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第121話 顧問資格

 放課後。


 エンジェル部の部室。


 ホワイトボードには、松田が昨日書き出した三つの課題が残されていた。


 『一 顧問問題』


 『二 活動実績の証明』


 『三 予算の妥当性』


 正義は一番上の「顧問問題」を見つめる。


「まずは、顧問ですね」


 栞も静かに頷いた。


「ここを解決しなければ、何も始まりません」


 凪はシスター小林へ向き直る。


「シスター」


「お願いがあります」


 シスター小林は優しく微笑んだ。


「何でしょう?」


 正義は立ち上がり、深く頭を下げる。


「エンジェル部の顧問になっていただけませんか」


 一瞬、部室が静まり返る。


 シスター小林は少し驚いた表情を見せた。


 そして、どこか嬉しそうに微笑む。


「ありがとうございます」


「そう言っていただけて、本当に嬉しいです」


 しかし、その笑顔はすぐに寂しげなものへ変わった。


「ですが……」


 三人は息を呑む。


 シスター小林はゆっくりと首を横に振った。


「私は学校の事務職員です」


「教員ではありません」


「学校の規定では、正式な部活動の顧問になれるのは、本校の教員だけなんです」


 正義は思わず声を漏らした。


「そんな……」


 栞も肩を落とす。


「シスター以上に、エンジェル部を理解してくださっている方はいないのに……」


 凪も悔しそうに拳を握った。


「そんな決まりがあるなんて……」


 シスター小林は三人の顔を見つめる。


 その瞳には、申し訳なさが滲んでいた。


「私が教師なら……」


 小さく呟く。


「喜んで引き受けていました」


 その一言が、三人の胸に重く響く。


 シスター小林は気持ちを切り替えるように微笑んだ。


「でも、大丈夫です」


「顧問にはなれなくても、皆さんを支えることはできます」


「資料整理でも、書類探しでも、私にできることなら何でも協力します」


 正義はゆっくりと頭を下げた。


「ありがとうございます」


「お願いします」


 シスター小林も優しく頷く。


「こちらこそ」


「皆さんの大切な居場所ですもの」


「私も最後まで、一緒に戦います」


 三人は力強く頷いた。


 しかし。


 顧問問題は、一歩目から壁にぶつかった。


 それでも、立ち止まっている時間はない。


 残された時間は、あと十三日だった。

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