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同じクラスのお嬢様が、冴えない僕に構ってくるんだけどどうしたらいい?  作者: Atelier Lotus


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第139話 あの頃の僕たち

 乾杯からしばらく経ち、食卓の料理もほとんどなくなっていた。


 三人はジュースを片手に、ゆったりとした時間を過ごしている。


 ふと、凪が笑いながら口を開いた。


「いやぁ」


「査問会議の時は、ほんまヒヤヒヤしたわ」


 正義も苦笑する。


「そうだな」


 凪は大きく頷いた。


「廃部って言われた時なんか、終わったと思ったもん」


「ほんまやで」


 栞も静かに頷く。


「私も、本当にどうなることかと思いました」


 少しの沈黙。


 凪は思い出したように笑う。


「でも、一番びっくりしたんは正義や」


「え?」


 正義は首を傾げる。


「あん時の正義の反応や」


「机叩いて怒鳴るし」


「最後には泣いとるし」


 凪は笑いながら続けた。


「ちょっと前まで、『別に』しか言わんかった奴やのにな」


 栞も小さく笑う。


「そうですね」


「最初の頃の正義くんでしたら、きっと何も言わず帰っていたと思います」


 正義は照れくさそうに頭をかいた。


「ちょっと……」


「やめてくださいよ」


「それを言ったら、二人だってそうじゃないですか」


 二人は顔を見合わせる。


 正義はグラスを見つめながら、小さく笑った。


「今だから言えますけど」


「僕にとって、エンジェル部は居心地がいいんです」


 その言葉に、栞と凪は少し驚いた表情を浮かべた。


 正義は続ける。


「最初は、留年したくなくて入っただけでした」


「部活なんて、正直どうでもいいと思っていました」


「でも」


「気付いたら、この部室へ来るのが楽しみになっていて」


「二人といる時間が、当たり前になっていたんです」


 栞は嬉しそうに微笑む。


「ふふっ」


「最初は、あんなに嫌がっていたのに」


 正義も苦笑した。


「そうでしたね」


 凪は思わず笑い出す。


「初日なんか、『帰る』しか言うてへんかったもんな」


「栞のことも、めっちゃ苦手そうやったし」


「凪!」


 栞が少し頬を赤くする。


 正義は照れ笑いを浮かべた。


「嫌いじゃありませんよ」


「ただ……」


「完璧すぎる人だと思って、近寄りにくかったんです」


 栞は少しだけ目を丸くしたあと、優しく微笑んだ。


「そうだったんですね」


 凪は二人を見比べながら、にやりと笑う。


「それが今じゃ、一番居心地ええ場所になっとるんやもんな」


 正義は静かに頷いた。


「うん」


「ここが、僕の居場所なんだと思います」


 その一言に、栞も凪も自然と笑顔になる。


 三人は顔を見合わせた。


 エンジェル部へ入った日。


 初めて地域清掃へ行った日。


 ボランティア活動。


 夏祭り。


 査問会議。


 市民功労賞。


 この夏休みの出来事が、次々と思い浮かぶ。


 どれも、一人では辿り着けなかった思い出だった。


 三人は静かにグラスを合わせる。


 小さな音が、部屋に心地よく響いた。


 笑顔に包まれた夜は、まだ終わりそうになかった。

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