第123話 積み重ねた証
放課後。
エンジェル部の部室。
三人は机いっぱいに資料を広げていた。
活動報告書。
写真。
新聞記事。
感謝状。
ボランティア参加記録。
夏祭りの資料。
半年間積み重ねてきた活動の証を、一つひとつ整理していく。
しかし。
正義は小さく息を吐いた。
「これだけでは弱いですね」
「活動した証拠にはなりますが、生徒会が指摘している予算の妥当性を証明する決め手にはなりません」
栞も静かに頷く。
「学校が正式に認めていた活動だったことを示す資料が必要ですね」
部室に沈黙が流れる。
その時だった。
「あっ……」
資料整理を手伝っていたシスター小林が、小さく声を漏らした。
三人が一斉に振り向く。
「どうしたんですか?」
シスター小林は少し考え込むように目を閉じた。
「昔……」
「私が事務室へ配属された頃だったと思います」
「学校がエンジェル部へ地域貢献活動を委託する書類を見た記憶があります」
三人は思わず顔を見合わせる。
「委託する書類……?」
シスター小林はゆっくり頷いた。
「かなり昔の書類ですので、残っているか分かりません」
「でも、部室に控えが保管されていたような気がします」
凪は勢いよく立ち上がった。
「探そう!」
「まだ残っとるかもしれへん!」
四人は部室中を探し始めた。
古い書棚。
ロッカー。
段ボール箱。
歴代部長の引き継ぎ資料。
何年も開かれていないファイル。
埃を払いながら、一冊ずつ確認していく。
しばらくして。
「あった!」
正義が一冊の古びた青いファイルを取り出した。
表紙には、色褪せた文字でこう記されている。
――『地域貢献活動委託事業』
四人は息を呑んだ。
慎重にページを開く。
そこには、こう書かれていた。
『本校は、キリスト教精神に基づくミッションスクールとして、隣人愛と奉仕の精神を教育の柱とする』
『地域社会への奉仕活動は、本校教育理念を実践する重要な教育活動である』
『よって本校は、地域貢献活動の一部をエンジェル部へ委託する』
さらに、その下には。
『本活動に必要な経費については、学校予算より支出するものとする』
正義は思わず息を呑んだ。
「これだ……!」
栞も目を見開く。
「この一文があれば……」
「エンジェル部へ配分された予算は、学校が正式に認めた活動費だったことになります」
しかし。
シスター小林は静かに首を横へ振った。
「これは控えです」
「査問会議へ提出するなら、学校で保管している原本が必要になります」
四人は急いで職員室の資料庫へ向かった。
年代ごとに整理された保存棚。
古い保存台帳を確認しながら、シスター小林が書類を探していく。
「この辺りの年度だったと思うのですが……」
何冊もの保存箱を確認する。
十分ほど経った頃。
「あっ!」
シスター小林が一冊の保存箱を取り出した。
慎重に封を開ける。
中には、年代順に綴じられた公文書が並んでいた。
一枚ずつ確認していく。
そして。
「ありました」
学校長印。
学校印。
決裁印。
すべてが押された正式な文書。
間違いなく原本だった。
正義は震える手で書類を受け取る。
「学校が……」
「正式にエンジェル部へ地域貢献活動を委託していた……」
栞は静かに頷く。
「これで予算の妥当性は証明できます」
「学校が正式な教育活動として認め、そのための予算を配分していた証拠です」
それでも正義は資料を見つめたまま言う。
「でも……」
「活動実績を証明するには、まだ足りませんね」
シスター小林は優しく微笑んだ。
「ええ」
「でも、大きな一歩です」
「皆さんが積み重ねてきた活動は、学校が正式に認め、託した活動だったんです」
三人は力強く頷いた。
予算問題は、希望が見えた。
残る課題は――活動実績。
第二回査問会議へ向けた戦いは、さらに続いていく。




