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第120話 最後の二週間

 査問会議の翌日。


 放課後。


 エンジェル部の部室には、重苦しい空気が流れていた。


 二週間。


 エンジェル部に残された猶予は、あまりにも短い。


 正義は机の上に置かれた査問会議の資料を見つめ、小さく息を吐く。


「何から始めればいいんでしょう……」


 栞も資料へ目を落とした。


「課題が多すぎますね……」


 凪も腕を組み、困ったように唸る。


「二週間で全部やるなんて、無茶やろ……」


 その時だった。


 部室の扉が開く。


「だからこそ、まずは整理するんだ」


 松田だった。


 その後ろには、シスター小林も立っている。


 二人は三人の前まで歩いてきた。


 松田はホワイトボードの前へ立ち、マーカーを手に取る。


「焦る気持ちは分かる」


「でも、焦っても問題は解決しない」


「まずは、やるべきことを整理するぞ」


 三人は静かに頷いた。


 松田はホワイトボードへ、大きく三つの項目を書き出す。


 『一 顧問問題』


 『二 活動実績の証明』


 『三 予算の妥当性』


 書き終えると、三人の方へ振り返った。


「査問会議で指摘されたのは、この三つだ」


「つまり、この三つを解決すればいい」


 正義は真剣な表情でホワイトボードを見つめる。


 松田は最初の項目を指した。


「まずは顧問問題だ」


「正式な顧問がいなければ、部活動として認めてもらえない」


 続いて二つ目。


「活動実績の証明」


「今まで積み重ねてきた奉仕活動を、学校が認めざるを得ない形で示す必要がある」


 最後に三つ目。


「予算の妥当性」


「三十七万五百三十二円」


「この予算が適正に使われていたことを、資料で証明するんだ」


 部室は静まり返る。


 三人はホワイトボードを見つめたまま動かなかった。


 二週間。


 短い。


 だが、不可能ではない。


 シスター小林が穏やかに微笑む。


「皆さんは、この半年間、一歩ずつ積み重ねてきました」


「今回も同じです」


「一つずつ乗り越えていきましょう」


 松田も力強く頷く。


「そうだ」


「二週間しかないんじゃない」


「二週間あるんだ」


「一つずつ解決していこう」


 その言葉に、正義は静かに拳を握った。


「はい」


 栞も力強く頷く。


「最後まで諦めません」


 凪は勢いよく立ち上がる。


「よっしゃ!」


「エンジェル部、反撃開始や!」


 その一言に、正義と栞も思わず笑みを浮かべた。


 重苦しかった部室に、少しだけいつもの空気が戻る。


 残された時間は二週間。


 エンジェル部最後の挑戦が、今、静かに始まった。

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