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第41話 発見

 教室には重苦しい沈黙が流れていた。


 最終公判。


 判決の時。


 学級委員長の菊川柊斗は苦しそうな表情で教室を見回す。


「……それじゃあ」


 ゆっくりと口を開く。


「多数決を取る」


 栞の顔から血の気が引く。


「待ってください!」


 思わず声を上げる。


「証拠もないのに!」


「そんなの間違っています!」


 だが。


 教室の空気は変わらない。


 誰もが疲れていた。


 誰もが答えを欲しがっていた。


 正しい答えではなく。


 納得できる答えを。


 凪も立ち上がる。


「待てや!」


「まだ終わっとらん!」


 だが。


 それでも空気は止まらなかった。


 正義は静かに目を閉じる。


 もういい。


 そう思いかけた。


 その時だった。


「あれ……?」


 小さな声が響く。


 全員が振り返る。


 藤原真央だった。


 自分の席の前に立ち、机の引き出しを覗き込んでいる。


 顔色がおかしい。


「どうした?」


 菊川が尋ねる。


 藤原は返事をしない。


 引き出しの奥へ腕を伸ばす。


 何かに手が触れたらしい。


「え……?」


 震える声だった。


「うそ……」


 教室がざわつく。


 そして。


 藤原はゆっくりとそれを取り出した。


 茶色の封筒。


 一瞬。


 誰も理解できなかった。


 だが。


 次の瞬間。


 教室中の視線がそこへ集中する。


「……」


 誰も声を出せない。


 封筒の表には。


 藤原真央。


 そう書かれていた。


 完全な沈黙。


 藤原自身が一番驚いていた。


 震える手で封筒を開く。


 中を確認する。


 三万円。


 一円も減っていない。


 そのままだった。


「見つかった……?」


 誰かが呟く。


 藤原は青ざめた顔で引き出しを見つめる。


「たぶん……」


 声が震えている。


「提出用のプリントに挟まってて……」


 引き出しの中を指差した。


「奥に……」


 言葉が続かない。


 誰も言葉を発しなかった。


 封筒は最初からそこにあった。


 提出用プリントに挟まれ、誰にも気付かれないまま引き出しの奥に残されていただけだった。


 盗難事件は存在しなかった。


 犯人もいなかった。


 誰かが盗んだわけでもない。


 ただ一つの勘違い。


 それだけだった。


「ご、ごめん……」


 藤原が俯く。


「本当にごめん……」


 だが。


 今さらその言葉だけでは足りなかった。


 教室中が沈黙している。


 皆が思い出していた。


 ここ数日の自分たちを。


 最後に教室にいたから。


 一人でいることが多いから。


 愛想が良くないから。


 何を考えているか分からないから。


 そんな理由で。


 一人のクラスメイトを疑い続けたことを。


 教室の空気が凍り付く。


 その中心にいるのは。


 窓際の席の桜木正義だった。


 正義は静かに封筒を見つめている。


 何も言わない。


 怒りもしない。


 責めもしない。


 それが余計に苦しかった。


 菊川は拳を握り締める。


 学級委員長として。


 最初に謝らなければならないのは自分だ。


 だが。


 言葉が出てこない。


 教室の誰もが同じだった。


 静まり返った教室。


 その沈黙は。


 どんな叱責よりも重く。


 二年二組の全員へ突き刺さっていたのだった。

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