第129話 廃部相当
会議室は静まり返っていた。
重苦しい空気の中、生徒会長・橘悠斗がゆっくりと立ち上がる。
静かに資料を閉じ、一人ひとりの顔を見渡した。
「長時間にわたり、ご協力ありがとうございました」
「提出資料ならびに本日の審議内容を踏まえ、生徒会として結論を申し上げます」
誰も口を開かない。
時計の秒針だけが、静かな会議室に響いていた。
橘は落ち着いた口調で続ける。
「顧問問題につきましては、正式な顧問就任を確認しました」
「よって、解決済みと判断します」
正義は静かに拳を握る。
「部活動予算につきましても、委託事業書類、会計資料、領収書等を確認し、適正に執行されていることを確認しました」
「こちらにつきましても、解決済みと判断します」
二つの課題は解決した。
残るは、活動実績。
橘は静かに資料へ目を落とした。
「活動実績につきましては、地域社会への多大な貢献、教育的価値ともに高く評価いたします」
「しかし、本校部活動規定に定める部活動実績には該当しないとの判断に至りました」
一瞬の沈黙。
そして。
「以上を総合的に判断した結果――」
会議室の空気が張り詰める。
「生徒会としての結論は、廃部相当です」
その一言が、静かな会議室へ重く響いた。
栞は思わず立ち上がる。
「そんなの、あんまりです!」
涙声だった。
「こんなに頑張ってきたんです!」
「みんなのために活動してきたんです!」
「証拠だって全部揃えました!」
「それでも……認めてもらえないんですか!」
その隣で、凪も立ち上がった。
「そうや!」
普段の明るい凪からは想像もできないほど、強い声だった。
「こんだけ活動しとる証拠があるやん!」
「新聞記事も、感謝状も、手紙も、写真も全部出したやん!」
「みんなが『ありがとう』って言うてくれとるんや!」
「それでも認めへんなんて、あんまりにも横暴や!」
会議室は再び静まり返る。
橘は二人を真っ直ぐ見つめる。
「竜胆さん、日向夏さん」
「お二人のお気持ちは理解しています」
「ですが、生徒会は感情ではなく、学校規則に基づいて審議を行いました」
「この結論は、生徒会としての正式な決定です」
その言葉が、二人の胸へ深く突き刺さる。
栞は力なく椅子へ座り込む。
涙が静かに頬を伝った。
凪も唇を噛み締めながら席へ座る。
悔しさで肩が震えていた。
正義は呆然としていた。
頭の中が真っ白だった。
ここまでやった。
証拠も揃えた。
顧問も見つけた。
予算問題も解決した。
それでも。
届かなかった。
校長は静かに目を閉じる。
理事長もまた、険しい表情のまま資料へ視線を落としている。
松田は唇を強く噛み締めた。
シスター小林は胸の前で両手を組み、静かに祈っていた。
やがて。
栞は震える手で資料を鞄へしまい始める。
凪も涙を拭いながら、静かに資料をまとめる。
正義も無言でファイルへ手を伸ばした。
誰も口を開かない。
会議室には、紙を重ねる音だけが静かに響いていた。




