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第126話 俺が顧問だ

 第二回査問会議前日。


 朝。


 松田は校長室を訪れていた。


 校長・梅原恒一。


 理事長・柏木恒一。


 二人は松田を迎え入れる。


「松田先生、どうされましたか」


 松田は二人の前へ進むと、深く頭を下げた。


「お願いがあります」


「エンジェル部の顧問を、私にやらせてください」


 二人は目を見開く。


 校長が静かに口を開いた。


「野球部との兼任ですか」


「はい」


 松田は真っ直ぐ頷く。


「兼任に前例がほとんどないことは承知しています」


「ですが、エンジェル部を正義へ勧めたのは私です」


「半年間、あの三人の成長を一番近くで見てきました」


「留年寸前だった正義は、人のために動ける生徒へ成長しました」


「栞も、凪も、誰よりも真剣に地域へ奉仕し続けています」


「休日も返上し、自分の時間を削ってまで活動してきました」


 一呼吸置く。


「ここまで頑張らせておいて、最後だけ見捨てることは、教師としてできません」


 理事長は静かに問い掛ける。


「野球部の顧問としての責任は、どう考えていますか」


 松田は迷わなかった。


「もちろん最後まで責任を持ちます」


「野球部も、エンジェル部も、どちらも私の大切な生徒です」


「どちらも中途半端にはしません」


 校長と理事長は顔を見合わせる。


 しばらく静かな時間が流れた。


 やがて、理事長がゆっくりと口を開く。


「松田先生」


「あなたの覚悟は十分伝わりました」


「野球部との兼任という条件で、エンジェル部顧問への就任を認めます」


 松田は深々と頭を下げた。


「ありがとうございます」


 校長も穏やかに微笑む。


「松田先生」


「エンジェル部をよろしくお願いします」


「はい」


 力強い返事が校長室へ響いた。


 放課後。


 エンジェル部の部室。


 三人は第二回査問会議へ向け、資料の最終確認をしていた。


 顧問問題。


 活動実績。


 予算。


 まだ不安は残っている。


 部室には重たい空気が漂っていた。


 その時だった。


 コンコン。


 部室の扉がノックされる。


「入るぞ」


 聞き慣れた声だった。


 三人が振り向く。


「松田先生?」


 松田は部屋へ入ると、照れくさそうに頭を掻いた。


「待たせたな」


 三人は顔を見合わせる。


 松田はゆっくり三人の前へ歩み寄った。


 そして、少し照れくさそうに笑う。


「今日から俺が、お前たちの顧問だ」


 一瞬、時間が止まった。


「……えっ?」


 正義は目を見開く。


 栞は思わず両手で口元を押さえた。


 凪は信じられないという表情で松田を見つめる。


「ほ……ほんまですか!?」


 松田は力強く頷いた。


「ああ」


「校長先生と理事長から正式に許可をもらってきた」


「野球部との兼任にはなるけどな」


「これからは正式な顧問として、お前たちと一緒に戦う」


 正義の目に涙が浮かぶ。


「先生……」


 栞も静かに頭を下げた。


「ありがとうございます」


 凪は嬉しさを抑えきれず、飛び上がる。


「やったぁ!」


「これで廃部理由、一つクリアや!」


 その言葉に、部室へ笑顔が戻る。


 松田は三人を見回し、穏やかに笑った。


「礼を言うのは、全部終わってからでいい」


「まずは第二回査問会議だ」


「最後まで、一緒に戦おう」


「はい!」


 三人の返事が部室いっぱいに響く。


 顧問問題は解決した。


 残る課題は、活動実績の証明。


 最後の戦いを前に、エンジェル部は再び一つになった。

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