第143話 理事会
部室には、重苦しい空気が流れていた。
松田は腕を組み、静かに言葉を続ける。
「これも、あくまで聞いた話だ」
「毎年、本校へ多額の献金を続けてくださっている方がいるらしい」
三人は静かに耳を傾ける。
「その方が、学校予算の使い方について理事会へ申し立てを行ったそうだ」
「限られた学校予算は、本当に必要な部活動へ配分されるべきではないか、と」
正義は静かに考え込む。
松田は続けた。
「理事会は、その申し立てを重く受け止めた」
「そして、生徒会へエンジェル部の査問を行うよう求めたらしい」
「その結果が、今回の査問会議だった……という話だ」
部室は静まり返る。
凪が小さく息を吐く。
「だから、あんな急に査問会議なんて話になったんやな……」
正義は腕を組んだまま、ゆっくりと口を開いた。
「でも……」
「学校には部活動がたくさんありますよね」
「どうして、エンジェル部だけがピンポイントで査問対象になったんですか?」
その疑問に、栞も小さく頷く。
「確かに……」
「それは私も気になります」
松田は静かに首を横へ振った。
「そこまでは分からない」
「だからこそ、あくまで噂なんだ」
「ただ……」
一呼吸置く。
「理事会がエンジェル部を名指しした理由は、何かあるはずだ」
「俺にも、それは分からない」
再び沈黙が流れる。
誰も答えを持っていなかった。
ただ一つ分かることがある。
今回の廃部騒動は、単なる予算の見直しだけでは説明がつかない。
その裏には、まだ知られていない真実が隠されている。
松田は三人を見渡した。
「繰り返すが、これは噂だ」
「真相は分からない」
「証拠もない」
「あくまで風の噂として聞いてくれ」
三人は静かに頷く。
しかし、その疑問だけは胸に残り続けていた。
――なぜ、エンジェル部だったのか。




