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同じクラスのお嬢様が、冴えない僕に構ってくるんだけどどうしたらいい?  作者: Atelier Lotus文庫


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第153話 私の意思

 その夜。


 栞は一人、自室の机へ向かっていた。


 机の上には、一枚の写真が置かれている。


 市民功労賞授与式。


 三人で笑顔を浮かべて写る、一番のお気に入りの写真だった。


 栞は写真をそっと手に取る。


 楽しかった。


 本当に楽しかった。


 地域清掃。


 夏祭り。


 ボランティア活動。


 査問会議。


 市民功労賞。


 笑った日も。


 泣いた日も。


 すべてが、大切な思い出だった。


 気付けば、小さく笑っていた。


「楽しかったな……」


 その言葉とともに、一筋の涙が頬を伝う。


 正義の言葉が頭の中で何度も繰り返される。


 ――『嫌です』って言えよ。


 ――お前は、お父さんの言いなりか。


 ――お前の人生は、お前が決めろ。


 栞は静かに目を閉じた。


 今までずっと。


 父の期待に応えようとしてきた。


 父を悲しませたくなかった。


 だから、自分の気持ちは後回しだった。


 それが当たり前だと思っていた。


 でも。


 正義の言葉が、その当たり前を壊した。


「……違う」


 栞はゆっくりと立ち上がる。


 写真を胸へ抱き締めた。


「逃げたくない」


 震える声だった。


 それでも、その瞳には確かな決意が宿っている。


「私は……」


「エンジェル部が大好きです」


 初めてだった。


 誰かのためではなく。


 自分自身の本当の気持ちを、素直に口にしたのは。


 涙が止まらない。


 それでも、もう俯かなかった。


「今度は」


「私の言葉で伝えよう」


「お父様に」


「私の気持ちを」


 栞は涙を拭い、大きく息を吸う。


 もう逃げない。


 もう、自分の気持ちに嘘はつかない。


 お父様が何と言おうと。


 私は、私の人生を歩く。


 その決意とともに、栞は静かに部屋を後にした。

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